出会いは突然に
「……んぅ……」
あれから宿に戻り、吸い込まれるようにベッドインしたクレアは、窓から差し込む日差しに起こされた。
目をこすって、部屋に備え付けられた浴室まで行く。
お風呂に入って目が覚めると、いつもの服装に着替えて朝食を食べに宿の食堂へ行く。
食堂で朝食を頼んで、クレアは今日やりたいことを考えはじめた。
昨日は着いたのが遅かったのもあるが、変なことに巻き込まれたせいで観光ができなかった。
観光して、時間があれば調べものでもしようかと決めた。
「いってらっしゃいませ」
朝食を食べ終え、宿から丁寧に送り出されたクレアは、宿でもらった地図を手に行きたい場所へ行くことにした。
【ルクレイシア大陸魔道具博物館】
大陸にある8割の魔道具が集まった博物館。
古の時代に使われていた魔道具や、神話で神が使っていたとされる道具や杖、現代に使われている魔道具に至るまでさまざまなものが収蔵されている。
展示物の管理、質、説明も素晴らしく、魔道具博物館の中でも屈指の評価を得ている。
ルクレイシアの観光スポットのひとつ。
クレアはルクレイシア大陸魔道具博物館に来た。
外からは中が見えないガラス張りのドーム状の博物館だ。ガラスが太陽の日差しをたくさん反射している。
博物館というが、近くの公園も一部になっていて敷地としてはとても広い。
クレアは興味津々で博物館の中に入った。
中は入り口のある1階は外の光を存分に受け、展示コーナーの地下は土の色の壁に落ち着いた色のライトで道を照らしている。
ガイドが各展示室に常時いるということで全体のガイドは行っていないようだ。
地下まで降りて展示品を見ていく。
受付でもらったリーフレットを確認すると、神話の道具から始まり、古代の魔道具・遺物……と時代を重ねていき、現代あたりになると各地方の魔道具を展示しているようだ。
クレアはじっくりと展示品を見ながら歩みを進めていった。
「………あ」
各地方の魔道具にさしかかったころ、一定のテンポで見ていたクレアの足が止まった。
西方の魔道具の展示コーナーの隣だった。
特集なのか、「滅びた国の遺物」という題で常設展示のルートを外れた特設展示室が開かれていた。
吸い寄せられるようにクレアの足は動き、特設展示室へと入っていった。
特設展示室は古代から現代までに滅んだ国で使われていた道具を展示していた。
もちろんアナスタシア王国も、例に漏れず展示の対象だった。
サファイアの王冠、アナスタシア王国の王族に伝えられた石碑、水の動きを止めたような繊細な工芸品。
そして、最後に展示されていたのは杖だった。
ここに展示されていなければ木の棒だと間違えそうなくらいお門違いで粗末な杖だった。
説明文には『持ち主不明の魔法使いの杖。形状、大きさは一般的な杖と同じで古めかしい。
アナスタシア王宮の最奥にて厳重に管理されていたため、アナスタシア王族の杖だと推察。』と書かれている。
クレアは杖の入ったショーケースを撫でた。
「…………そんなに大層なものじゃないよ」
クレアはそれだけ言って逃げるように特設展示室を後にした。
「お楽しみいただけましたか?」
「……はい、とても有意義な時間でした」
クレアは受付にそれだけ言って博物館を出た。
実際面白い展示品もあったから間違いではなかった。
クレアは博物館の敷地内にある公園へ行くことにした。
公園といっても、遊歩道と温室があるくらいの緑の多い場所だった。
クレアは温室に入り色とりどりに咲く花を眺めようとしたが、温室に入って少ししたあたりで誰かとぶつかってしまった。
この国はぶつかりやすいのだろうか。
よろめいたクレアの手を引いて立たせてくれたのはぶつかってしまった人───昨日の本屋の店主だった。
「おや、貴方は……」
「あ……」
2人は場所を移すことにした。




