特許トロールを撃退せよ
第一章: 特許トロールの罠
ある日、俺――桐谷理の法律事務所に、切羽詰まった表情の男が飛び込んできた。彼の名は山下洋介、小さなスタートアップ企業の社長だ。
「先生、助けてください!突然、特許トロールから訴えられてしまったんです!」
「特許トロール?どんな内容だ?」
「うちの会社が開発した新しい技術が、彼らの特許を侵害しているというんです。そんなはずはないのに……」
洋介の会社は、革新的な新技術で注目を集めていた。だが、それが特許トロールの標的になってしまったようだ。特許トロールとは、特許を使って他社を訴訟で脅し、多額の和解金を得ることを目的とする者たちだ。彼らの手口は巧妙で、訴訟に巻き込まれれば中小企業にとって致命的なダメージとなる。
「なるほどな。彼らの目的は金だ。訴訟で脅して和解金を取るのが常套手段だろう。」
「はい。でも、うちにはそんなお金はありません。もし裁判になれば、会社が潰れてしまいます!」
洋介は頭を抱え、絶望的な表情を浮かべていた。俺はしばらく考え込んだ後、ニヤリと笑った。
「心配するな。彼らの手口には必ず穴がある。俺がその穴を見つけてやるよ。」
第二章: 特許の盲点を探せ
俺はまず、特許トロールが主張する特許内容を徹底的に調査した。その特許は、洋介の会社が開発した技術と確かに似ているが、完全に一致しているわけではなかった。そこで、俺は特許の出願履歴を洗い直し、特許がどのように取得されたのかを調べた。
「これは……なるほど、面白い。」
調査を進めるうちに、俺は特許トロールが出願した特許の一部が、以前に別の企業によって公開されていた技術を基にしていることに気づいた。つまり、特許自体が無効である可能性があるのだ。
「洋介、この特許には重大な問題がある。彼らが主張している特許の一部は、すでに公知の技術を基にしている可能性が高い。これを使えば、彼らの特許を無効にできるかもしれない。」
「本当ですか?でも、それには時間がかかりませんか?」
「確かに、特許の無効化手続きは時間がかかるかもしれない。だが、それを逆手に取る方法がある。」
俺は計画を立て、特許トロールに対抗する戦略を練り始めた。
第三章: 逆転の訴訟
まず、俺は特許庁に対して、特許の無効審判を請求した。同時に、特許トロールに対して訴訟を起こす準備を進めた。だが、ここで一つの仕掛けを用意した。それは、特許トロールが自らの特許を使って他社を脅している事実を逆手に取ることだ。
「彼らが和解金を得ようとした行為は、特許法の悪用だ。これを使って逆に彼らを訴え返す。」
特許トロールは、自らの特許が無効化される可能性に気づいていないだろう。俺は彼らが予想もしない形で反撃を開始した。特許の無効審判が進行する中で、俺は特許トロールに対して逆訴訟を起こし、特許の不正取得と特許法の悪用を指摘した。
「これで彼らは二つの問題を抱えることになる。俺たちに対する訴訟と、自らの特許が無効化されるリスクだ。」
特許トロールは焦り始めた。彼らはすぐに和解を提案してきたが、俺はそれを一蹴した。
「和解?冗談だろ。今度は俺たちが主導権を握っている。お前たちの特許が無効になれば、全てが水の泡になる。」
特許トロールは一気に追い詰められた。彼らの脅しに屈しない俺の姿勢に、彼らは次第に弱気になっていった。
第四章: 予想外の真実
ところが、ここで思いもよらない展開が待っていた。特許無効審判が進行する中、特許トロールの背後にいる人物が浮かび上がってきた。それは、かつて洋介の会社に勤めていた技術者、田中雅彦だった。
「田中……彼がこの特許を?」
「そうだ。彼は会社を去った後、自らの名義でその技術を特許出願し、それを特許トロールに売り渡していたんだ。」
俺は驚愕した。田中は洋介の会社で働いていた時に、その技術に関する情報を持ち出し、自分の名義で特許を取得していたのだ。特許トロールはその事実を知らずに、田中から特許を買い取っていた。
「つまり、この特許は本来、洋介の会社のものだったということか……」
俺はすぐに田中に連絡を取ることにした。彼に対する訴訟を起こし、特許の権利を取り戻す必要がある。だが、田中はすでに姿を消していた。特許トロールがこの事実を知れば、彼らも田中を追うだろう。
「厄介なことになったな……」
俺は頭を抱えながらも、戦略を練り直すことにした。田中を追うのは時間がかかるが、彼を見つけ出すことでこの問題を根本から解決できる。
第五章: 最後の逆転
田中の行方を追うため、俺は調査チームを組織し、彼の足取りを追い始めた。彼が最後に目撃されたのは、地方の小さな町だった。俺はその町に向かい、地道な調査を進めた。
数日後、ついに田中の隠れ家を見つけ出した。彼は驚きながらも、俺の前に現れた。
「理さん……どうしてここに?」
「君に聞きたいことがある。なぜこんなことをした?」
田中は沈黙し、しばらくしてから重い口を開いた。
「洋介さんの会社で働いていた時、僕のアイデアが評価されなかったんだ。それが悔しくて……でも、こんなことになるなんて思わなかった。」
田中は悔恨の念に駆られているようだった。彼が特許トロールに渡した特許は、本来は洋介の会社に帰属するものであり、彼もその事実に気づいていた。しかし、事態がここまで進展してしまったことで、彼は引き返せなくなっていたのだ。
「田中、今からでも遅くはない。この特許を正しい持ち主に返還しよう。」
俺の言葉に田中は頷き、特許トロールとの契約を解除し、特許を洋介の会社に返還する手続きを進めた。
これにより、特許トロールは手を引かざるを得なくなり、彼らが洋介に対して起こした訴訟も取り下げられた。
終章: 新たなスタート
事件が解決し、洋介の会社は再び平穏を取り戻した。彼の会社は特許を取り戻し、革新的な技術をさらに発展させることができるようになった。
「理、本当にありがとう。君のおかげで会社を守ることができたよ。」
洋介の感謝の言葉を聞きながら、俺は微笑んだ。
「君が諦めなかったからこそ、この結果があるんだ。これからも頑張ってくれ。」
田中は罪を悔い、再び洋介の会社に戻りたいと願ったが、洋介は彼を許し、彼と共に新たなスタートを切ることを決めた。
俺は彼らの成長を見守りながら、次なる依頼に向けて新たな挑戦を続けることにした。
【完】
小さな企業が特許トロール(特許権を使って他者を訴訟で脅して金銭を得る者)に訴えられ、理に助けを求める。理は逆にその特許トロールの特許に対して反論できる「穴」を見つけ出し、合法的に相手の訴訟を無効にするだけでなく、逆に特許トロールを訴え返す計画を実行。最終的には、特許トロールが引き下がり、クライアントが安心してビジネスを続けられるようになる。