命運
ぜひ最後まで読んでください!
それからは、アレクサンダーたちは特に竜に出会うこともなくハルラ山を抜けることができた。
王たちが国へ辿り着くのに合わせて、国境には兵士たちが並んで待っていた。
「クレア、君の活躍は素晴らしかったよ」
「もう、レオハルト殿下ったらそればかりじゃないですか」
竜害から帰還まで、馬車の中で二人はずっとそう言っていた。
クレアにベタ惚れのレオハルトは一度彼女を褒め出したら止まらなくて、アグリアの異能よりも素晴らしいだのアグリアの戦い方よりも美しいだのと二人を比べていた。
「本当なんだ。アグリアとの婚約を破棄して良かった」
「レオハルト殿下、アグリア様の結婚式の帰りなのですから、あまりそういったことは言わない方がよろしいかと」
クレアが申し訳程度にそう言うと、レオハルトはより一層彼女を称えた。
「君は酷い虐めを受けていたというのに、どうしてそんなにも優しいんだ? たとえ天使だとしても、君ほど心の広い人はいないよ」
クレアのクリーム色の髪を撫で、レオハルトはうっとりとした瞳を浮かべる。
「優しくなんてありませんよ? ただ、アグリア様もお辛いことがあって少しばかり周りに冷たくなっただけでしょうから。結婚式、アグリア様が幸せそうで良かったと思います」
それからクレアは、レオハルトが自分をどれほど愛しているのかを確認するために少しばかり意地悪なことを言った。
「でも、ヴィルヘイム王子、とてもかっこよかったですね。背も高くて、軍服がよくお似合いで」
レオハルトよりもヴィルヘイムのほうが背が高く、体格も良い。あえてそのことを話題に出したのだ。
「しかし、あんな男よりも、僕の方が君を守れるさ。神に誓うよ」
愛しき彼女の言葉を聞いて、レオハルトはクレアがヴィルヘイムのような男が好みなのではないかと焦った。それを見たクレアは笑って、そして、少し恥ずかしそうに言った。
「わたし、今日の結婚式を見て、将来を思い浮かべたんです。いつかあんな風に美しい結婚式が出来たら、幸せだなって……その時は、レオハルト殿下。わたし、殿下の隣にいたいです」
言われたレオハルトは、叫びたくなった。
目の前にいる可憐な天使が、遠回しに僕と結婚したいと言っている、と。それを必死に理性とカッコつけたいという一心で堪えて、代わりに青の瞳を彼女に注いだ。
「クレア。僕と、結婚してくれるかい?」
内心勝ち誇ったクレアは、恋の駆け引きをよく理解している。自分から話題を出したくせに、一度引き下がったのだ。
「でも、下級貴族のわたしが未来の国王である殿下の妻など………」
「下級貴族だなんて関係ないさ。僕らの愛があれば階級の差など越えられる!!」
「ですが……」
「クレア、僕は君と結婚したいんだ」
「殿下……!」
実に甘ったるいシチュエーションだ。
そのまま、レオハルトは彼女の目を見て答えがオーケーなのだと気づき、静かに口づけした。
無論、その状況を見ている者はいない。誰もが護衛任務に真剣なのだから。特に帰り道では竜が出ている。アストレア王国内に入ったからといって気を抜いてはならないのだ。
「レオハルト殿下、わたし、殿下に相応しい王妃になれるよう、努力しますわ」
「ああ。二人で頑張ろう」
──アグリアとヴィルヘイムを越えてみせる。
そう思うレオハルトと、
──わたしが次の王妃になるのだと、認めたわ。
そう心の中で確信するクレア。
ただ、レオハルトの、二人に勝ちたいという強い思いは、のちに大きな災いを呼ぶのであった。
この時、馬車の外で一羽の鳥が国花であるピンクコスモスから飛び立った。その振動で花弁が散り、美しい二枚の花弁は地に落ちて、馬車に轢かれてしまった。
まるで、世界の未来を示すかのように。
最後まで読んでいただきありがとうございます。
面白いと思っていただけたら嬉しいです!!
いいね等お待ちしています。
他作品もぜひ。
六波羅朱雀をどうぞよろしくお願いします。




