失踪(ルークside)
ここからまたルークside続きます。
「………じゃあ、今日は俺たちここで待機か」
「歩かなくていいなんて……幸せです」
「そんなに巡回嫌なのかよ……」
翌朝。
俺たちは報告会のあとの事情聴取を終えて、今日の動きを伝えられた。
今日はメイウェル伯爵に令状を出して捜索、そしてアメニア伯爵令嬢の事情聴取を行う。
突撃するのはヒルゼ様の隊、特別部隊だ。
それ以外の部隊は昨日と時間と場所を変えて巡回をしている。
俺たちは今日はフレンティア警備舎で待機だ。
昨日今日で目立った動きはしないと思っているが、油断は禁物。
気を引き締めよう。
とはいえ、朝から真昼の火の刻まで報告もなければ人も来なかった。
やっぱり、今日は何もないかな。
あぁー、テッドが逃げてなけりゃあ、今日はリリーの初めての外出に付き合ったのになぁ………。
夜中に孤児院に行ったときは起きててびっくりしたけど、あれは楽しみで起きちゃったんだろうな。
クレアのことも聞いてきたし……リリーはいい子だなぁ。
俺が夜中の出来事に思いを馳せていると、突然、警備舎の扉が開いた。
「誰かっ!!子どもを知りませんか!?
7歳の女の子でリリーというんです………っ!」
「…………シスター?何があった?」
入ってきたのはシスターだった。
後ろに子どもを連れている。
かごが空だから、帰りだろう。
俺が出てくると、シスターは涙を流しながら俺に縋りついた。
「ルーク……!リリーが、リリーがいないのよ……………っ!!」
「………は?」
その言葉は俺の頭を強く叩いた。
シスターの話によると、中央地区の孤児院の庭で遊んでいるときに、リリーがどこかへ行ってしまったという。
捜しても呼んでも出てこず、慌ててここまで来たらしい。
まだ泣いているシスターの背中をさする。もう80が近いのに、ここまで走ったせいで、体も限界が来ていたようだ。
子供たちを中央地区の孤児院に預けて、シスターを休ませることにした。
リリー……一体どこに行ったんだ?
俺はゼルナに頼んで、リリーの情報を共有して捜索を並行してもらうことにした。
気づいたら、夕の刻になっていた。
あれから何の報告もなかった。
くそ……どこなんだ………
俺は待機班のせいでここから動けない。
何か、手がかりがないのか……?
俺が憔悴しきった顔をしているところを、ハースが背中を叩いて元気を出そうとしてくれる。
ゼルナも探知魔法(半径4メートル)で、ちまちま捜してくれている。
俺だけ何もできない。
いつも迷惑ばっかかけている。
俺が2人に謝ろうとしたとき、ゼルナがビクッと体を震わせた。
耳を押さえてうずくまっているのを見る感じ、誰かが魔法で連絡を送ったのかもしれない。
俺はゼルナが連絡を終えるのを待つ。
ゼルナは連絡を終えて、俺たちの方を向いて口を開いた。
「メイウェル伯爵とアメニア伯爵令嬢が……行方不明だそうです」
「「!?」」
リリーの誘拐に気を取られていた。
メイウェル伯爵たちが行方不明……逃げたということだろうか。
アメニア伯爵令嬢が逃げるなら分かるが、なぜメイウェル伯爵まで………?
罪悪感………?
いっぱいいっぱいだ。
セイエ様からの連絡を伝えられたゼルナは、また情報を共有していく。
俺にできることはないのだろうか。
俺が警備舎の外に出て空気を吸っていると、俺の目の前を黒い蝶が飛んできた。
夕焼けに黒い蝶が映えて、とても美しい。
俺も空を飛んで、リリーも、メイウェル伯爵も、テッドも見つけられたら……。
俺がぼーっと蝶を見ていると、蝶は俺の目の前で急に光って、一枚の手紙に姿を変えた。
俺が宙に浮いた手紙を手にすると、浮遊感が消えて手に収まる。
不思議な手紙だ。俺は不思議に思って手紙の封を切る。
手紙に同封されていた写真が落ちて、俺は拾おうとしゃがんで手が止まった。
リリーの写真だ。
俺は急いで手紙を開いて読む。
『こんにちは。いや、ごきげんよう。
あなたの大切な子どもは私の隣で眠っている。
しかし、これからこの子がどうなるかは保証できない。
返してほしかったら、明日の夕の刻に北の森へ、孤児院で匿っている銀髪の少女を連れてこい』
明らかな脅迫だった。




