迷惑な王子と冷静な王子
ぜひ最後まで読んでください!
ノリノリで書いてたらいつもより長くなりました。笑
そして、私たちの登場となった。
舞台上に突如現れた私と、その背後にひっそりと立つセイラとアラン。
何名かのメイドたちはアランを見て、その美貌に手を止めた。
代わりに、ほぼすべての貴族が私を見て顔をしかめた。
階段を登ってヴィルヘイム王子が舞台上へとやって来る。
多分、私と並んでくれとグレアム国王辺りに言われたのだろう。
「サプライズとして、花嫁にも参加していただく!」
すっかり酔っ払ったグレアム国王だけが、場の空気を読まずにそう言った。
視界の端に映るクレア・シーランドが体を縮ませてレオハルト殿下にしがみついたのが分かった。
か弱い乙女ぶっているけれど、彼女にはプライドというものがないのかしら。
固まり始めた会場の雰囲気を感じて、空気を読んだレイ王子が舞台上へと登って来て声を発した。
「この度は、ご結婚おめでとうございます。両国の架け橋となられるお二人の幸せをお祈りしています」
それに続いて、やたらとテンションの高いアルメリア王女も舞台目指して歩き始める。
ドレスの裾を揺らして、階段を登り終える。
「先日の竜退治、実に見事だったのです! メリィはすっかりお二人の大ファンになってしまったのです!」
ああ、そうだった。悪い子ではないのだけれど、空気が読めない人なのだった。
王族である人間が私のファンだなんて発言をするものだから、せっかく和らいだ空気が台無しだ。
実際、レオハルト殿下は妹であるアルメリア王女の発言が気に食わなかったようだ。
「アルメリア、相手が誰なのか分かって言っているのか?」
低い声で、舞台下からそう告げる。
その隣でクレアが「レオハルト殿下」と声をかけて嗜めようとするが、頭に血が上ったレオハルト殿下には意味がない。
ただ、クレアとしては嗜める姿を周りの人間に見せることに意味があるのだろう。
「えぇ、もちろんですわ、レオハルト兄様。メリィは彼女が美しい《聖女》のアグリア様だと分かっていますわ」
違う違う、そういうことではない。本当に空気を読んでくれ、アルメリア王女よ。
貴族たちがどうしたものかと困り果てているではないか。
それに、レオハルト殿下もだ。
どんな感情や因縁があったとしても、これは国王陛下が開いた私の結婚祝いパーティなのだ。
いくら王族だとしても、国王のパーティを邪魔してはならないと分からないのだろうか。
隣に立つヴィルヘイム王子を見ると、レオハルト殿下のことなど気にもしていないようだった。
相変わらず、どこか遠いところを見るような瞳だ。
何を考えているのか分からない。
「…………一つ思ったんだけどさ、僕が婚約破棄した直後にヴィルヘイム王子との婚約が決まったって、おかしくないか?」
沈黙から始まったレオハルト殿下の言葉に、他の貴族たちが、ざわめき始める。
多分、誰もが一度は思ったことだろうし、私自身、なぜ婚約を申し込まれたのか分からない。
三大貴族には婚約していない令嬢がいたのに。
「最初から、ヴィルヘイム王子とは恋仲だったんじゃないか?」
なんと酷い話だろうか。
静まり返った空間をなんとかすべく、とりあえず否定した。こういう時は無視すると逆効果だ。図星をつかれて黙り込んだのだと思われるし、王族を無視はできない。
冷静に、正論を言わねば。
「ご冗談を、レオハルト殿下。少し前にお会いした時、レオハルト殿下は私がクレア・シーランドに嫉妬して虐めたと仰られました。もしもそれが本当ならば、当時の私にレオハルト殿下以外の殿方が存在しているのはおかしいではありませんか」
虐めているという話を認めるわけではない。
ただ、相手が信じる話を利用するだけだ。
「それにしても、私が婚約者に嫉妬して令嬢を虐めたと言うかと思えば、私に他の殿方が存在したと言うなど、あまりにも矛盾の多い話ですね。まるで、作り話のように。未来のことを考えずに嘘に嘘を重ねた時のよう」
