王族たちのパーティ
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アグリア、アラン、セイラの三人が本に夢中になっている頃、ヴィルヘイムは身支度を終え、ラムロスと二人で廊下を渡っていた。
「………」
無言で歩き続けるヴィルヘイムの少し後ろを歩くラムロスは、周りの貴族を警戒していた。
睨みつけるわけではないが、ただ冷やかしに来る人間たちが諦めてしまうようにオーラを放っていた。
ヴィルヘイムも従者の放つオーラに気がついているけれど、特に止めはしなかった。むしろ助かっていた。
今回の昼食の会場である広間が近くなってくるに連れ、貴族の数も増えていく。
──小さめの冠をつけているのが王子の特徴か。
そう察したヴィルヘイムのもとに、一人の青年が声をかけてきた。
「ヴィルヘイム王子」
サファイアの入った金の冠を付けている青年だった。
色素の薄い金髪で、水面のように透明感のある薄い青の瞳の持ち主。
一度だけ、パーティで挨拶を交わしたことがある。
もう何年か前だし、その時は挨拶だけで、一分にも満たない会話時間だったと思う。
その時どんな見た目だったかももう覚えていない。
「この度は、ご結婚おめでとうございます」
ほぼ初対面とも言える二人だ。
ヴィルヘイムがレイを見た印象としては、悪い者ではなかった。
レイは落ち着いていて、好戦的ではないものの戦術では役に立つ存在になるかもしれない。敵を作ることなく、上手に人の輪に入れるタイプだ。
すぐに観察を終えて、ヴィルヘイムは挨拶を返した。
「ありがとうございます。お会いできて光栄です、レイ王子」
何とも当たり障りのない言葉だ。
「今日はレオハルト兄さんとオーウェン兄さんも参加すると聞いています。多くの貴族も参加していますし、いろいろな方と知り合えるかと。もちろん、我が国の伝統料理も振る舞われることですし、ぜひお楽しみください」
「それは楽しみです」
アグリアの妹と結婚しているレイからすれば、アグリアの夫となったヴィルヘイムは兄のような存在となる。
そのせいなのか、あるいは性格なのかは分からないけれど、レイは丁寧に教えるとお辞儀をしてその場を去った。
そうして、三十名ほどの王族や貴族、二十名ほどの従者が広間へ入ると、最後にグレアム国王が部屋へと入った。
「今日は先日の竜騒ぎを乗り越えたことを祝っての乾杯である!」
先日の竜騒ぎでは主に王都が被害を受けたが、すでに半分以上の復興を終えたという。
オーランド帝国の人間が宮殿に来ているからだろうか。
流石に情けないところは見せたくなかったのかもしれない。
あるいは、竜退治の際に国王が役に立たなかった分の汚名返上だろうか。
「今日は今回の結婚式の主役の一人であるヴィルヘイム王子も参加してくださっている! 皆、大いに楽しんでくれ!」
そう言い切って満足したグレアム国王は、ワインの入ったグラスを一気に呷った。
──完全に酔っぱらいだな。
内心そう吐き捨てながら、周りの貴族の視線が自分に集まっていることにヴィルヘイムは気がついた。
「ごきげんよう、ヴィルヘイム王子。第二王女のアルメリアと申します。以後お見知り置きを」
活発そうなその娘が付けているのは、ダイヤモンドのはめられた金の冠だ。
「ヴィルヘイム・オーランドと申します。お会いできて光栄です」
レイにもしたのと同じような返事をした。
「先日の結婚式、とっても素敵でした! メリィ感動したのです! アグリア様もヴィルヘイム王子も、お強くてかっこよくて…! アグリア様は可憐で気高くて! ヴィルヘイム王子は屈強で逞しくて…! とにかくもう! もう! 最高でしたの!」
熱っぽくそう語るアルメリアに、ヴィルヘイムは少し引いた。
一人称はメリィなのか、とどうでもいいことをついラムロスも思ってしまうくらい、アルメリアの勢いはすごいものだった。
「あら、メリィったら話しすぎなのです! ごめんなさい!」
まあ、なんというか、無邪気なだけで悪気があるようには思えなかったのでヴィルヘイムも「お気になさらず」とだけ言った。
「いやぁ、ヴィルヘイム王子も一杯いかがですかな?」
そこに、グレアムが入ってくる。
「…では、ありがたくいただきます」
そうしてヴィルヘイムも一口ワインを飲んだ。
アストレア王国でもオーランド帝国でも問題なく酒を口にできる年齢とはいえまだヴィルヘイムは十九だ。
アストレア王国の料理人か執事辺りが気を使ったのか、ヴィルヘイムが飲んだワインの度数はあまり強くなかった。
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六波羅朱雀をどうぞよろしくお願いします!




