大忙しの午前中
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朝食を取ってからは大急ぎで行動を開始した。
まず、私は部屋に戻って身なりをある程度確認する。朝食を取っている間に、セイラが綺麗に結ってくれた髪型が崩れていてはいけないからだ。それに、マナーとして薄らと塗っている化粧が崩れていてもいけない。
その間に、別のメイドにアランを呼ぶように命じた。
五分後、ノックとほぼ同時に扉が開く。
「来たぞ」
もともと準備はしていたのだろう。予想よりも早いアランの到着だった。
「入っていいと返事はしていないのですが、アラン?」
「ノックしたんだ、マシだろ」
セイラが問い詰めるも、アランは平然と答える。
「早く行くよ、時間がないんだ」
残念ながら午後は予定が詰まっている。今しか出来ない。
「はい、アグリアお嬢様」
「了解だ、アグリア」
私が先頭を歩き、二人が後ろをついて来る。
部屋の扉の前には二人のメイドを置いて、誰も入れないよう命じておいた。
スタスタと宮殿内を歩いていると、すれ違う王族たちに声をかけられた。
「ご結婚おめでとうございます、アグリア様」
そう話しかけてきたのは妹ミレイアの旦那であるレイ王子だ。
彼は王族だけれど王位を狙うわけでもなくて、第四王子としてひっそりと日々を過ごしている。悪い人ではない。
「ありがとうございます、レイ王子」
「先日のウェディングドレス姿、綺麗でした。ミレイアも泣いて喜んでいましたよ」
「そうですか。私は国を離れることとなりますので、ミレイアをどうかよろしくお願いいたします。何かあればいつでも私に仰ってください」
白い服に身を包んだレイ王子は、まだ十七歳と若いことや肌が白いこともあって聖人のように見える。
彼にならば、ミレイアを託しても良いだろう。
「えぇ、お任せください。ミレイアは必ずや幸せにします」
大人しいくせにこういうことをハッキリと言ってしまうところは嫌いじゃない。
「ふふ、ミレイアはもう幸せ者ですよ、レイ王子」
「だと良いのですが……あ、長話はいけませんね、どこかへ行かれるのでしょう?」
色素の薄い金髪を揺らして、レイ王子が首を傾げる。
「はい、図書館へ行こうと思いまして」
「そうでしたか。では、邪魔してはいけませんね。僕はこれで失礼します。オーランド帝国へは僕も行きますので、結婚式、楽しみにしています」
「ありがとうございます」
レイ王子が去って行くのを見届けて、私は再び歩き出した。
「レイ王子って、いつもあんな感じだよな。なんつーか、ザ・王子って感じ」
よく分からない感想をアランが零す。
「素敵ですよね、レイ王子とミレイア様」
セイラがうっとりとした表情でそういった。
確かに、レイ王子は容姿が整っていて、国民の前へ出れば人気は抜群だろう。
が、兄たちよりも目立つことのないよう配慮しているのか、あまり人前へは出ない。
「ああ、ミレイアの旦那がレイ王子で良かった」
私はそれだけ答えた。
そのまま、図書館へと繋がる渡り廊下へ辿り着く。
「さて、アラン。これから私はおかしなことを言うだろうし、私自身まだ信じられていない部分の話でもある。でも、質問には真面目に答えてね」
「ん? おぉ、任せろ」
本の事とか、色々質問するだろう。
アランはよくわかってなさそうだが、とりあえず自信満々で頷いた。
「それじゃあ、入ろう」
扉の前に立つ二人の兵が私に気がつき、開けてくれる。
何故かアランだけ睨まれていたが、恐らく、アランは仕事柄情報収集を目的としてメイドたちと話すためそれを目撃されているのだろう。
口の上手いアランに恋してしまうメイドは多いと聞く。
まぁ、告白してもアランはそれっぽく振っているようだが。
前一度、なぜ振るのか聞いたことがある。
その時は『仕事に影響が出る』と答えられたのだ。
別に、プライベートは自由にしてくれていいのだが。
そうして図書館の中へ入り、昨日見つけた本を手に取る。
やはり、私の目に映る本の姿は変わらない。
「さて、アラン、セイラ。この本の題名を同時に読んで?」
きょとんという言葉が相応しい顔で二人は見つめ合った後、「せーの」と題名を口にした。
「美味しい料理の作り方」とセイラ。
「正しい剣の使い方」とアラン。
──やはり、おかしい。
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