薔薇の女王
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時間が流れるにつれて現れる炎の数は増え、精度も上がっていく。そのことに二人の兵士は焦っている。そんな様子に気がつかないほど私は寝ぼけてはいない。ただ、相手は人間。炎で仕留めると火傷の跡が残ったり最悪死んでしまう可能性もある。この際、気絶が一番好ましいのだが……。
「───らぁッ!」
勢いよくラウルが突っ込んでくる。もはや、ある程度の炎を受けることは覚悟の上で来ているみたいだ。これ以上私が戦いに慣れて火力が精密になる前に、最低限の怪我で倒すことにしたのか。
これは、どうしたものか。ガイの方は左に位置、剣を振って炎を切っている。ラウルが行く道を切り開いているのか。
これでは、どれだけ炎の球を増やしても意味がない。ここらで決めなければ。どうする? 何の技を使う? 第一私は対人間での実践の経験がない。獣や竜に出くわした時は火力で何とかしていたし……。人間相手で、かつ倒せるほどの威力がある技なんて知らない。
「何か、新しいモノを考えなくちゃ」
私が《聖女》の力で出来ることは、薔薇を操ることと炎を出すこと。一度出した炎を呼び戻す、みたいな移動させることも理論的には可能だけれど、やったことがないから今はやめた方がいいだろう。操作に失敗したら、人間に炎が当たる可能性があるし威力と操作を今ここで初めて同時にするのは無理だ。
「ここだ!」
いけない、思考に集中している間にラウルが近づいてきているじゃない。右から剣を振り翳して迫って来る。私は咄嗟に後ろに下がることでそれを回避した。しかし、そのせいでガイに近づいてしまった。
「そういう作戦だったのね」
私がラウルの攻撃を回避することを最初から予定に入れていたわけだ。
「もらった!」
ガイが高くジャンプして、その剣の先を私に向け降下。重力任せに降りてくるガイを、私は回避する必要がある。後ろに下がればラウルがいる。逃げることはできない。でも、私の異能は全て戦いに向いたモノ。防御に向いた《聖女》の使い方なんて、考えたことがない。
「はぁぁぁぁぁぁぁぁあああああああ!!」
ガイの声が大きくなっていくのは、距離が近づいているからだ。ガイが舞い降りて来るように感じた。その時間がやけに長く感じるのは、私の頭が冷静だからか。
──考えても遅い。
私は、右腕を前に突き出した。
──衝動に、任せよう。
その右腕から、いつも出されるのは紅蓮の炎。
「咲き誇れ、火花」
無意識にそんな言葉が口から漏れ出た。いつもは、火花ではなく火炎と言うのに。自分でもそう思った瞬間、頭の中が熱くなるような感覚がした。と、同時に指先に一輪の赤い薔薇が咲き誇った。いくつもの花弁を身につけた、あまりに巨大な赤薔薇。
ガイの剣はその花に阻まれ手から離れてしまった。
「嘘だろッ」
重力に逆らえず落下したガイは花弁に衝突、そのまま気絶した。
「ガイッ!」
後ろでラウルが叫び、我を忘れて剣を両手で支え突っ込んでくる。私は己の新たな力に驚きながらも、咄嗟に床に転がったガイの剣を拾った。ラウルには一つの炎を飛ばし、剣を構えるための時間稼ぎをする。そしてラウルに剣を向けた。その切っ先は、ちょうど彼の首に当たりそうな距離。
「くそッ」
小さく呻いたラウルだったが、あくまでもこれは練習試合。本物の戦場ならばここで諦めることなく立ち向かうものだが、結局、彼は降参を口にした。
「……降参だ」
それを聞いて私は剣を手放した。カラン、と空虚な音が地面に響いた。そしてすぐに、身体中から力が抜けるような気がした。右手を見つめ、先ほどの力を思い出す。
赤くて、綺麗で、巨大で、強大。
ラウルは地面に座り込んで私を見つめ、こう言った。
「赤い薔薇は、花の女王」
その瞳には畏怖と共に、尊敬が宿っていた。
「貴女は、薔薇の女王だ」
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夏は暑いです。熱中症にお気をつけて。




