初恋は、いつの間にか…不倫?
社会人なりたて私は、バスケにハマっていた。
そのきっかけは、バスケに誘ってくれた19歳上のおじさん。
私は当時19歳だったので38歳のおじさんなのだが、おじさんに見えない。
職場で出会ったお客さんでとてもいい人だ。
私は人を信じすぎて生きている。
いい人はいい人なのだ。
誘われたバスケの練習場所は遠い。
自転車も原付バイクもツライ距離だ。
誘ってもらったが断った。
車が欲しいな…と思った。
家どこ?近いなら送り迎えしてあげる。
面倒見がいいお兄さんに甘えることにした。
バスケの練習の度にベンツで送り迎え。
私はベンツがとても高級な車ということを知らなかった。
送り迎えが続いたある日、ベンツの価値知ってるか?と聞かれて、普通の車よりちょい高いと答えて、少しだけ怒られた。
値段を聞いて、びっくり。
マジの高級車に私は毎回乗っていたのか⁉︎
そして、お兄さん…お金持ちなんだ。
バスケ仲間でご飯に行った時、奢ってもらった。
「誕生日でもないのに?なんで私に奢るの?」と不思議で聞いた気がする。
社会人になったし、自分の面倒は自分でみたい。
なるべく、自分で食べた物は自分で支払いたいと思っている。
なので奢ってもらった分は、あとでお返しするねと約束した。
本当に面倒見がいいお兄さんで、仕事で凹めば元気づけてくれて、お腹が空けばご飯に連れて行ってくれる。
ただ、バスケの練習の時にしか会えない。
もっと会いたいなと思った。
メールのやり取りは毎日していた。
彼氏がいない歴=年齢の私には、恋愛はとても難しい。
メールでは普通だと言えないことが言えた。
楽しかったこと、悲しかったこと、いろいろ聞いてもらった。
そして、甘い言葉が送られてくる。
「謙虚と素直なところがいいと思う。」
自信がないから謙虚に見えるだけ。
素直なのはウソをつくのが下手なだけ。
「大丈夫、君は魅力的だよ。」
魅力的???
初めて魅力的と言われた。
急にドキドキした。
私はその甘い言葉に引っかかって、出られなくなる。
私は、蜘蛛の巣にかかった虫のよう。
お兄さんは、虫を魅力的と言ってくれる。
片思い真っ最中の私に事件は起きた。
一緒に住んでる人がいると知ったのだ。
そして、近々結婚すると。
マジか…めっちゃくちゃ勘違いしてた私。
いろんな感情がぐちゃぐちゃになったまま「おめでとうございます。」と言った。
そして、事件は続く。
バスケ後の送り迎えで、車でだらだらと喋っていたら、キスされたのだ。
ファーストキスは濃厚だった…
衝撃的でクラクラした。
酸素不足だったのかもしれない。
そして、急に泣けてきたのだ。
「なんで、チューしたの?早く帰らないと待ってる人いるよ?」
泣いて言えなかった。泣きすぎたのだ。
その後は車から出て急いで家に帰った。
家に帰れば安心。
階段のある2階の私の家までは来れないのだ。
おやすみのメールが来た。
泣きながらいつもと同じおやすみを返した。
その日の夜は全然寝れなかった。
その後は何もなかったかのように、お兄さんとの日々は過ぎていった。
私だけがドキドキして、意味がわからない毎日を過ごした。
このままじゃヤバイ。
この意味のわからない状態を抜け出したかった。
片思いだけど、ちょっと両思いみたいな意味のわからない状態。
好きだとは言ってくれない。
カワイイ。魅力的。そんな言葉をハートマーク付きのメールでくれるのだ。
これは勘違いしてしまう。
キスとハグも勘違いしてしまうよ、だって好きな人同士ですることでしょ?
たけど、それ以上はしていない。
その先のことはできないから。
なんか安心していたのかも。
車椅子だから。
なんか油断していたのかも。
胸から下は動かない体のお兄さん。
「同じ楽しい時間を共有できればそれでいい。」と言ったお兄さん。
私はできるだけ多くの時間を共有したい。
できれば好きな人とは毎日一緒にいたい。
私には恋愛は向いてないのかもしれない。
頭ではわかっているダメだということを。
心がついていかないんだ。
好きを止める方法を知りたかった。
このままじゃ私がダメになる。
不倫はしたくない。でもお兄さんは好き。
結婚相手はとても美人で明るいお姉さんだった。
19歳の私は、何の自信もない、お金もない、オシャレじゃない、スタイル良くない。
ないないづくしだ。
勝てない。というか、この状況に負けそう。
周りに親や友達はいない。
急に孤独になった。
毎日のメールから辞めてみようと、ほっといて下さいとメールをしたが、定期的にメールが届く。
好きな人から届くメールは嬉しいしかない。
「嫌いになるまでとことん好きでいたら、いいんじゃない?人に迷惑かけない程度に。フリンはダメだと思うけど。」
親しい先輩に言われた。
元気だしてとプリンもらった。
フリン、プリン、フリン、プリン…
少し壊れていたかも私。
いったいどこからが不倫なのかも、今の私にはわからない。
バスケ仲間にも、仕事仲間にも、言えない恋。
秘密の恋。
気づかれたのは、親しい先輩だけ。
ズルズルと好きという気持ちを引きづりながら、日々は過ぎていく。
何かがすり減っていく気がしながら過ぎていく。
そんな時に「車欲しい?」とお兄さんが言ってきたのだ。
車を手に入れれば、バスケの送り迎えがなくなる。
私の中で少しでも一緒にいられれば幸せみたいなところがあったのかもしれない。
この時期、気持ちは不安定、しかもぐちゃぐちゃでもう自分でも解読不可能だった。
「うん。車欲しい。」と言った。
その後、なんとタダで車を手に入れたのだ。
お兄さんの知り合いから、ボロボロの黒の小さい軽自動車を。
車検まで後3ヶ月。
乗り続けたい時は、自分で車検を通すことを条件に。
車の名義変更と車検の見積もりに行った。
車を手に入れた私は、急に大人の仲間入りをした気分だ。
タダより高いものはないことを後で知る。
なんと、車検の見積もり20万くらいだと…
交換が必要な部品があったら、追加でどんどんお金がかかるという。
悩んだ。
悩んだ結果、自分のお気に入りの車を新古車で手に入れた。
お金は貯まっていたのだ。
足りてないのは車を手に入れる覚悟だったのかも。
この車は、私の人生で1番高い買い物になっている。
スピッツの青い車が好きで、青い軽自動車を選んだ。
今変わっていくよ〜♪のスピッツの歌声に励まされる。
歌詞がなんとなく今の自分と重なる気がした。
これで私は変われる。
車を手に入れた私は自由で、道に迷いながらもこの先を進んでいく。
目的地は新しい出会い。
心のぐちゃぐちゃをワクワクにシフトチェンジ!
険しい初恋の道を進む私。
少しずつ景色は変わっていく。
いろんな場所に行き、いろんな人に会う。
時は流れ、私は好きな場所に行き、好きな人に会うようになった。
初恋は叶わないとよく聞くけれど、本当にそうだなと思った。
スピッツの青い車を聴きながら。