結婚式の後03
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日頃からノストラダム宮殿に住んでいるオーランド帝国第二王子のクレイグは、いつものように、夜十時過ぎにベッドへと入った。
フカフカの布団ではあるが、普段からそこで寝ているクレイグは何とも思わない。
彼は自分が幸福であることを知っているけれど、彼にとっての普通はこれなのだ。
「むぅ……」
昼間の結婚式の光景を思い浮かべて、クレイグは口を尖らせた。
「ヴィルヘイム兄さん」
そして、尊敬する兄の名を紡ぐ。
一体何がどうして、兄が急に結婚すると自分から言ったのか分からない。
相手は確かに三大貴族だけれど、急いで結婚するほどではないはずだ。しかも婚約破棄されたばかりの女。
「確かに、クレアという奴は胡散臭いけど……」
結婚式の会場に、クレアとレオハルトの姿があったのを見た。
第二王子であるクレイグはあまり他国のパーティへは行かないから今日初めて二人を見たけれど、第一印象としては…。
「レオハルトは一国の王子で長男だというのに、兄さんとは大違いだ」
レオハルトとヴィルヘイムは立場としては同じだ。
一国の長男で、いずれは王になる者。
「あれが未来の王では、アストレア王国の未来は薄いな」
さらに問題なのは、あのクレアという女だろう。
「あの令嬢、実に胡散臭かったなぁ……」
大抵の人ならば、か弱そうな女性。あどけなさの残る、ややドジな雰囲気の女子。臆病で常に一歩引いている奥ゆかしい人。そんな印象を持つのだろう。
しかし、兄のことを好きすぎるが故に、兄に近づくすべての女性を常に警戒して生きてきたクレイグはそんな見た目には引っかからない。
「アグリアがあの女を虐めたっていう話は若干無理があるな…………まあ、アグリアを認めた訳じゃないけど」
どんな相手でも、たとえ自分と兄の関係を遠ざけるような人が相手でも、贔屓や色眼鏡なく判断できるのが彼の育ちの良さだろう。
「ああ〜、もしかして〜、子供とかできんのかなぁ」
兄の子供ならば絶対可愛いしカッコいい。でも、アグリアはやっぱり気に食わない。
そんな思いが彼の心の中で葛藤を繰り返す。
「あの女、ヴィルヘイム兄さんに色目使ったのかな。いや、ヴィルヘイム兄さんはそんな簡単に女に引っかからない」
アグリアを疑いつつも兄への信頼は忘れないという、揺れまくりの心。
「絶対、尻尾掴んでやるんだから……!」
十八歳にもなって、未だブラコンを極めている。むしろ、歳をとるほど兄への尊敬と敬愛は深まっていくように思われる。
「絶対、絶対、絶対掴んでやるんだから!」
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