序文「パンフレット」
エネルギー問題の解決は全人類の悲願であった。その事に疑いの余地はない。
核融合技術の確立は、次に燃料の問題を提示した。
月面をはじめとした宇宙開発は苛烈を極め、単に各国の威信にかかる問題に留まらず、本格的な採算事業へと発展を遂げた。
国家の利権と思惑が交差し、人類は再び訪れた世界大戦の到来を危惧する。
国連はかかる事態に際し、各国の一致した見解として、今後の宇宙開発のロードマップを制定し、単なる意見交換の場を脱却し、汎人類の発展を掲げる国連中央政府として、緩やかな統治機構としての役割を担うようになった。
新エネルギー、汎人類の発展、宇宙の新世界、困難を乗り越えて、輝かしい未来、……
ーーケッ、要はバカの馬鹿騒ぎじゃねえか。それともなんだ、あほか?マヌケか?スカポンタンめ。
寄り合い、馴れ合い、ご近所付き合いで、ゆるゆる統治とガバガバガバナンスな宇宙開発へと出発進行。
臭いものには蓋だけしといて後回し。宇宙開発の損益分岐点が見えてくりゃ、一気にブワァーっとやばくなったってよ。
もともと締まりのないケツ……じゃなくて統制が効かなくなったって、何を今さら焦るんだい?
国連軍なんてのも、おとぎ話の組織はちゃあんとしてるがね。派閥によって名乗り口上まで変えて、何がそんなに愉快かね?
自由協商軍だ、欧州連合軍だ、ユーラシア連合軍だ、ママごとだぁ?
あら、お宅はユーラシア連合軍?オホホ……
あなたは自由協商軍?ウフフ……
冗談じゃないぜ、お宅ら全部まとめて国連軍じゃあねえのか?
そんなんだから、有志企業連合……。
なんだっけな……?
あはあ、まあまあ。
有志企業連合共同体ね。そんな事言ったって、JJ。僕たち一応、国連軍人だよ?
……ああ、まったく。
そうだったな。悪かったよ。
暇にかまけてこんなもん見るんじゃなかった。
俺は、いつの物でも変わり映えしない国連謹製パンフレットを壁の的目掛けて投げつけた。
ーー見たか、国連国旗ど真ん中!
今日の国家貢献はこれにて終わり。
お疲れ様で御座候。
ーーあはあ、お見事。
僕がやってもそうはいかない。
……ああ、まったく。
この間まで暇ってのはいい事だったはずなのに……。




