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結婚式の後01

ぜひ最後まで読んでください!


 オーランド帝国での式が無事に終わったその日、アストレア王国から来ていた王族や貴族はノストラダム宮殿内に部屋を借りていた。


 その一室で、レオハルトは息を吐いていた。


「くそ……」


 今日見た光景が目に焼き付いて離れなかった。

 目を開ければ、いつもと違うこの部屋に落ち着かなくなって、目を閉じれば、瞼の奥にアグリアとヴィルヘイム王子の幸せそうな姿が映った。


 ざわつく胸を抑えても眠ることはできず、夜中だというのに思考は妙に冴え渡っている。


「なんで……なんで、アイツが」


 クレアを虐めていた女が、あんな風に幸せな結婚をして良いものか。いいや、そんなはずがない。

 薔薇姫様とまで呼ばれる女だ。恐ろしい異能の使い手。

他の人とは違って、王族ではないのに桁違いの威力を放ち、しかも、それは棘だらけの薔薇の姿を模している。


「なんで異能が男にはないんだ…!」


 オーランド帝国とは違い、《聖女》は女にしか受け継がれない。まあ、最初の一人が王妃エレクトラである以上仕方のないことなのだが、レオハルトは不満だった。


「僕にも異能があれば……そうだ、《魔王》の力があれば、あんな奴に馬鹿にされないのに!」


 先日パーティでヴィルヘイム王子に言い負かされたことを未だに気にしていた。実に子供っぽくて心の狭い男だが、レオハルトは自分こそ正しく素晴らしい紳士であると信じてやまない。


「最初から、アグリアなどと婚約しなければよかったんだ。父上が三大貴族と結婚しろなんて言うからいけないんだ」


 レオハルトは、忌々しい二人の姿をかき消すためにクレアの姿を必死に思い浮かべた。

 けれども、ヴィルヘイム王子に口づけされた時のアグリアの顔が頭から離れない。


「ああもう!」


 イラついたレオハルトは、真白の毛布を頭までかぶると、この世の全てを遮断するかの様に体を丸めた。


 そうして眠りについた。


□■□■□


 その頃、同じように割り当てられた部屋でクレアはベッドに入っていた。

 そして、ため息を一つ。


 クレアの脳裏にも結婚式の光景が映っていた。


「どうして、アグリアが、幸せになるの…?」


 王族であり長男であるレオハルトに婚約破棄されるということは、例え三大貴族であっても死刑宣告されるくらいのダメージのはずだった。だからこそクレアはレオハルトに近づいた。


 それなのに、結果はどうだろう。


「ヴィルヘイム王子のような強い人がオーランド帝国の次の国王ならば、同じ頃アストレア王国の国王となるレオハルトでは勝ち目がない」


 アストレア王国に素晴らしい指揮官や軍人は少ない。

 軍ナンバーツーのアレクサンダーはレーランド家だから、戦争になればオーランド帝国へ付くかもしれないし、レイ王子の妻もレーランド家だからオーランド帝国に付くかも……。


 考えれば考えるほど、クレアは自分の計画の成功率が如何に下がりつつあるかを悟った。


「アグリアがいなければ……ううん、ヴィルヘイム王子がアグリアに結婚を申し込まなければ良かったのよ」


 オーランド帝国の人間がパーティに参加することは珍しい。だから油断していた。

 せめて、彼がいない時に婚約破棄を言い渡せばよかった。


「というか、いつ知り合ったのかしら」


 三大貴族だからという理由だけで結婚を申し込むのはあり得ない。非現実的である。

 特に婚約破棄をされたということは女性側に問題があるというわけだ。しかも今回はクレアへの虐めという話だった。


 ──なのに、なぜ、婚約を申し込んだの…?


 そうしてクレアは一つの可能性に辿り着いた。


「昔、会ったことがあった、とか?」


 昔知り合って、今再会を果たしたと言うならば納得だ。

 三大貴族なら一度くらい会ったことがあってもおかしくはない。


「でも、もしそうだとしたら……昔たった一回程度会っただけで結婚したくなるくらい、ヴィルヘイム王子にとってアグリアは魅力的だったということよね………」


 クレアは自分が可愛らしく、守りたいと思わせる姿をしていると分かっている。そして、アグリアが人に嫌われ、可愛げのない口調や態度だとも分かっている。


 だからこそ、負けた気がした。


 自分達に見せつけるわけでもなく、ただ心から幸せそうに結婚するアグリアに嫉妬した。


「いつか。いつか、貴女の泣く姿を見てあげる」


 遠い未来で。

 あるいは、近い将来で。

 泣いて喚くアグリアの姿を想像すると、クレアの心は幾分か落ち着いた。


最後まで読んでいただきありがとうございます。

面白いと思っていただけたら嬉しいです!!

いいね等お待ちしています。


他作品もぜひ。

六波羅朱雀をどうぞよろしくお願いします。

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