そして、「ふと思っただけですが」という風にそう告げた。
途端、レオハルト殿下は頭が悪くて反論が思いつかなかったのか、
「薔薇姫ならば、それくらいするだろう!」
とよく分からないことを言った。
つまりは、薔薇姫ならば好きな男以外に利用価値の高い男を作っておくということだろうか。
なんと腹立たしい。三大貴族である私を侮辱するなど、いくら王族といえどあり得ない。
思わず怒りが込み上げて来たその時、黙って見ていたヴィルヘイム王子が私を庇うように一歩前に出た。
「俺が彼女に婚約の話を持ちかけたのは、レオハルト王子が婚約破棄を告げた後だ。事実、アストレア王国に住む彼女とオーランド帝国に住む俺が知り合い、恋仲になる機会などなかったはずだ。そもそも、国を行き来すること自体が稀なのだから」
そうだそうだ! と心の中で強く賛成した。
一体全体いつ、私とヴィルヘイム王子が仲良く話す機会があったと言うのだろう。
ヴィルヘイム王子は自国で軍を率いて日々大忙しだというのに。
「ならば、なぜ急に婚約を申し出たんだ!」
クレアという婚約者の前でいい格好を見せたいのか、臆病なレオハルト殿下は珍しく引き下がらない。
すっかりクレアの思い通りだ。
このパーティが終わった後、恥をかいたレオハルト殿下をクレアが慰めるところまでが彼女の台本だろうか。
「それはレオハルト殿下が婚約破棄されたからだ。アグリア姫は三大貴族であり、優秀な《聖女》。身体も強く健康で、頭も良い。両国の架け橋となることも考えれば、一国の王子が婚約を申し込むには十分すぎる理由だと思われるが?」
怒りをあらわにするレオハルト殿下に比べ、ヴィルヘイム王子は赤子と口喧嘩をするかのように淡々とそう言い返す。
貴族たちはどちらを信じるべきか、悩んでいた。
彼らとしては私のことを嫌い、信じず、そしてクレアを憐れむにしても、オーランド帝国の次期国王を怒らせたくはないだろう。
「レオハルト兄さ「うるさい、アルメリア」
アルメリア王女が止めようと声をかけても、すぐに遮られてしまう。
こうなっては、レイ王子やアルメリア王女では止められない。
肝心のグレアム国王も、酒の飲み過ぎで状況をよく分かっていなさそうだ。あの状況では、喋らせてもむしろ逆効果だろう。
「怪しいことには違いないだろう! ずっと婚約をせずにいたヴィルヘイム王子がいきなり、それも婚約破棄された直後の令嬢と結婚など」
そこで、レオハルト殿下は口を止めた。
会場の空気が変わったからだ。
私の少し前に立つヴィルヘイム王子が、罪人でも見るような目でレオハルト殿下を見つめていた。
「俺のことは何と言ってもらっても構わないが、我が妻を愚弄するのはやめていただきたいものだ。彼女はすでにオーランド帝国王族の一員。これ以上根拠もなく侮辱するならば、我々への敵意と受け取ろう」
ヴィルヘイム王子にしては珍しく、本気でそう脅していた。軍隊でも引き連れて来そうな雰囲気だ。
オーランド帝国の人間が、軍事国家なだけあって自国や家族や仲間を大事にするというのは聞いたことがあるが、まさかこれほどだとは。
誰もが凍りつくようなその場で、一人の人物が声を発した。
舞台近くの壁に背中をもたれさせた男は、アストレア王国第二王子オーウェン。
「そこまでだ、レオハルト兄さん。見苦しいぞ」
冷たくそう言えるのは、彼が次期国王の座を狙い、さらに馬が合わないレオハルト殿下と敵対しているからだろう。
この場を収める一言としては、十分だった。
弟にそう言われたレオハルト殿下は何か言おうと頭を働かせた。
だが、オーランド帝国を敵にしてはならないことや、これ以上言えばオーウェン王子の人気が高まることを考えて、結局何も言えないまま会場を後にした。
クレアはぺこりと頭を下げると、レオハルト殿下の後を追いかけた。
──全く、オーウェン王子に借りが出来てしまったではないか。
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