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ハーラリオンの伝説

ぜひ最後まで読んでください!


 冷え始めた冬の始まりの季節だけれど、私の異能が灯る暖炉は寒さに負けることなく赤々と燃えている。そのおかげでこの部屋の誰も冷えることはない。


「アグリア姫は、オーランド帝国の異能の始まりについてどこまで知っている?」


「とあるオーランド帝国の国王が赤竜を殺した際にその鱗を食べたところ、髪が赤くなり炎を司った、とだけ」


 私だけではない。他のアストレア王国の者もそんなに詳しくは知らない。

 アストレア王国にとって重要なのは《魔王》の誕生方法ではなく、その力を手に入れたことでオーランド帝国がアストレア王国との戦争に踏み切ったということなのだ。


「間違ってはいないが、そこに辿り着くまでにもう少し話があるんだ。せっかくだから、この機会に説明しよう」


 ヴィルヘイム王子は淡々と語り出した。


 《聖女》の力は、多分、優しき神が与えた祝福ではないのだろう。アストレア目録大図書館にあったあの手記の内容からそう考えられる。何か、誰も知らない不穏な事実があるはずだ。

 とはいえ、実力勝負で勝ち取った《魔王》の力にそんな闇があるとは思えない。強いて言えば、もし今誰かが竜の鱗を食べたら同じように異能を手に入れられるのだろうか、という疑問が残るだけだ。


 この時はまだ、そんなふうに思っていた。


□■□■□


 当時の国王の名は、ハーラリオン・オーランド三世。オーランド帝国を築き上げた初代国王ステラ・オーランドの孫に当たる男だ。

 オーランド帝国は建国当初からアストレア王国との関係が良くなかった。恐らく、オーランド帝国の歴史は戦争に塗れていて国民も好戦的だからだろうな。


 初代の時代が最も国を(まと)めることに時間をかけた時代ならば、ハーラリオンの時代は最も竜害の多かった時代だ。竜退治のために時間をかけた証拠として、当時のオーランド帝国軍は歴史上最強の軍隊と今もなお言われている。


 聖歴1424年にわずか二十四歳で王に君臨したハーラリオンはさっそく竜害に悩まされた。

 倒しても倒しても湧いてくる翼竜によって土地は荒らされ食物は育てられなくなった。当然のことだが、田舎の方が森が近いから竜害に遭いやすいんだ。

 砂漠地帯でも翼竜が暴れて、ただでさえ水がないのに蒼竜がオアシスに居座ったせいで誰も近づけず、全てが枯れ果てた。


 ハーラリオンは自ら前線を駆けて竜を退治し、その姿を兵士や国民に見せることで国はまだ大丈夫だと勇気づけたんだ。


 やがて、竜害の理由が分かった。

 ファレン(ざん)という山の森の奥に赤竜がいたんだ。竜は基本、自分よりも強い竜に従う傾向がある。特に翼竜はそうだ。赤竜が暴れている以上、他の全ての竜もまた暴れる。

 ハーラリオンは調査隊を送るも誰も帰還できず、すぐに軍を編成して精鋭を送ったがやはり誰も戻らなかったそうだ。


 痺れを切らした彼は帰還していない者がまだ生きていた場合の救助活動のために治療を得意とする数名の部下を連れて自ら山へ向かい、そして最奥で赤竜と向かい合った。


 一人で赤竜を退治し、辺りには彼の振るう剣によって削がれた赤竜の鱗や羽が舞ったという。その光景を、一人の兵士がのちに語っている。

 そのうちの一枚の鱗がハーラリオンの口に落ち、吸い込まれるようにしていったという。

 その瞬間、ハーラリオンの銀の髪は赤に変貌して逆立ち、剣は炎に包まれたそうだ。


□■□■□


 ヴィルヘイム王子がそう語っていた途中、外で音がした。どごん、というような大きな音だ。看板か何かが倒れるような音。

 部屋にいた兵士たちはすぐに警戒体制をとる。腰にある剣に手をかけて窓やドアに近づくと、そっと外を見た。そしてヴィルヘイム王子に告げる。


「ヴィルヘイム指揮官、獣です」


「森から来たのか」


 この訓練場の付近には、森がある。実戦に似た訓練ができるようにということや街の人が迷い込まないようにということを考えてここに訓練場が作られたのだが、その対価として稀に森から獣が出ることがある。


 私が倒しましょうか、と提案するために腰を上げたその時、一人の兵士が言った。


「ここは我々が。アグリア王女は座っていてください」


「獣は多いようですが?」


 窓から見えるクマに似た獣の数は少なくとも十近い。炎で焼き尽くすか追い払うかした方が早そうだが。


「質問に答えていただいたお礼です。それに、戦うのは本来我々軍隊の仕事ですゆえ」


 そう言われては座るしかない。まあ、オーランド帝国軍のお手並み拝見といこう。彼らの仕事を奪ってしまうのは本意ではないのだし。


「続きの話は夜にでも」


 ヴィルヘイム王子もそう言って部屋を出て行く。半分ほどの兵士が獣の退治に向かい、残った兵士はこの建物と私の警護に当たっている。


「頼もしいわね」


アストレア王国にいた時、自国の軍隊がこれほどまでに頼もしく思えたことは果たしてあっただろうか?


最後まで読んでいただきありがとうございます。

面白いと思っていただけたら嬉しいです!!

下の星⭐︎から評価等お待ちしています。


他作品もぜひ。

六波羅朱雀をどうぞよろしくお願いします。

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