旅立ちと出立と
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そうして準備を終わらせたのは、三十分後のことだ。
優秀なメイドのおかげで、予定よりも早く支度を終わらせることができた私は少し早いけれど、早速裏庭へと向かった。
裏庭へと出るための扉のところで、四角い小さな茶色の鞄を持ったアランが立っていた。
「早いな」
「そう言うアランこそ、早いわね」
「まあな」
ちなみに、私の後ろをついて来ているのは四人のメイドと二人の執事だ。そのうち一人はセイラで、残りの五人は私の荷物を持ってくれている。
扉を開けて外へ出ると、朝六時前の眩い太陽の光が目に入った。思わず吐息が溢れるような、圧倒的な存在感を孕んだ惑星だ。古来より数多の人間が太陽にはチカラがあると魔術的な面や宗教的な面で信じてきたのも頷ける。
すでに十以上の馬車が用意されていて、馬の色は黒や茶、白など様々だ。とにかく足の速い優秀な馬を集めたのだろう。
ちなみに、私が乗るのは白い馬の馬車だ。対して、ヴィルヘイム王子が乗るのは黒い馬の馬車だった。
ちらほらと貴族たちが外へ出て来ている。
三十分近く早いこの時間にもう来ているのは、絶対に遅刻は許されないからだろう。
と、ヴィルヘイム王子もやって来た。いつも通りに軍服を着こなしていた。燃えるようなワインレッドの髪を、太陽光が照らし出す。
眩しいと思ったのか彼は目を細めて、太陽の方向をその青い瞳で見つめた。
「ごきげんよう、ヴィルヘイム王子」
「ああ。寒くはないか、アグリア姫」
まだ秋ではあるけれど、冬はすぐそことも言える。
ヴィルヘイム王子は私に軍服の上着を貸そうかと申し出たけれど、丁寧にお断りした。私は結構暑がりなのである。
出立の十分前となると王族もやって来て、その中にはリアム国王もいた。ぴしりと身だしなみを整えたリアム国王と、まだ眠そうな顔をしているグレアム国王が並ぶとなんだか悲しくなって来る。
──いったい、いつから我が国はこんな風になってしまったのでしょうね。
平和ボケにも程があるのに。
「そろそろ馬車に乗っていただきたく」
御者がそう言ったため、皆それぞれの馬車へと乗り込む。
それぞれの馬車には二頭ずつ馬が繋がれていた。見た目の問題なのか、二頭の色は揃えられている。
一番前には両国の護衛の者が二人ずつ乗り、二番目にはアストレア王国の貴族が四名。
三番目にはリアム国王と近衛兵が乗り、四番目にはヴィルヘイム王子とラムロスが乗る。
五番目には私とセイラが乗り、六番目にはグレアム国王が乗る。
七番目には三大貴族が乗り、八番目には私の家族が、そして九番目の少し大きい馬車にはアストレア王国の王子と王女が乗る。
十番目から十五番目まではその他の貴族が乗るようだ。
さらにはそれぞれの馬車の左右を、馬に乗ったオーランド帝国の近衛兵やアストレア王国の軍人がそれぞれ走る。ちなみに、グレアム国王の隣のうち片方をアレク兄様が走るようだ。アランはというと、鞄は私の馬車に乗せて、本人は茶色の馬に乗ってその隣を走る。
何名かは、ただの執事という身分のアランが護衛として馬に乗り走ることに疑問を抱いたけれど、その美貌のため奥様方が「馬車に乗らずに走っているならば、ずっと姿を見られる」と喜んだため異議を唱えるものは出なかった。
馬車に乗り込んで、あとは出立を待つのみ。
もう感傷的にはならなかった。
私には、幸せな結婚生活と頼もしい国が待っているのだから。
□■□■□
ヴィルヘイムは、最後に辺りを見回した。
すると、クリスティア宮殿の一室の窓付近に人影が見えた。黒いカーテンが動いたのである。
何かと思ってみれば、ちょうどこちらの様子を伺うべくカーテンをこっそりと開けた人物と目があった。
その人物は、黒紫のローブを羽織っていた。
「昨日の、人物か…?」
先日のパーティで見かけた雰囲気と似ている。髪の色は色素の薄い金髪に見えた。
クリスティア宮殿に部屋を持っているということは、王族だろうか。
しかし、ここにはレオハルト王子もオーウェン王子もレイ王子もいる。
「第三王子のノア王子だろうか?」
小さくそう呟いた。
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