パーティは不穏か否か05
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今日は文字を綴る指がよく進む。
アレクサンダー・レーランド・ファナは、白い軍服に身を包んでパーティ会場の隅に立っている。
それも、紺の線が入った、上位の者用の軍服だ。
アグリアとはまた違う色の銀の髪をオールバックで綺麗に整えて、ライオンのように鋭い目つきをしている。
多くの令嬢たちが、若くして軍の上層部に上り詰めた貴族の彼を、「かっこいいわぁ」「さすが三大貴族」「イケメンねえ」と褒め称えるわりに誰も声をかけないのは、その双眸が恐ろしいからだろう。
「………」
延々と無の状態で動くことなく辺りを見回し続ける。それが、彼の任務だ。多くの貴族、王族が参加するだけでなく、国王が参加しているパーティだ。
今回の彼の任務は国王の護衛となっている。
──つまらぬ。
心の中で、そう告げる。
──こんな風にパーティを開いて、一体何が楽しいのか、俺には分からぬ。
貴族のお遊びを昔から理解できない彼は、自ら進んで軍へ入った。
『軍へ入る』
と、入る前提で言い切ったアレクサンダーに、父であり当主であるガラティスはこう返した。
『軍事的な行動は、本来ならばラザフォード・ベル家の領分だ。それでも入りたいと言うならば、軍隊でトップへ上り詰めろ。誰も文句を言えないほどに、だ』
それに彼はこう返した。
『了解した、父上』
口数の少ないアレクサンダーだが、約束は守る人だ。
実際、すでにナンバーツーになっている。ナンバーワンになるまで、もう時間の問題だろう。
──グレアム国王陛下も、相変わらず酒ばかり。
果たしてそんな存在を守ることは、ナンバーツーのアレクサンダーに相応しい仕事なのだろうか。
──アグリアも昔から変わらず、売り言葉に買い言葉。
もしもアストレア王国とオーランド帝国が戦争になったら、と考える。
アグリアはレーランド家を保護するようオーランド帝国へ訴えるのだろう。
しかし、軍隊のナンバーツーであるアレクサンダーが軽々とオーランド帝国へ行くことは許されまい。
アストレア王国第四王子と結婚している妹も、国に残ることを選ぶに違いない。
父上がどちらの国を選ぶのかは分からないが、勝利する国に付くだろう。
この血と誇りを絶やさぬために。
──その時は、何があっても、戦い抜こう。
元より貴族社会を嫌って軍に入ったのだ。
哀れなまでに、愚かしいほどに、平和ボケしたこの国に、もっと言えばこのくだらない世界に興味などない。
──戦争になったその時は、オーランド帝国の《魔王》とすらも、戦えるのだろうか。
それゆえに、命を賭けた場所というものにアレクサンダーは焦がれていた。
──その血潮は、醜く、哀れで、酷く汚れていて、それ故に、儚く、美しく、真実を映すのだろう。
遺書を書くのは人間という生命くらいで、珍しい行動だ。それくらい人は誰かに忘れられることを嫌い、自分の思いを知っていて欲しい、理解して欲しいと願うのだろう。
そして、大抵の人は死を嫌う。だからこそ命乞いという行為をするのだ。
死の瞬間、人は嘘をつけない。
汚くも、本音を晒し、醜くも、生を望む。
──それに触れられたなら、俺は……。
黄金の瞳が、クルリと回るように怪しげな弧を描く。
──あるいは、人というものを理解できるのかもしれぬ。
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