一人の王が酔いしれる時
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十名ほどの執事とメイドによって丁寧にセッティングされた部屋は、幾つものシャンデリアが吊るされていた。
夜にしてはあまりにも明るくて、上を見たリアムは思わず顔を顰めた。
「どうかされましたかな?」
「いえ、素晴らしいシャンデリアだと思いまして。実に眩しくて、綺麗な造りですね」
それを見たグレアムが声をかければ、模範的な褒め言葉が返される。
「王族専用の職人に作らせたのですよ。いやぁ、値段は高いですけど、長持ちしますし、なによりも綺麗だ。迷わず十五個も作らせたものでして、はっはっは」
上機嫌で高笑いをし始めるグレアムを、氷よりも冷たい感情で見つめる。
国王が「値段は高い」と言うほどだ。一体幾らだったのか。それが十五個と言うではないか。きっと、庶民が百回くらい生まれ変わっても生きられることだろう。
「それにしても、このクリスティア宮殿に飾られた物は全て美しいですね。先程庭を拝見したのですが、ピンクコスモスが実に見事に咲いていて、つい立ち止まって見てしまいましたよ」
「優秀な庭師を雇っているのですよ、はっはっ。この絨毯も、庭の銅像も、全てが完成された職人技によって出来ているのです」
そう言いながらもグレアムは酒を飲んでいる。明日は酔い潰れて寝ていることだろうが、リアムにはそんなことは知ったことではない。
視線をシャンデリアから下ろして床に敷かれた真っ赤な絨毯を眺めた。
オーランド帝国とは生息する動物が違うため何で作られているのかは知らないし興味もないが、とにかくお金がかかっているということは分かる。
これを少し切って売るだけで、質素に過ごすならば市民は一生暮らせるかもしれない。
──無駄の多い屋敷だ。
もしもこの国で飢饉か何かが起ころうものならば、国民はすぐにでもこの宮殿へ乗り込んで来るだろう。
というよりも、ここまでよく大した反乱も起きずにいるものだ。
それこそがやはり、《聖女》の力のおかげだろうか。異能を持たない一般市民が貴族や王族に逆らえない理由の一番だろうから。
「オーランド帝国での結婚式も楽しみですなぁ」
竜のせいで予定は遅れてしまっているが、オーランド帝国での結婚式はきちんと行われる。連絡係が馬を走らせたため、予定の変更はしっかりと国に伝わっているだろう。
そしてその式にはもちろん、アストレア王国の王族も来ることとなっている。
──当日は下手に動かれることのないように、上等な酒でもてなすこととするか。
「我が宮殿はクリスティア宮殿とは随分と違いますが、長い歴史を感じられる良い場所です。それに美味しい物も多い。きっと楽しんでいただけると思いますよ」
「はっはっは、それは楽しみですなぁ〜!」
グレアムが赤ら顔で近くの椅子に座った。それに合わせて執事がリアムにも椅子を出してくれる。
金の装飾が施された椅子だ。リアムが座れば重さと形に合うようにゆっくりと沈む。
なるほど、少し肥満気味のグレアムがいつどの椅子に座ってもいいように、全部を腰に負担のない椅子にしているのか。
そう思うとグレアムのことが一気に、孫に世話になる老人のように見えてきてしまう。
歳は二人とも変わらないだろうに、数多の試練と訓練を重ねているリアムの方が若々しく思われる。
毎日をのんびりと過ごすグレアムは筋肉の衰えが早いのかもしれない。あるいは単純に酒のせいか。
「いやぁ、リアム国王と話すのは楽しいですなぁ!」
「こちらこそ、このような時間を作っていただき光栄です。アストレア王国に訪れる機会など滅多にありませんから、どれも珍しいものばかりで飽きることがありませんね」
「はっはっは、リアム国王は褒め上手ですなぁ〜!」
いよいよグレアムの機嫌が最高潮になり始めていることをリアムは悟った。
「いえ、どれも本当のことですから」
「はっはっは、それじゃあ、こんな話を聞いたことはありますかな?」
そうしてグレアムは、アストレア王国の一部で密かに知られている昔話を始めた。
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