軍の訓練
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私の立場が王女であることを考慮してくれたのか、馬車を用意された。クレイグ王子の計らいだろう。私を嫌ってはいてもそういう対応をするところは育ちの良さなのだろう。
「ありがとうございます」
そう礼を言えば、
「あなたに何かあるとヴィルヘイム兄さんが恥をかくので」
と返された。やはりツンデレというやつだろうか。
そのまま三十分ほど馬車に揺られ、ようやくガンド訓練場へと辿り着いた。この場所には二万人の兵士が在中して日々訓練をこなしているという。
「まあ、今は南西部の竜討伐のために兵士を領主の方に貸し出しているので、二万人もいませんけど」
南西部というと、ラムロスの出身である砂漠地域グレイスの近くか。確かオアシスが多い砂漠地域で、富裕層が住む場所のはずだ。だから竜害で人が死ぬと不味い。
「さて、今は午前の訓練をしているところですけど……アグリア王女は何を見たいんですか?」
剣の稽古に射撃訓練、ランニング。他にもありとあらゆる方法で訓練されているが、中でも気になるものがあった。ヴィルヘイム王子が参加している訓練だ。
岩も壁も何もない砂の地面の場所で、巨大な剣、いいや、もはや盾のような物を持った兵士とヴィルヘイム王子が対立して、驚くべきことに異能を出しているのだ。相手の兵士はひたすらに異能を避け、あるいは盾でガードしてヴィルヘイム王子に近づいていく。
「あの訓練を見たいわ」
「ああ、あれですか。我が国特有の訓練で、敵国と戦争になった際に相手の国の異能に対応出来る様にしているんですよ。………残念なことに、《魔王》は炎しか使えないからバリエーションは少ないけど」
最後の一言は私への説明ではなく、ただの愚痴だった。が、私はその言葉に反応した。
「ガンド訓練場へ連れてきてくださったお礼に、私が参加いたしましょうか?」
「は?」
何を言っているんだ馬鹿なのかお前、と言わんばかりの顔をされたが、気にせず言葉を続ける。
「アストレア王国の《聖女》は人それぞれ異能の内容が異なります。私は炎と薔薇を用いていますし、逆に水や風を使う方もいます。ヴィルヘイム王子とはまた違う炎のタイプですから、良い訓練になるかと」
親切そうに言ってはいるが、本音は、見ているだけでは暇だから私も戦いたい、である。
「王女が戦闘訓練など、相手の兵士は緊張で吐くぞ」
クレイグはヴィルヘイム王子と兵士を眺めながらそう言った。もはや私は呆れるを通り越して驚かれているみたいだ。
「私が怪我をすればそれは私の責任です」
と、そこで訓練が終わったようだ。ヴィルヘイム王子はこちらに気がついたようで、視線を寄越してくる。相手の兵士は休憩するため簡易テントへと戻った。ヴィルヘイム王子はそのまま私たちに近づいてきて、声をかける。
「アグリア姫、なぜここに」
ずっと訓練をしていたのに、少しの汗もかいていないようだ。慣れているのか、もとからこうなのか。
「私が行きたいと言ったら、クレイグ王子が連れてきてくださったのです」
「ヴィルヘイム兄さん、訓練お疲れ様です」
先ほどまでとは打って変わって、クレイグ王子は天使のような笑みを浮かべて兄に笑いかける。
初めて会った際に第三王子ラクレスも言っていたが、彼はいかなる時もブラコンなのだなぁと感心する。なんというか表情と感情の変化が速すぎてすごいとしか言いようがない。
「ああ、そろそろ兵士も俺の異能に慣れたようだな」
弟の態度は見慣れているようで、ヴィルヘイム王子が淡々と返す。それに間髪入れず、私は口を出した。
「そこで、私が訓練に参加させていただくのはどうでしょうか? 《聖女》の異能と戦った事はないでしょうから」
「なるほど、アグリア姫が良いのなら、ぜひ頼みたいな」
「さすがヴィルヘイム兄さん! アグリア王女の変なアイデアに動じないとは!」
おい、私が言った時は阿呆を見る目をしたくせに! あと変なアイデアってなんだ。失礼だぞ。私は王女なのに。兄への贔屓がすごいぞ。
とはいえまあ、許可されたならばありがたい。
「兵の休憩が終わるまで少し待ってくれ」
あと二十分は休憩をするとのことだったので、私たちも簡易テントへと向かうこととした。
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