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超・夏休み3

初投稿12日目!


田中は時が止まったように動かなかった。

正確には動かないのではなく()()()()のだ。

空間を濃密が妖気が呼吸を妨げるほどに支配していたからだ。


「おい」


ビクッ


田中の部下に話しかけたが体を震わせるだけで反応が返らない。


「チッ、不埒者は不埒者という事か」


田中は目の前に現れた狐雪を見て瞠目する。

その圧倒的な妖気に、存在感に、自分達が定義した妖怪としての格の高さに目を奪われてしまっていた。

同時に足が震えている。


「…………美しい」


「不埒者からの褒め言葉なぞ興味はない。

 それより貴様、これはどういう事だ」


「?、ど、どういう事とは?」


「決まっているだろう。この土地を貴様が先程まで支配していた理由だ。

 この土地は私が仔仔武(ししぶ)とその一族に支配権を渡し、統治させていたはずだ。なのに何故お前が支配していた。

 状況が状況故に言い訳を聞いてから殺す。内容次第では命は助けてやる」


「「「「「……っ!!!」」」」」


溢れる妖気は氷という実体を持ち不埒者と定義された者達を拘束して行く。


「…………話せば助けてくれるのですか?」


「内容次第だと言った」


「っ!!仕方ありません隠すほどの事でもない。

 だけどこの拘束くらいは解いて下さい。このままでは落ち着いて話せません」


「駄目だ」


「何も解放しろとは言っていません!上半身だけでいいのです!ほら!これなら走って逃げられません!ね?」


田中からの言葉に少しだけ拘束拘束を緩めてやると僅かに安心した様子で息を吐いた。

ほんの少し何かが引っかかっるが良く分からない勘よ為今は無視をする。


「それでは聞かせてもらおう」


「単純な話ですよ?私はこの異能を持つ純粋な存在の事を妖怪……そう名付けました。

 まだ何を分かっていないこの力を存在を!解明し、理解したら世の中に役立てるのではと?!!そう考えました!そして色々な伝承や!ご近所様の話等を何年も聞き込み!さまざまな伝手を使い漸く手に入れた情報を元に来たのがここなのです!!

 私はそこにいる天羽(あもう)組の娘である天羽凛花(あもうりんか)さんが私が追っている妖怪の血を引いていると確信して世界の為にご協力を願い出たのです!」


圧倒的な存在

保身を含めつつ真実と虚飾も織り交ぜていく。

勝てぬ相手であろうと爪を残そうと動けるの経験の成せるものなのかどうか。


「で、デタラメばっか言ってんじゃねぇ!!」


「獅子良さん!やっぱコイツ────」


「黙れ」


たった一言が場にいる全員に対して体が重力で押し潰されそうという感覚を覚えさせた。


「……っ!!…………あ、あの!どなたか存じませんが助けて下さいませんか?!私達いきなり襲われてしまって!

 何がなんだが分からないまま久璃也(くりや)が半殺しに遭いました!まだ死んでませんがこのままでは死んでしまいます!!どうか助けて下さいませんか!!

 礼ならば天羽組組長の1人娘として!精一杯させていただきますので!どうか助けて下さい!」


「あのね〜?こっちは未知の力次第では世の中の為になる事をしているのですよ!

 貴女も落ち着いて聞いて下さいよ?こっちは正義を成そうと孤軍奮闘するらヒーロー!対してあちらは世間様にご迷惑をかけるヤクザの方々……どちらに信を置かれるので???」


「っ!!!」


実際に世間からは嫌われているヤクザだと自覚している天羽凛花は反論出来ず悔しそうに俯いているだけだった。


異能を持っているだけでは頂点に立つ事など到底不可能であり生き残る事は到底叶わないのだ。

しかし何故田中が妖怪の力を持ち安全に生きてこれたのか?理由は単純、口の上手さなのである。

世の中を良く知り世間体を味方に付けたり時には権力者を味方に付けて世の中を生き抜いて来た。


そして今も世間に迷惑をかけるヤクザvs正義を成そうと頑張るヒーローという対立を演出している。

今までただ対立するだけではなく、相手にも必ず利を与えて来た。金、女、酒、土地、さまざまな力で持って叛逆出来ないよう手懐けた行った。

だが目の前にいるのは氷鉋狐雪という古き時代から生きる存在なのだ。


「妾とて世間様にご迷惑を掛けながら生きるのは本意ではないし、迷惑をかける奴は敵……と、までは認識しないが仕置きの対象だと認識している。

 ヤクザは世間にとって悪!これはどう繕っても覆らん事実じゃな」


「そ、そんな」


「〜〜〜〜くそっ!」


田中の口角が三日月の如く円を描いた。


「ならばっ─────」


「じゃがそれは人間のルールの範囲での話じゃ」


口を開き掛けた田中の口を遮る。


「そして妾は聞いたはずじゃ。何故仔仔武に支配権を譲渡したこの土地を貴様が支配していたのか?と!

 べらべらと良く聞いてもいない事を吐かれるのは気持ちが悪い。聞いた事はすっと答えぬか不埒者めがっ。

 それに貴様がその力を持つというのに人のルールに縛られると思っているのか?それならばどれだけおめでたい頭かっ!笑わせてくれるなっ……くっふふふふっ!い、イカン!笑うてしまうっふふふっ」


「…………何が可笑しい」


「妾が言わんでも分かっているじゃろ?その様に無邪気で!子供の如く!爛々と輝いている悪意が煮詰まった様な目をしている貴様ならばなぁ!」


(心底可笑しい、おかげで腹の底から笑いが込み上げて来る!この様ないっそ愛でたくなる愚か者を見るのは実に150年ぶりじゃなぁあ!)


「バレていましたか」


「そもそも正義を成そうとしているヒーローがその様なゴロツキを従えているのが不自然だ。

 更に言うならヒーローを成す存在が人を半殺しにするか?」


「必死に隠しましたが駄目でしたか…………」


田中は恥ずかしそうに歯に噛みながら頭を掻いた。


「貴女は恐ろしいですが私とて異能を操る者!!

 この状況を切り抜けて見せます!」


「ほぉ?どうやってじゃ!」


狐雪の妖気で満たされた空間が田中を中心に半径5m田中自身の妖気が一瞬だけ満たした。

すると田中と部下達の体を氷が割れて拘束から開放されてしまう。


「意外と根性はあるようじゃ」


「でなければ世の中生きて行けないでしょう!?」


「それは真理じゃな」


「恐ろしいですが貴女に対して策が無い訳じゃない!貴女を殺して天羽凛花を目的の為にも奪わせてもらいます!」


「もう理由を聞かんでもよさそうじゃ……」


「全員!使()()()()()!!」


田中の号令と共に部下達はそれぞれ毛や爪、指と言った人体の一部を口に含み飲み込んだ。

狐雪の目が正しければそれは妖怪と呼ばれる人間の一部だった。


「貴様ら!!!!」


狐雪には予感がしていた。

気持ちが悪いほどの悪意に染まった予感を


「開戦です!!」




相手を煽るのが意外と好きな氷鉋狐雪

150年ぶりの不届き者に天誅したい妖怪様



ここまで読んで下さりありがとうございます!!

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