パンドラ03
ぜひ最後まで読んでください!
「何これ……」
神々とは本来、恐ろしくて、好戦的。けれども圧倒的な戦闘力を誇り、そして、誰もがその芸術的とさえ言える戦い方に魅了され、最終的には崇めてしまう。そういうものだ。
豊穣を司る女神も、戦を司る武神も、結局は同じ。
けれど、そうだと分かっていても。
この絵はあまりにも……。
「これじゃあまるで、生贄を捧げる絵だわ」
百歩譲って、生贄を捧げるのは良しとする。
そういうことだってあるだろう。
ただ引っかかるのは……。
「何この服装…見たことないわ」
生贄になるため四肢を鎖で繋がれた人間の服装だ。
意識がないのか、だらりと力なく垂れた腕と前のめりの身体。
そしてそれを包み込む、ボロボロの衣服。
この世界では、貴族はドレスやワンピース、スーツを着る。
対して一般市民ならば質素なワンピースやシャツ、ズボンを着る。
そのどれもが主に布で作られているのだ。
けれど、この絵の人間が来ているのは恐らく布ではない。その他の生地だ。貴族や王族ならば特別に服を用意することは出来なくもないが、この人間は貴族には見えない。
さらに言えば、この本の古さから見て作られたのは百年は前だ。もっと言えば、他のページで使われている言葉使いや単語から見て、《聖女》の生まれた時代に違いない。
そんな時代に、こんな変な服があるわけがない。
一体どういうことだろうか。
紙を捲り、二ページ目。
そこには一人の女性が描かれていた。
美しい人だ。金髪で、碧眼。スラリとした体躯。細い手足。そして何よりも目立つのは女の姿ではなく、その頭に乗せられた王冠だった。
歴史上、女性が王冠を被ったのは一度だけという。
ならば、この女性は。
「王妃エレクトラ」
その名を呟くと同時に、これこそが私の探し物であったと気がついた。
──王妃エレクトラ。
それは、夫が戦争で死んだため国王となった歴史上唯一の女王。
オーランド帝国の侵攻によって疲弊したアストレア王国だったが、王妃エレクトラの祈りによって《聖女》が生まれ、彼女自身が前線へ赴き戦った。そしてついに和平へと至ったのだ。
ならばこの絵は、王妃エレクトラが祈りを捧げ、神が舞い降り、そしてなぜか生贄がいる場面になる。
もしかしたら、我が国に語り継がれている話は改変されたものなのかもしれない。
紙を捲って三ページ目。
今度は右側のページに絵、左側のページに文章が載っている。
王妃エレクトラと思われる人物が本を読んでいる絵だった。
時の流れと汚れているのとで文字は随分と読みにくかったが、ゆっくりと見ていけば平気だ。
□■□■□
誇り高き王妃エレクトラが国王となって一ヶ月。
時の流れとは馬が走るよりも速いものであった。
そして、戦争の流れもまた速い。
一万いた兵はこの数週間で半数へと至った。その理由は明確である。
《魔王》の登場だ。
赤竜殺しと呼ばれるオーランド帝国の王族がいる。
ヤツのせいで多くの同胞が死んでいく。
戦場は赤く燃え、夕焼けよりも強烈な色を残していく。
その姿に王妃エレクトラは嘆き、何とかしてこの状況を動かす策を探し続けた。
そうして遂に見つけたのだ。
その術を。
□■□■□
内容を読んですぐに次のページへと向かう。
□■□■□
この世界には神がいる。
最高神オーディナルを降臨させるのだ。
最高神オーディナルであれば、如何なることも行えると聞く。
ならば、戦争の状況を変えることだって可能だろう。
私は王妃エレクトラの行く道を支えるべく、数多の本を読み、その方法をより明確に調べなければ。
□■□■□
この本は多分、王族専用の吟遊詩人か何かが書いているのだろう。あるいは作家が。
神父たちはあり得ない。
彼らは神々が自ら降臨する時を待っていて、神の時間を邪魔して無理やり降臨させれば天罰が下ると考えているからだ。
続きを、読まなければ。
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