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野蛮

最近、小説のアイデアがすごいです。

投稿スピードが速くなるかと思いますが、のんびり読んでください。


 ワグマは殺さずに捕獲された。さっき見たYの形の道具は、捕獲のためのアイテムらしい。遠くからでも簡単に相手の首を押さえられるため、その間に獣のみに効くとされる匂いを放つ薬を嗅がせる。そうすれば獣は檻の中のワグマのように大人しくなるか、眠るかするのだそうだ。


 銀の檻に入れられて運ばれるワグマの姿は、サイズこそ大きいものの、毛がモフモフとしていて、可愛らしかった。

兵士にも大した怪我は無いらしく、安心だ。


「ああして捕まった獣は、どこへ行くの?」


 そう問えば、隣に立つ兵士が答えてくれる。先ほど質問をしてきたカイン・アネラだ。


「オーランド帝国内にある娯楽施設へ送られます。珍しい獣の場合は実験に用いられることもありますが、近年では実験はなるべく死体で済ますようになっています」


「随分と良心的なのね」


「アストレア王国でも、同じようなことはされているのですか?」


 その質問に少しだけ顔を歪ませて笑った。


「そうね、見た目が可愛らしい獣や人を襲わない獣なら娯楽施設で育てることもあるわ。でも、凶暴な獣は……貴族たちの賭け事に使われる」


 アストレア王国の王都には、闘技場がある。一般の人では入ることの出来ない場所だ。代わりに貴族たちや王族は自由に出入りできる。一応、多額の金を払えば一般人でも入場可能の娯楽施設だけれど、その入場料は十万ヴォン。市民の平均年収の十倍を軽く上回る。


 闘技場の名はベイリン闘技場。

 真ん中は地面が削られて少し沈んでおり、周りは観覧席で四階まである。人々は酒を口にしながら真ん中の窪みの地帯にある二つの扉から出て来る獣を眺める。やがて獣が登場し、円形の窪み地帯で獣は争い始めるのだ。

 人々はその二体の獣のどちらが勝つのかを賭けるわけだ。もちろん警備は整っているし、窪みの部分と観覧席側の間には高い壁があって獣が人を襲えないようになっている。

そういうところには金をかけるのが今の馬鹿国王なのだ。


「アグリア王女は、それをご覧になったことがありますか」


 カインの声の温度は、冷たかった。


 アストレア王国はオーランド帝国を野蛮だなんだと罵るけれど、実際はアストレア王国の方がよっぽど野蛮だ。

 そんな国に馬鹿にされる側の兵士からすれば、私の存在も疎ましいのかもしれない。


 ここで、見ていないと言えればどれだけ良いか。


「見たわ」


 それでも嘘はつきたくない。


「三大貴族は毎年国王に招待されるの。十歳の時から、私も参加しているわ」


 十歳の時、私はお父様に頼み込んでその招待について行った。みんな見るべきではないと言ったけれど、頑固な性格をここぞとばかりに見せつけて譲らなかった。


 あれが上流階級の遊びだというならば、せめて一人でも多くの人間が見届けなければ彼らの死は無駄になると思ったから。


 結果的にお父様が折れて連れて行ってくれた。

 そこで見たものは、二体の獣が暴れ狂う姿。多分、獣は興奮して凶暴になる薬でも嗅がされているのだろう。そうしてどちらかが死ぬまで戦いは続く。それを眺める貴族たちは、己が儲けるために言葉の通じることのない獣相手に「殺せ」だの「立て」だの「俺のために勝て」だのと(はや)し立てるのだ。


 ──ここは、地獄だ。


 十歳の私はあの時、強くそう思った。


「神に誓って、お金を賭けたことはないわ」


「……そうですか」


 微妙な空気が流れる。そこへヴィルヘイム王子が戻って来た。


「もう昼だ。アグリア姫、宮殿へ戻ろう」


最後まで読んでいただきありがとうございます。


下の星⭐︎からぜひ評価お願いいたします。たいへん励みになります。

感想には返信をしております。

ブックマークもぜひ。


そろそろ本格的に長編の長さになって参りました。

これからもぜひよろしくお願いいたします。


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