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「ーー皆に聞いてほしい事があるッ!!」
夜の帳が下り、キラキラと光を放つシャンデリアが幻想的に輝き、花々はその輝きに包まれて一層輝きを増し、花や香水の良い香りに満たされた室内にプロの演奏家達が優雅な旋律を奏でている…なんとも贅沢な夜。
学園の生徒達が心待ちにしていた年に1度の学園主催の舞踏会。
綺麗に着飾り、仲の良い友人らと、親の監視なく楽しく過ごせる青春の1ページ。
そんな特別な日。
生徒達は最初の踊りを終わらせ、会話を楽しんだり料理を楽しんだりと待ちに待った舞踏会の興奮が落ち着いて来たタイミングで、ある男子生徒が唐突に叫んだ。
その生徒は会場の視線を一身に集め、大袈裟な身振り手振りで話を続ける。
「この学園で、未だかつてない事件が起こっていた!
私は初めてその事を聞いた時、まさかと思いとても驚いたが、私の驚きはその日だけでは済まなかった!
連日の如く入る悪夢のような報告に、終いにはそれらの報告が嘘では無いかとさえ思った!!」
大声でそう話す男子生徒は両手を広げたり顔を伏せたり色々と忙しい。
「なんと!この学園で1人の女生徒に対し、イジメが起きていたのだ!!
それもただのイジメではない!
怪我どころか、後遺症まで残るような深刻さだ!
私はこれを事件だと認識し、もう学生の我々で裁く範疇を超えていると判断した!
法の裁きに委ねようと思う!
皆が楽しみにしていた舞踏会を中断させて申し訳ないが、どうか私の話を聞いてほしい!」
ーー、もう聞いてるわ。
それに話を聞いてって2回言ってるわ。
なにこれ選挙演説?
そもそも申し訳ないと思うなら遠慮しないよ、このたわけが。
ンンッ、コホン。
小さく咳払いして自分の思考を止める。
「生徒会長…」
どうやら喉の調子が先ほどの咳払いで逆に悪化したらしい。
よくあるわよね、発言前の咳払いが足を引っ張るのって。
私だけじゃないわよね。
「あー、ぁー…。(よし。)会長!」
私は生徒達の前に出て、前置きが決まって余韻に浸っている男子生徒に呼び掛けた。