パンドラ05
ぜひ最後まで読んでください!
私は小さな声で、本を読み始めた。
□■□■□
……どういうわけか、あれ以来、我が国にやって来る《異邦人》は皆、パンドラという名なのだ。
おかしい。
もしかしたら、彼らの祖国に噂が広まって、私たちへの脅しか復讐のためにわざとパンドラを名乗っているのかもしれない。
しかし、それならばどこからか我が国の話が漏れていることになる。
それもおかしい。
少なくとも我が国の一般人には《異邦人》の話は広まっていないのに。
とにかく、パンドラなのだ。皆が、パンドラ。
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「そのパンドラってのは、人か?」
そこまで読んだところで、アランが言った。
「パンドラって確か、人類最初の女性、でしたっけ。神々によって作られて、人類の災いとして地上へ送られたっていう言い伝えを聞いたことがあります」
セイラが返す。
アランと違って博識だ。
「あるいは、最高神がパンドラに送った箱のことか? 中身は病気だとか憎悪、犯罪だったってやつだな」
私の顔を見て何を思われているか察したのだろう。
アランがすかさず博識っぽいことを言い始めた。
アランの考えはセイラに見透かされたようで、「そうね〜」と適当に相槌を打たれている。
「どっちかは分からないけれど、叫ぶなら人の名前の可能性が高いわね」
私はそう返して、続きを読み始めた。
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戦争は終わった。
和平で終わった。
けれど、私の脳裏には声が張り付いて離れない。
──パンドラ! パンドラ! パンドラ!
苦しそうな声が離れない。
──パンドラ! パンドラ! パンドラ!
私は完全に精神がおかしくなってしまったようだ。
──パンドラ! パンドラ! パンドラ!
もう、この世の全てが分からなくなってしまった。
──パンドラ! パンドラ! パンドラ!
眠っている間すら声が聞こえて、もう何日も眠れていない。
──パンドラ! パンドラ! パンドラ!
もう、終わってしまいたい。
ただ、この本だけは、託しておく。
──パンドラ! パンドラ! パンドラ!
私はもともと、神を崇めていた。
それは今だって変わらないが。
これを読む貴方の時代がいつかは知らないが、この時代はまだ神々に近い時代だ。
それに私にはほんの少しだけだが王族の血が混じっていることもある。
幼い頃から神々を崇めていたからかは知らないが、知識は広いつもりだ。
私の知る全ての知識を用いて、この本に術と呼べるものをかけよう。
──パンドラ! パンドラ! パンドラ!
そうすれば、この本は強力な《聖女》のみが読める書物となる。
──パンドラ! パンドラ! パンドラ!
もう、疲れてしまった……
さようなら、いつかの《聖女》よ──────
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物語はそこで終わっていた。
少しだけ、錆びれた血が付いている。
「死んだ、のか」
どこか蔑むような、憐れむような声でアランがそう言った。闘う者として、自殺がどれほど辛いか考えてしまうのだろう。
「そんな……! 死んでしまうなんて……」
セイラが悲痛な声を上げる。
──死んでしまうなんて。
戦争で苦しみながら死ぬ者がいた時代に、それを止める術を得たばかりに自殺した者がいるとは。
──生きることが幸福とは限らない、なんて。
──死ぬために生きてきたわけじゃないだろうに。
「パンドラってのは一体なんなんだ?」
「きっと、人を狂わすほどに、恐ろしい何かなんでしょうね」
二人が、そう言った。
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