パンドラ02
ぜひ最後まで読んでください!
かれこれ一時間は本を探し続けたけれど、見つからない。
一体何処にあるのだろうか。
ここは我が国で最大の図書館なのだから、きっとあると思うんだけど。
それとも、国の危機を生み出すかもしれない事が書かれている本などとっくに捨ててしまったのだろうか。
──いいえ、それはないはず。
アストレア王国はオーランド帝国と違って、国王が異能を持っているわけではないのだ。
気の弱い国王のことだ。もしも《聖女》が国王に牙を向けたら……なんて考えるだろう。
だから、万が一の際に何か情報を得られるかもしれない本を王族が捨てるとは考えにくい。
となると、もしかしたら王族だけが入れる何処かに隠してあるのだろうか。
そうだとしたら、私が手に入れられる確率は極めて低い。
……どうしたものか。
まだ夕食まで時間はある。もう一時間探してみよう。
運が良ければ、王族が見逃した何かや、《聖女》だけが読み解ける内容の本があるかもしれない。
場所を少し移動して、異能に関する本の場所から神話に関する本の場所へ移った。
それに気がついて、セイラもごく自然に移動する。
下の階を見れば、あまり人はいなかった。
上からも会話や物音は聞こえてこない。
怠慢を繰り返す王族や貴族たちが本を読んで見聞を広めることなどないようだ。
──本当に、レーランド家に産まれてよかった。
心の底からそう思える。
お父様は厳しいけれど聡明な方で、お母様は上品な人。
アレク兄様は氷のようだけれど誰にでも平等で、二人の妹はしっかり者で愛嬌がある。
オーランド帝国へ行ったらもう会うことも少ないだろうけれど、大切な家族だ。
もしも王族に産まれていたら、グレアム陛下やレオハルト殿下のように頭の悪い人間になっていたのだと思うと、こんなこと言ってはならないけれども、ひどくゾッとする。
そう思うと、妹のミレイアが結婚したアストレア王国第四王子レイは、珍しく王位に興味がない人物だった。
王族の中では抜群に頭が良いにも関わらず、毎日動物と戯れる日々を送っているそうだ。
ミレイアが王族の王位争いに巻き込まれる事がなくて助かる。他の王子でなくて良かった。
例えば、第二王子オーウェンなんかは面倒だ。
見た目はそりゃあ格好いいし、少し赤みがかった金髪と鋭い青の眼はまさにライオンのようだ。
剣が得意で将来有望。
けれども呑気な性格のレオハルト殿下とは相性が悪く、常に次期国王の座を狙っていらっしゃるとかなんとか。
仲間意識が強すぎるのが良いとこでもあり悪いとこでもある。何度かお会いしたけれど、あれは仲間にすると心強い代わりに少し鬱陶しく、逆に一度敵に回すとそれはそれで鬱陶しい人だ。
そんなことを考えながら、本棚から本を手に取っては開き、これではない、これでもない、と元に戻すことを繰り返していた。
その時、目の前に他の本よりも古く、随分と読み込まれた茶色の背表紙の本が目に入った。
──これも神話の本かしら。
特に何か感じたわけでもないけれど、何となく手に取る。
ボロボロの表紙には、『パンドラの歴史』の文字。
これが題名で間違いないだろう。
──パンドラって、人類最初の女性と言われている、あれかしら。
──それとも、パンドラの箱のことかしら。確か、あらゆる災いの元だとか。
とにかくパンドラという単語から、我が国の創世神話に関することなのだろうなぁと思いページを開いた。
そして、雨に濡れたのか水をこぼしたのか分からないけれど、うっすらと濡れたような跡が伺える、本の最初の一ページに描かれた絵に目を奪われた。
それは、白いドレスを身に纏った一人の女性と、その前に置かれた、鎖で繋がれし人間。
そして、今にも天空から舞い降りようとする神々しい姿の神の絵だったのだ。
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六波羅朱雀をどうぞよろしくお願いします!
最近頑張って小説書いてるぜぃ…!




