悪夢の再来
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結婚式から二日が経ち、アストレア王国から来ていた者たちは帰還を始めた。いつまでも重要人物が国を離れていては王国が持たないからだ。
特に竜害が出たばかりで、今は国民の不安もある。
《聖女》にはなるべく早く帰還してもらわなければ。
だからこそ、こうして馬車に乗って帰路を急いでいたのにも関わらず…………。
「何よ、あれ……キャ─────ッ!!」
悪夢が、再来していた。
この帰還には、当然のことながらヴィルヘイムとアグリアは参加していない。
そして同じく当然のことながら、オーランド帝国の軍人も同行していない。リアム国王の好意によりハルラ山の入り口までは警護していたが、そこで別れたのだ。
だからこそ、今の戦力は異能を持たぬ男の軍人たちと、戦闘をしたことのない数名の《聖女》だけ。
そこに、竜が現れたのだ。
恐らく先日の竜害によって、他の竜たちも気性が荒くなっているのだろう。いつもならば森や山の奥に潜む彼らがこうして道に出てきている。
「配置につけ! 何があっても馬車を守ること!」
「「「はい!」」」
最前線を行っていた軍隊ナンバーツーのアレクサンダーが命令を飛ばし、驚きと恐怖で固まっていた軍人たちがすぐに気を引き締め直す。
アレクサンダーは馬から降りると剣を片手に走り出した。
敵は竜だが、まずは翼竜の指揮官である蒼竜を倒さねば。
「蒼竜とは、最悪だ」
蒼竜は群れをなす。大抵の場合は、三十五体ほどで飛び回る。恐らくこの山の奥にある湖にでも住んでいたのだろう。
──グアアァァァァッ!!!!
蒼竜が一声、咆哮を放つ。
たったそれだけのことで、その口から青い炎が放たれる。
その様子を見た数名の《聖女》が、馬車を降りていく。馬車の入り口に立ち、安全を確保しながらも異能を繰り広げ始めたのだ。
炎が木々を包み始めたのを見て、水を扱う《聖女》の彼女らは炎を消そうとするのだが………。
戦闘経験がないため焦ったことが祟った。そして、竜など貴族の自分達が出くわすことはないと、戦うための用意や勉強をしていないことも祟った。
蒼竜が水を味方とすることを忘れていたのだ。
蒼竜は翼竜の次に上位の竜だ。だから炎の威力は大したことはないのだが、面倒なことに水をかけても意味はないし、なかなか消えにくいのだ。
「水を出すな!」
アレクサンダーは相手が貴族であることを忘れ、厳しい口調で異能を止めるように言った。
それを聞いた軍人たちはすぐに彼女らに異能を止めるように告げる。
「でもっ!」
そんな彼女らの一人が、クレアだった。
「でもっ、異能がなかったら、戦えない!」
弓を構えた兵士が一人、遠距離でアレクサンダーの援護をしながら後ろに立ち《聖女》たちに告げる。
「大丈夫ですよ。アレクサンダー様は、強いですから」
それは決して彼女らを安心させるための嘘ではなく、己を鼓舞するための言葉でもなく。
ただ、一人の異能を持たぬ軍人を信頼しているが故の言葉だった。
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