パーティは不穏か否か07
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そのまま、かれこれ三十分は結婚式やこれからのことを話していた。
時にアランとセイラ、ダグラスも会話に混ざり、意見を述べることで見識を深めていく。
「オーランド帝国へは、一度しか行ったことがない。それも十年近く昔だ。軍事国家であるオーランド帝国の門が商人たち以外に開かれることは少ないからな」
お父様がそう言った。
「その時はわたしもついて行きましたけれど、綺麗な国だったわぁ」
懐かしむように、お母様がそう続く。
「確か、十四年前に国葬があちらの国で行われて、それに参加されたのでしたっけ……」
私も記憶を辿った。
記憶が正しければ、確か、現国王であるリアム国王の父、当時の国王ムスペルが亡くなったはずだ。
「ああ。三大貴族として、参加した。少しの間しか滞在できなかったが、素晴らしい土地だったよ。政治がきちんと行われていて、軍事国家でありながら、暴君ではない。独裁政治といえば、そうかもしれない。王が存在しているのだから民主主義ではないだろう」
世界中を探しても、民主主義が行われ、国のトップを投票などで決めている場所は少ないだろう。
それゆえに内乱や国民の反発が強い国もある。軍事国家は特にだ。上に立つ人間が、民を武力で抑えようとするから。けれど、オーランド帝国は世界屈指の軍事国家であり王が政権を握るというのに、国民は静かに従うのだ。
「我が国とは違う。決して平和を謳歌するのではなく、先祖が残した強さや権力に溺れるわけでもない。誰もが国王の意図を汲み、国の存続のために命を賭けて兵士となる」
そう言ったお父様の顔は、少し不安そうだ。
アストレア王国とオーランド帝国が戦争になれば……そう考えているのだろう。
だからこそ、私は言った。
「ご安心を、お父様。たとえ何があろうとも、私は、レーランド・ファナ家の者として誇りを持ち、そして、オーランド帝国の者として強さを持って」
正しい争いがこの世にあるのかは分からない。
戦を仕掛けるのは悪だが、仕掛けられる側にも問題がないとは言えない。
戦争を避ける術は、服従以外にもあるからだ。対話か、支援か、とにかく、あるのだ。それでもお互いの思想や理念、宗教や生活、強さや弱さ。
それが噛み合わずに戦争になるならば、その時は。
「戦の時、私自ら、圧倒的な強さを持って前線を駆け、光の速さで終結させ、最小限の傷跡で抑えてみせると誓いましょう」
アストレア王国の王族が嫌いだとはいえ、国民に罪はない。愚かな王に付き合うつもりはないが、それに翻弄される民は不憫だ。もしも、戦となったならば、アストレア王国国王の首だけで終結させる。
オーランドの民は裏切らない。裏切れない。
私は未来の王妃なのだから。
私を受け入れようとする相手の国を捨てられない。
それでも、レーランド・ファナも捨てない。
私が金の瞳でお父様を真っ直ぐと見つめれば、お父様もまた真っ直ぐに見返してくる。
「………はは」
そして、束の間の沈黙の後、お父様は笑った。朗らかに笑った。
「いつの間に、娘はこんな好戦的に育ったのかね」
「あら、お父様の影響ですのよ?」
反抗的にそう言い返せば、お母様も笑った。相変わらずの優しい笑みだ。
「アグリア、困ったことがあればいつでもわたしたちを頼りなさい。たとえ何を敵に回しても、レーランド・ファナは愛しい娘を見捨てません。未来の王妃になったって、わたしたちの娘であることは一生変わらないわ」
その時、窓の向こうで鳥が羽ばたいた。
真白な鳥だった。
その振動を受けて、庭に咲き誇る国花のピンクコスモスが風に乗って舞い散る。
──オーランド帝国へ行けば、別の花が咲いているのね。
「ありがとうございます、お母様、お父様」
なんだか婚約が決まった頃から、お父様が急に親バカになった気がするのは何故だろう。
もしかしたら、貴族として厳しく育てたことや、仕事が忙しくてあまり構えなかったことを後悔しているのだろうか。いや、私の思い違いか。私が気がつかなかっただけで、もしかしたらお父様は昔から親バカだったのかもしれない。
「アグリア・レーランド・ファナはこれから、アグリア・オーランドとして、気高く立派に羽ばたいて見せます」
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