パーティは不穏か否か06
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お父様とお母様は、クリスティア宮殿内にある、私が借りている部屋の五つ隣の少し広い部屋で、ソファに座って待っていた。
急にパーティに巻き込まれてしまったから、少し待たせていたかもしれない。
「お父様、お母様。お待たせいたしました」
お辞儀をして部屋へ入ると、アランとセイラだけを入れた。他にはお父様が連れてきたダグラス・ローレンがいるのみだ。
「座りなさい」
お父様の言葉で、私は二人の座るソファの向かいにあるソファに座った。
ふかふかな座り心地だ。さすが、宮殿にあるものである。
「結婚式は竜騒ぎがあったが、無事終わってよかったな。もちろんオーランド帝国へは行くが、ゆっくり話せるのはこれが最後だろう」
お父様がそう行った。
もしや、娘との別れを惜しんでいるのだろうか。こう見えても親バカなところがある人だ。
「ヴィルヘイム王子は今最も強い《魔王》であると言われているけれど、凛々しくて真っ直ぐそうな人で良かったわ」
銀の長い髪を揺らして、お母様が上品に笑った。
少しばかり病弱だけれど芯の強い人で、ただそこにいるだけで品のある人である。お父様も、お母様には少し弱かったりする。
「えぇ。ヴィルヘイム王子との結婚は、正解だったかと」
「ところで、アグリアを待っている間、ダグラスがアグリアを呼びにパーティへ行ったのだが……」
なるほど、アランは父であるダグラスにハンドサインかアイコンタクトか何かを受けて私に時間だと声をかけたのだろう。
ダグラスがいるなんて、全く気が付かなかった。
渋い顔のお父様を見て、内心少し焦った。
──もしかして、怒られる? さすがに王族にきつく言いすぎたかしら。
けれど違った。お父様が急に感情的になったのだ。
「ヴィルヘイム王子との結婚は正式なものとなったというのに、しかも国王陛下が開いたパーティにおいて、まだ我がレーランド家の長女を愚弄するとは……! あれほどまで地に落ちたのか、レオハルト殿下は……!」
その様子を見て、お母様が呆れたように宥めた。
「ダグラスが帰ってきてこの話を聞いてからずっと、ガラティス様はこんな調子なんですよ、アグリア。全く、ガラティス様? こんなところで言っては廊下にいる者に聞こえるかもしれませんよ」
お母様もお母様である。
内容ではなく、場所を注意するとは。
「むぅ、カナリアの言う通りだな。しかし、心底苛つくぞ。……アグリア!」
唐突に声を大きくして名を呼ぶものだから、私はびくりとして背筋を伸ばして返事をした。
「はいッ」
お父様はソファから少しだけ前のめりになって、私に告げる。
「絶対、絶対、ヴィルヘイム王子と幸せになるのだぞ! いいや、アグリア、お前が望む人生であればそれで良い。大切な者と生涯を共にし、自分に誇れる人生を生きるのだ!」
やっぱり親バカだ。
三大貴族であっても、親は親である。
私は最高の笑みで応えた。
「はい!」
次に、お父様は私の座るソファの後ろに立つアランとセイラを見つめた。
「娘を頼むぞ、アラン、セイラ」
「この命に変えてでも守って見せましょう」とアラン。
「かしこまりました」とセイラ。
なんだかアランはたまに、主従関係以上の思いが込められたような言葉を告げる。
いや、私のみに従う暗殺者である以上、命を賭けるその覚悟は間違っていないのだが。
「アラン。お前の使命を、忘れるでない」
ダグラスが息子に一言だけ、そう告げた。
「任せろ、オヤジ」
それからはひたすらに、お父様が「ウェディングドレスが似合っていた」だとか「次はアレクが結婚だろうか」などと口にした。
「アレクは恋人もいないようですし、軍隊のナンバーツーということで忙しいでしょうから、結婚はまだ先でしょうね」
呑気にそう言うお母様だったが、お父様は
「武術に励むのも良いが、レーランド家の長男である以上、いずれは家を継ぐことになるだろうしなぁ」
と溢した。
「もしかしたら、カレンの方が先かもしれませんね」
と私が言えば、お母様も「そうねぇ」と続いた。
「カレンはまだ十四だぞ? 結婚などまだ先だ」
お父様が腕を組んでそう言った。
「あら、ガラティス様は我が家の娘たちが全員結婚してしまうのが寂しいだけでしょう?」
なんて言えるのは、お母様の強さだろう。
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