兵士との交流
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私が自分の力に驚いて半分くらい放心状態になっている中、ヴィルヘイム王子といつの間にか集まっていた兵士たちが近づいてきていた。
「大丈夫か? アグリア姫」
手のひらを眺めたままの私に、ヴィルヘイム王子が声をかけてくれる。
数名の兵士たちが、私が倒した二人をテントへと運んでいく。治療をするのだろう。ガイの方はまだ気絶しているようだった。思った以上に私の新しい薔薇は硬かったのだろうか。もし怪我や後遺症が残るようだったら申し訳ない。見たところ血が出ているわけではないようだけれど、脳がひどく揺れている可能性がある。
「私は大丈夫だけれど、ガイは……」
顔を上げてそう言えば、ヴィルヘイム王子の碧の瞳と目があった。
「我が軍の兵士はそう脆くない。大丈夫だ」
夫の分厚い手が肩に置かれた。説得力のある頼もしいその言葉に少しだけ心が落ち着いて、私は前を向いた。視線の先にはこちらを見つめる兵士たちがいる。
「あの、俺はカイン・アネラと言います。先ほどの力についてお聞きしてもいいでしょうか……?」
一人の兵士が一歩前に出て、勇気を出してそう聞いてきた。茶髪でそばかすのある、やや背の低い青年だ。まだ兵士になるような年齢、それも城の近くに配置されるほど熟練の兵士とは思えない。
「最近入ったばかりの兵士だ。強さはある」
私が首を小さく傾げていると、ヴィルヘイム王子が耳元でそう教えてくれた。
「聞きたいこととは、なにかしら?」
まだ私自身、防御に用いた花の力についてはよく分からないことが多いけれど、質問されることで考えもしなかった部分に気がつけるかもしれない。
「いつもヴィルヘイム王子を始めとした《魔王》を相手に異能試合をしています。しかし、《魔王》を防御に使ったのを見たことがありません。もちろん使わないだけかもしれませんが、アグリア王女の異能も炎が中心で、《魔王》に近いです。ですから、《聖女》が防御に使えることについてお聞きしたく」
なるほど、確かに炎しか使えない《魔王》は《聖女》を超えるほどの強さはあれど、防御には向いていないかもしれない。
「私自身、あの力は先ほど初めて使ったモノなの。だからあまり詳しいことは分からないし、防御に使おうなんてこれまで思ったこともなかったわ。ただ、《聖女》は《魔王》と違って人それぞれ異能の内容が変わるモノ。戦闘に向かず、防御に向くモノもあるかもしれないわね」
新しい力を発現したあの時、私は勝利を強く願った。と共に、相手を焦がすような炎以外の力を願った。
「普段とは違う状況下で起こるスリルや危機感が、新しい力の使い方を呼び起こしたのかもしれないわね」
カインがふんふんと頷いて聞いている。その様子を見て、他の兵士たちも徐々に手を挙げて質問を始めた。
「あの、アストレア王国には、たとえば他にどのような《聖女》がいるのでしょうか?」
カインよりもやや年上らしき兵士が手を挙げてそう聞いてくる。
「そうね、水、火、風は多いわ。けれど最初の王妃に血筋が近いほど強いから、三大貴族の私に勝てる炎使いは少ないわね。水は炎の弱点だけれど、私みたいな《聖女》ならばある程度の水は蒸発させれるわ。他にも異能の種類は多いけれど、大抵が下級貴族たちだから脅威にはなりにくいわね」
「なるほどぉ……ありがとうございます!」
初めて接する《聖女》に最初はビビっていたであろう彼らも、私が話す様子を見て、王女の特権使って不敬罪で殺されたりしないと分かったのか、どんどん積極的になっていく。
「あの、僕も聞きたいことが」
「私もぜひ」
「あの、オレも!」
その様子を見かねたヴィルヘイム王子が声を張り上げて言った。
「休憩所へ行ってからだ」
指揮官の重く低い声には逆らえないのか、兵士たちは一気に黙った。
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