パーティは不穏か否か11
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パーティ会場にて。
ヴィルヘイムはワイングラスを片手に持って、壁際に立ったまま動かない。
ラムロスはその隣で、何も言うことなく立っている。
すると、ヴィルヘイムは突然、得体の知れない視線のようなものを感じた。
──今のは……。
戦場で初めてお目にかかる存在に出会った時のような感覚だ。それでいて、何か強烈な気配。背中を見せれば斬られるかもしれないと思わせるほどの。
ただ不思議なのは、それが殺気ではなく、それでいて軍の指令官や異国の将軍が持つような戦場なれしたが故の圧倒的強者のオーラでないことだった。
一体、誰が?
それは分からないが、おそらくマッドサイエンティストとでもいうべき学者などの類だろう。
視界の端に一瞬、ローブのようなものが見えた気もした。
同時に、ヴィルヘイムは視線を感じた。見れば、二人の女性と一人の男が近寄ってくる。
──アグリア姫、戻って来たのか。
□■□■□
会場へ戻った私たちは、すぐにヴィルヘイム王子を見つけた。
鋭い眼光で会場を値踏みするように見つめるヴィルヘイム王子は、その容姿や体格の良さも相まってよく目立っていた。
「ヴィルヘイム王子」
声をかければ、向こうもとっくに気がついていたようで、とくに驚くことなく会話に応じてくれた。
「アグリア姫。用事はもういいのか」
「はい」
「そうか……先程やって来た者が言っていたが、オーランド帝国へ行くのは、明日の朝に変更となったらしい。通る予定の道に竜が一匹出て、亡骸の処理に時間がかかるそうだ。代わりに、朝は随分早く出なければならん」
先日の一件で珍しく白竜が出たものだから、つられて出てきた翼竜が一部迷子になって森を彷徨っているのだろう。
「分かりました。道中も迷い竜が出ないよう、気をつけなければなりませんね」
「ああ。異能を持つ俺たちはともかく、メイドたちの安全を確保せねばならんな」
その通りだ。
死亡すると問題になるのは私たちだけれど、死ぬ確率で言えばか弱い女性であるメイドや馬を引く従者、あるいは料理人など、戦う術を知らない者の方が百倍高いのだ。
「おや、あちらの方が騒がしいですね」
話していると、パーティ会場の中心辺りが何やら騒がしくなってきた。
「グレアム国王が酔っ払ってしまったようだなぁ」
面白がるようにアランがそう言った。アランは少し背伸びして、人だかりの中で何が起きているのかを遠目に確認したようだ。暗殺者である彼は人一倍目が良いらしい。
「そう」
私はもはや呆れることもやめて、それだけ言った。
「皆、今日はよくぞパーティに参加してくれた。パーティはこれにて解散とする。オーランド帝国へ行く者は明日の朝四時起床とし、朝六時出立とする。また、裏門集合である。以上だ」
酔い潰れた情けない国王の代わりに、オーウェン王子がそう言った。
人前、それも多くの貴族などの前でありながらも堂々と告げる姿は、彼こそが未来の国王ではないかと思わせる。
「来て早々に解散とは……」
来なければよかったと思いつつも、明日の予定について知れてよかったとも思う。どのみち後で誰かが来て予定を教えてくれるのだろうけれど、情報は早く知るほうがいいものだ。
そうして、一人また一人と貴族たちが従者を連れて会場を出る。
そこに、レオハルト殿下の姿はない。
あのまま戻ってこなかったのだろう。
□■□■□
「フン……」
同じように兄の不在に気がついたオーウェンが、不満そうに鼻を鳴らした。
「王族の仕事をやれぬのか……」
誰にも聞こえないくらい、小さくそう呟く。
オーウェンにとって、王族に生まれたことは運の強さであり、運命でもある。
偶然ここに立っているからこそ責務を果たし、そして運命的にここに存在しているからこそ意味を成す必要がある。
それ故に、無邪気で無知、自由奔放で自己中心的な兄の存在が憎かったし、年齢のせいで能力のない兄が上に立とうとしているのが許せなかった。
「この世は、実力主義だ」
年功序列などあり得ない。
年上を敬うことと、年上に従うこと。
その二つは意味が違う。
決して、履き違えてはならない。間違えてはならない。
「弱者の為に強者が犠牲となり、強者の為に強者が世界を創るのだ」
それが、オーウェンの信条であり、オーウェンの目標であった。
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