改訂 裏で手引きする者
2026.10.18 改訂にあたり追加しました。
ギィ………
とある廃屋。
誰かが扉を開けて入ってきた。
ふと顔を上げると、恐怖に震える中肉中背の男──メイウェル伯爵を乱暴に連れてきたテッドだ。
びくびくしてこちらを見てきた伯爵は、私の後ろにいる子に気づいて目を見開いた。
「アメニア……ッ!!」
水を得た魚のようにこちらへ向かって走り出そうとする伯爵を、テッドが首を掴んで動きを封じる。
「ぐっ………、離せ!アメニアッ!!」
「うるせぇ」
テッドが暴れる伯爵のみぞおちへ一発入れると、途端に大人しくなった。
私はそっと伯爵に近づいた。
「こんばんは」
「……っ、ごほっ、お前か……アメニアを攫ったのは!!」
とっても、娘を愛しているんだろう。
伝わってくる。
笑顔で歩み寄る。
「手荒な真似はこれ以上したくないので、従っていただけませんか?」
「……何が目的だ!こいつの解放はしただろう!?手を貸すことに何のメリットがある!?」
まだ噛みつくか……。
手荒な真似をしたくないのは本音なんだけどな。
メリット……メリットね……。
要は弱みにつけ込めばいいわけだ。
「膨大な借金があるそうですね?家族に隠していますが、いつまで耐えられるか……」
「なぜそれを……」
……へぇ、テッドの話嘘じゃなかったんだ。
質素倹約で有名な伯爵が裏では違法カジノにハマって大破産してるなんて、できた話すぎて信じられなかったんだけどな。
教えるつもりないけど。
「それに、私ならあなたのために貴族を味方につけることができますよ?
さあ、どうしますか?」
「……何をすればいい」
「……はは」
人って、本当に単純だ。
笑いが込み上げるのも仕方がない。
口元を覆った手を下ろして、メイウェル伯爵に向き合う。
「貴方には場所の確保をお願いしたいんです」
「場所………?」
「はい。商業都市の貴族なのですから、どのあたりが人通りがいいなどには詳しいでしょう?
その知識を使って指定した日に場所を取っていただきたいのです」
「………わかった」
計画は考えてある。あとは準備だけだ。
貴族が場所を押さえれば、貴族から目をかけてもらっていると認知されて集客ができると、テッドが言っていた。
きっと言外の意味を察したのだろう。
「あとは……あの子を使わせてもらいます」
「アメニアを……どうする気だ」
愛娘のことになるとすぐに睨んでくる。
親馬鹿は、どこも同じなんだな……。
後ろで椅子に座って微動だにしないアメニア嬢を一瞥して答える。
「珍しい魔法を使えるみたいですね?幻覚や精神干渉……娘さんの属性は、」
「魔法を使わせるなっ!!!!あれはとても危ないものでっ、」
突然声を張り上げ暴れ出したメイウェル伯爵の腕を、ぎりりとつかみ上げるテッドによって言葉は遮られた。
知ってるのか……土地柄からして使い方も知らないと思っていたが、それなら手っ取り早いか。
「知ってますよ。知ってる上で使うのですから。拒否権はありません」
「あ、あ、あぁ……そんな……ガイアよ…助けを……」
「はははっ!」
面白い。本当に面白い。
これであの子を手に入れられたらもっと面白いのに。
「頼みましたよ、伯爵」
最後にそれだけ言って、テッドに伯爵を送り帰させた。
後ろを向いて、椅子に座るアメニア嬢に近づく。
まずは確認を。
ガタッ、と音を立ててアメニア嬢は突然立ち上がった。椅子の周りを一度歩き、それから挨拶をした。
側から見れば奇行に走る令嬢だが、私には成功した駒だ。
もう一度椅子に座らせたころにはテッドが戻ってきた。
「エルセ様……エルセ様……」
犬のように縋り付いてくるテッドも、駒になる日はそう遠くない。図体が大きいせいで時間がかかったが、本人に希望があったおかげでやりやすい。
テッドの頭に手を置いて、脱獄した日から毎日していることを行う。使いやすいやつだから、脱獄させて正解だった。
「私を手伝ってくれますね?」
「はい…もちろんです……」
虚ろで恍惚とした目で私を見るテッド。
人って、本当に単純だ。
待っていてね、私の愛しい体。
はやく欲しい。




