新たなる日々
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結婚式を終えてノストラダム宮殿で過ごし始めて三日。だいぶ慣れてきたところだ。
ヴィルヘイム王子は毎日仕事へ行ってしまうから、会う時間はあまりない。ゆっくり話せるのは夜眠るときくらいだ。
ヴィルヘイム王子の仕事は、貴族たちとの会議のこともあるが、大抵が獣や竜の討伐、あるいは犯罪者の捕獲だ。それから、毎日軍の訓練場に顔を出しているようだった。
軍の訓練場は、ノストラダム宮殿から十五キロメートルほど離れた場所にある。その名は、ガンド訓練場。
ガンドとは本来、魔術に関する単語だ。人や動物など、あらゆる生物に病や死をもたらすために放つもの。それがガンド。イメージとしては、銃弾のようなものだ。
そんな名を付けるなど、名付けた者はだいぶ変わっている。この世界には魔術などなく、あるのは異能のみ。魔術など偶像に過ぎないというのに。
その点では私が手から丸い弾丸のような炎を出せば、ある意味ではガンドなのかもしれない。
とまあ、夫のヴィルヘイム王子は毎日忙しい。対して私は暇だ。昨日までは屋敷を探索したり国王と王妃に面会したりしていた。が、ついにやることがなくなった。街へ行きたい気もするが、王女という立場上それは不味いだろう。
なので今日は、朝食後、廊下をうろついてみることにした。誰かに会えるかもしれない。この宮殿にやってくる者の人間関係を把握するためにも良いだろう。
「美味しかったわ」
料理人にそう告げて、私はテーブルを離れた。さて、廊下へ行きますか。
庭では国花が咲き乱れている。これはアストレア王国でもオーランド帝国でも同じことみたいだ。私はそんな庭を眺めながら、のんびりと廊下に立った。その背後には、セイラがいる。アストレア王国の時とは違い、王女の一番の専属メイドである彼女には立派なドレスが贈られ、今はそれが彼女の仕事服となっている。
そのまま、ぼうっと十五分が過ぎていった。
「うわ」
と、そこで誰かの声がした。
見れば廊下の先に第二王子クレイグが立っている。兄であるヴィルヘイム王子のことが大好きなクレイグ王子には、出会ったその瞬間から嫌われているようだ。今の「うわ」という声も、その感情の表れであろう。
「ごきげんよう、クレイグ王子」
「これはこれはアグリア王女。花を眺めてどうされたのですか?」
引き攣った笑みを浮かべるクレイグ王子は、少し面白い。なんというか、十八歳の割に分かりやすくてオーバーな反応をしてくれるのだ。
「お恥ずかしながら暇でしてね。ですから、美しい国花を眺めているのですよ。ところで、クレイグ王子はいかがなさいました?」
「ボクはこれからガンド訓練場へ行くんです。先日、ヴィルヘイム兄さんに訓練に参加してほしいと言われましてね。ボクの《魔王》はヴィルヘイム兄さんほどではないですが、先月も盗賊を退治したほどですから」
この数日、食事などで顔を合わせているうちに分かったことがある。それは、クレイグ王子はヴィルヘイム王子のことになると饒舌になることだ。
「それは素晴らしいことですね。いつか、私もクレイグ王子の異能をぜひとも目にしたいものです」
それから、クレイグ王子は褒めると調子に乗りやすい。言動の全てが分かりやすい人なのだ。
「ふっふっふ。そこまで言うなら、アグリア王女、あなたもガンド訓練場まで付いてくるといいですよ」
その言葉に私は嬉しくなった。なにしろ暇なのだ。それに、軍の訓練を見れることなど滅多にないはず。
断る理由などなく、私はクレイグ王子の話に乗った。
「いいのですか? ぜひ行きたいです!」
食い気味の私にやや驚きつつも、クレイグ王子は頷いた。
「軍の訓練を見たがる王女などそうそういない。アグリア王女は本当に変わった人だが、まあいい。我が国の軍の訓練を見られたところで、アストレア王国に有利な点はないからな。今から行く。付いてくるといい」
どうやら、私がオーランド帝国の内情を知るために嫁いできたのだと疑っているようだ。実際はそのアストレア王国に追い出されたような状況なのだが。
スタスタと廊下を進み出したクレイグ王子の後ろを、私とセイラは追った。
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