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国境なきペット輸送

第一章: 輸入禁止のペット

「おい、おさむ! どうしても頼みたいことがあるんだ!」


夕暮れ時、静かだった俺の法律事務所のドアが勢いよく開け放たれた。そこに立っていたのは、海外に住む旧友の田中徹たなか とおる。彼とは学生時代に同じ法学部に通っていたが、彼は卒業後に海外へ渡り、国際貿易を専門にするビジネスマンとなっていた。


「どうしたんだ、徹。そんなに慌てて?」


「実は……」


徹は少し顔を赤らめながら言葉を続けた。


「珍しいペットを飼いたいんだ。でも、日本に持ち込むのが難しいって聞いて、どうすればいいか困ってるんだ。」


「ふむ……そのペットというのは?」


「ゴールデン・ランスヘッドなんだ。とても綺麗な蛇で、飼いやすいんだけど、日本の法律では輸入が禁止されているらしいんだ。」


その瞬間、俺の頭の中でパズルのピースがはまり始めた。ゴールデン・ランスヘッドは確かに日本の動物愛護法の下では輸入が禁止されている。だが、法律には必ず盲点がある。俺はその盲点を突いて、この蛇を合法的に日本に持ち込む方法を考え始めた。


第二章: 法律の隙間を探せ

「なるほど、面白い挑戦だ。じゃあ、そのペットを合法的に日本に持ち込む方法を探そうじゃないか。」


俺はそう言って、徹を安心させた。だが、内心ではかなり複雑な作業になることを予感していた。法律は無数に存在し、それぞれが絡み合っている。だが、その複雑さの中にこそ、抜け道が存在するのだ。


まず俺は、動物愛護法と輸出入規制法の細かい条文を調べ始めた。そして、ついに見つけた。動物を「貨物」として輸入する場合、特定の条件下ではその貨物が生物であることが認識されずに、規制対象外となる可能性があるのだ。


「徹、聞いてくれ。君の蛇は法律上、貨物として扱われる可能性がある。」


「貨物?蛇が?」


徹は驚いた顔をしたが、俺は続けた。


「そうだ。生きた動物を貨物として輸送する場合、その動物が特定の条件下で適切に梱包され、輸送中に人間に対する危険がないと見なされる場合、動物としてではなく、単なる貨物として扱われるんだ。」


「つまり、それを使えば輸入できるってことか?」


「その通りだ。ただし、いくつかの法的手続きを正確に踏まなければならないし、輸送方法にも細心の注意が必要だ。」


第三章: 輸送計画

俺たちはすぐに行動に移った。まず、カリフォルニアで適切な梱包方法を見つけ、蛇が安全にかつ規制に触れないようにするための手続きを進めた。蛇が動かないように特殊な環境を用意し、輸送中にストレスを感じさせないようにした。


次に、日本の税関に対して事前に貨物の申請を行い、適切な書類を提出した。これにより、蛇が貨物として認識される可能性を高めた。さらに、動物保護団体のチェックを回避するため、到着時の対応策も考慮に入れた。


「理、これで本当にうまくいくのか?」


徹は不安そうに尋ねたが、俺は自信満々に答えた。


「大丈夫さ。法律は俺たちの味方だ。だが、最終的には実行してみないとわからないな。」


第四章: 意外な展開

ついに、その日がやってきた。カリフォルニアからの貨物便が成田空港に到着する。俺たちは空港に向かい、税関での審査を見守った。


「おや、これは?」


税関職員が箱を開けると、中には慎重に梱包された蛇が現れた。だが、驚いたことにその蛇は全く動かない。


「ええと、これはただの標本か?」


職員はそう呟き、蛇を詳しく調べることなく、書類をチェックし始めた。俺は心の中で小さくガッツポーズをした。


「はい、貨物としての審査は終了です。」


そう言って職員が書類にスタンプを押した瞬間、俺たちは勝利を確信した。だが、その直後、思わぬ出来事が起こった。


「うわっ!動いた!」


職員が驚いて声を上げた。蛇が突然動き出し、箱の中で身をよじらせたのだ。


「これ、生きてるじゃないか!どうして?」


俺と徹は冷や汗をかきながらも、落ち着いて状況を説明した。


「生きているとはいえ、すでに貨物として認識されています。法律上は問題ないはずです。」


職員は困惑した表情を浮かべたが、上司に確認した後、しぶしぶ許可を出した。


「まあ、問題はないようですね……ただし、今後は気をつけてください。」


俺たちは無事に蛇を受け取り、その場を後にした。


第五章: 法の勝利

事務所に戻った後、徹は大喜びで蛇を眺めながら言った。


「本当にありがとう、理!君のおかげで、夢だったペットを飼うことができるよ。」


「どういたしまして。だが、覚えておいてくれ。法律は味方にも敵にもなり得る。使い方次第で、どちらにも転ぶんだ。」


俺はそう言って微笑んだ。法の隙間を突くことは時に危険だが、だからこそ、それを見つけることには大きな魅力がある。俺は再び新たな挑戦を求め、次の依頼に備えることにした。


【完】

理は海外の友人が希少なペットを合法的に輸入できるかどうかを相談される。しかし、そのペットは国内の動物保護法で輸入が禁止されている。理は国境の法律の隙間を突いて、ペットを合法的に「手続き上では貨物として」輸入するための奇抜な計画を立てる。結局、ペットは無事に国内に到着するが、輸送過程で予想外の問題が発生し、理はその解決に奔走することに。

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