未来がないと言われた男
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オーランド帝国国王リアム・オーランドは、この先を憂いていた。
「……」
ノストラダム宮殿の自室に一人、窓の外を見て佇んだリアムは、数週間後に待つ長男ヴィルヘイムの結婚式について考えていた。
リアムはヴィルヘイムと共に、妻であり王妃のフレア・オーランドとアストレア王国へ向かう予定だ。
大勢の近衛兵に守られながらの旅路となる。長い道のりとなるのは老体に堪えるが、仕方ない。
ずっと、どれだけ結婚しろと言っても聞かなかった息子がいきなり婚約したと言うのだ。しかも式はすぐに行うと。
もちろん、相手の女性アグリアは三大貴族だ。
近頃は国内の貴族同士の婚姻が多い。そのせいで血筋が近くなっている。あまり良いことではない。
だからこそ、今回の他国の貴族の血筋を取り入れることは決して悪いことではない。
故に急な旅路でも許したのだが。
「相手の女性を見たこともないとなると…」
あの頑固で、軍事や政治にしか興味がなく、モテる見た目だというのに恋愛などに興味がなく、淑女からの告白を全て断っていた息子が一体どんな女性に惚れ込んだのか気になる。
それに、これから先の我が国の未来も気にかかる。
もしも戦争準備というようになった場合、アグリアは和平や話し合いの架け橋となるだろう。
それに、なぜアグリアは向こうの国の王子に婚姻破棄されたのだろうか。
息子のことだ。間違った観察眼を持って、ハズレともいえる女性を選ぶとは思えない。
これまでにも何名かの姫たちとの婚姻の話を息子に言ったが、そのたびに相手の女性のつく嘘を見抜き、それを理由に断り続けたのだ。
決して息子を疑いはしない。
が、やはり気になる。
「…誰かに調査させるか」
あとで、念のため部下に指示してアグリアについて調べさせるか。
「何はともあれ、ヴィルヘイムに祝いの物を用意せねば。果たして何がいいのやら…アイツの趣味は分からんな」
新型の銃でも用意すれば確実に喜ぶのだろうが、さすがに結婚祝いがそれはいかがなものか。
「向こうの父親は、確か、ガラティス殿だったか。娘に何をあげたのだろうか」
全く、一国の王になっても息子には振り回されるものだ。
でも、息子には自分のようになってほしくないと願う。
思えば、自分の結婚式はひどいものだった。
たくさんの来賓に囲まれながらも、本気で祝福してくれるものは少なかった。
──未来がない方だ。
その言葉は、兄ではなく次男の自分が王になった時に多くの人に言われたものだ。
ウィリアムではなくリアムという名前を、遠回しに笑われていた。
ウィルのない国王。
いつだって、祝福されていたのは兄だったのだ。
けれど、息子には、幸せだけを見せてやりたい。
敗北の人生などいらない。
息子には、未来だけを、残したい。
「この婚姻、成功させる」
心に、そう固く誓う。
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