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02


目の前で舞台俳優よろしく振る舞っている男子生徒は生徒会長である。

今は余韻に浸って幸せそうだ。



「発言を宜しいですか?会長」


「………。」


「…殿下」


「おお、貴方あなたか」



殿下と呼ばれてやっと戻ってきた生徒会長は私のほうを見た。

目には輝きはなく、悪い感情しか読み取れない。



「すまないが貴方からは生徒会長と呼ばれたい。本当、申し訳ないね。

それで、私に何か用事か?」


学園で生徒会長に就任している男子生徒は周りから殿下と呼ばれているが、私には殿下呼びを禁止している。

生徒会長と呼ばれたいだなんて言っているが声には出さずとも『殿下と呼ぶな』とも言っている。

でもさっき会長呼びしたら気が付かなかったじゃない…。



「会長、今は年に1度の舞踏会でございます。

事件を知る会長にとっては急ぐ事項だとは思いますが今でないと駄目なお話なのでしょうか。

今年が舞踏会最後だという生徒もいらっしゃいます。願わくば後日、集会を設けてお話をして頂きたいと思いますがいかがでしょう」



くどい言い方だが仕方ない。

下手したてに出なければ今の会長に私の話は響かない。


それに頷く生徒もちらほら。

待ちに待った今日という日に生徒達は底知れぬ熱量を掛けている。

女子生徒なら一層だ。

今年が最後の舞踏会になる生徒なら尚一層だろう。

良い思い出を少しでも作りたいはずだ。



『気に入らない』

そんな目付きで会長はこちらを見るが、


「それで良いか?」

と大声で周りに問い掛ける。



「先ほどの私の話を聞いて驚いた生徒もいるだろう!

事件の内容を知りたいと思う者も居るだろう!

だが、令嬢が言うのも分かる!!

令嬢が言う通り、私には配慮が足らなかったらしい!

後日集会を設け、そこで話しても良いだろうか?

良いなら拍手で知らせてほしい!」


パチパチとちらほら聞こえ、段々とボリュームが大きくなる。



「分かった!

舞踏会を中断して申し訳なかった!

ではパーティーを楽しんでくれ!!」


そう言って会長は1人舞台から去り、後ろに控えていた仲間の輪へ帰っていった。

輪の中で何やら揉めているようだ。

メンバーの1人が『皆に気を配れるなら普段からそうしろ』的なことを言っているのが聞こえる。

わいわいと舞踏会が再開し賑わいを取り戻している中でも聞こえたのだ、わざとだろう。

会長はそんな彼をこちらも悪かったと宥めていた。




悪い人では無い。

こうしてきちんと人の話を聞いて下さるのだ。

でもその耳も誤作動が起こるらしい。

私は『配慮が足りない』とは申して無いのだけど…。

こちらも悪いがお前も悪いと言いたいのだろう。自分1人が悪者にはなりたくないらしい。



メンバー達からの視線が痛い。

先ほどの会長の発言も相まって泣きそうになる。

おかしいな…こんな善き日に泣きたくない。

悔し涙かな…?


音楽が再開して暫く経つのに私は何故か動けなかった。



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