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第23話 再転生した厨二病男子は逃げられない〜終結編〜

この世に漂いし全ての負の感情よ…恐怖よ…憎悪よ…絶望よ…

我が身に集いて、さらなる混沌をこの世に顕現せよ!



シュウウウウウウウウウウゥゥゥゥゥゥ



どうやら、勇者はまだ動けそうだがもはや虫の息。そんなことはもはやどうでも良い。

あの時の結末を、今ここで終わらせようではないか!


集え…集え集え集え集え集え集え集え集え!!!!!





「マ…リア…」

「リンネ様!お気を確かに!!」



おかしいです。再生魔法は正常に起動しているはずなのに、なぜリンネ様の傷が回復しないのですか!?

いえ…正確には、時折微量ながら回復しているようですけど。ひょっとして、このリンネ様の周囲を弱々しく漂う光のせいでは?


「マリ…ア…逃げ…て…」

「何を言ってるんですか!私は逃げません!今度こそ…今度こそ私が…アナタを!!」


そう…あの戦いの後、何度も自分を責めました。あの時、もう少し早くリンネ様に魔力をお渡しできれば…

私は勇者様を…リンネ様をお守りし支える為に遣わされた聖女。

私がこの場所にいる。あの時と同じように。その意味を今度こそ!!


「はぁぁぁああああ」


だめ…マナの力を増幅させてもこの光の壁を越えられない!所々、光の弱いところから少しずつなら送り込めるようですが…

やはりこの光の膜を剥がさないと、次の魔王の一撃までに間に合いません!


…確か、皇さんが話してくれました。この精神エネルギーを維持するには多大な集中力が必要だと。


顔が、いえ、全身が熱く高揚するのが分かります。神よ…どうか私の不貞なる行為をお許しください。


「リンネ様…し、失礼します…」




そう言った彼女はそっと僕の唇に、彼女の唇を重ねた…

唇の柔らかい感触…微かな吐息…暖かいぬくも…


!!!!?!??!?!????!



全身が一気に熱くなるのを感じる!ちょっと待って!え!!?え??!えーーーーーーーーーー〜〜!

思わず反動でイマジネーターを握るその手が緩み、僕を包む精神エネルギーが消える…

その瞬間、マリアが送り込もうとしてくれていたマナが全身に一気に流れ込む!


「うおおおぉぉ!!?」


さっきの一撃で蓄積したダメージが一瞬で回復した。


「リンネ様…良かった…」


今にも泣き出しそうな顔のマリアを見て、再び我に返った。

目の前に徐々に集う瘴気の塊はすでに50cm程の大きさに凝縮されていて、その黒塊はどんどんその大きさを肥大化させていく。

そう、まるであの時の暗黒球のように…


考えろ!今僕に…いや、僕等にできることを!


マリアが来てくれたお陰で、こちらもマナの力を得れた。だが、回復以外に今のマリアに何ができるのか。


「マリア、マナで回復以外のことってできる?」

「すみません、肉体強化的な法術は解析できてなくて、今できることといえばマナを収集させて障壁を作ることくらいですが…」


ですが…か。どうやら、耐久的にあの凝縮された一撃を受け止め切れる程の強度までは達しないのだろう。


「くっ、どうする…」


さっきまで、やつのマナと僕の精神エネルギーは拮抗していた。それは双方ともにエネルギーを凝縮させずに

垂れ流したままの状態でぶつかり合っていたから。

ヤツはそのエネルギーを一点に集中させようとしている。だとしたら僕がやるべきことは一つ。

こちらも膨大な精神エネルギーを一点に凝縮させることができれば…


「ねぇ、マリア。何か膨大なエネルギーを(とど)めることができる魔法とかって…ないよね?」

「といいますと、どういうことでしょう?」

「どうやらヤツとの戦いだと、いつもよりも精神エネルギーを増幅させることはできるっぽいんだ。

ただ、どうもそのエネルギーをまだうまくコントロールできないんだよね」

「そうなのですね…エネルギーを留める…リンネ様ひょっとすると可能かもしれません」

「ほんと!?」

「ええ。先ほど、リンネ様の精神エネルギーは私のマナを一切通すことがありませんでした。すなわち、私のマナでリンネ様を覆えば」

「精神エネルギーを凝縮させることができるってことか」

「ただ、リンネ様の精神エネルギーと同等のマナを集めることが必要で、それが可能かどうか…いえ!やってみせます!」



そう言い切った彼女の眼差しから強い意志を感じた。何度も視線をくぐり幾度となく見てきた彼女の揺るぎない決心の現れ。


「そうか、じゃあ…頼んだよ!」


そう言い切ると僕は目をつぶり、再びラグナレクを顕現させる。と同時に全神経を魔王を討伐することに集中させる。

全身からどんどん精神エネルギーが湧き出ていくのがわかる。


「では、いきます!」


そう彼女が言い放った瞬間、全身に大きな負荷を感じた。

クッ!息苦しい!それに内と外からのエネルギーに圧迫されてどうにかなりそうだ!


「リンネ様!大丈夫ですか!?キャッ!?」


彼女が小さな悲鳴を上げた途端、再び僕の体にかかる負荷が消えた。


「マリアこそ大丈夫!?」


おそらく、好き勝手エネルギーを垂れ流す僕と違って、かなり繊細なマナのコントロールが必要なのだろう。


「大丈夫です。次こそ成功させて…みせます!」


マリアが小刻みに震えているのが視界に入った。おそらく彼女の余力もそんなにないのだろう。


「分かった…頼んだよ!」


はぁぁぁぁああっ


彼女の掛け声と共に再び全身に負荷がかかる。

耐えろ!

そして集中しろ!





ハッハッ…ハッハッ…


「くそっ、嘘だろ?」


結局、神崎さんに追いつくどころか姿が全く見えなくなっていた。

僕、自身足にき始めている。だがそれだけじゃない。彼女の身に何かが起きていた。そうじゃないと色々説明がつかない。

それに、どうやら何かが起きているのは彼女だけじゃない気がする。あまり心霊的な何かを信じるタイプじゃないけど、なんだろう。この胸騒ぎは…


あの角を曲がれば、ロルアーナ城。


ドーン!!ドーン!!


なんだ!?この異様な衝撃音は!


くっ!


音に気を取られたその瞬間、足がもつれた僕の体は、そのまま城へと続く大通りへと放り出される形になった。



「…な…なんだよ…これ…」


思考が完全に停止する。はるか140m先の出来事で詳細は全然はっきり認識できない。だが、明らかに異様な光景…


巨大なドス黒い光と、見覚えのある白い光…正確には白い光を覆う薄緑の光。

全身が硬直する。唖然とする…この表現が正しいのか分からない。


とにかく、生まれて初めて…いや、2度目の目を疑うこの光景に、ただただその場に立ち尽くしていた…


「ハァ…ハァ…皇くん!…」


遠くから天崎さんの声が聞こえてすぐさま我に帰る。

園外へ避難したはずの彼女達がなぜここに!?


「…ハァ…皇くん…ハァ…里尾くん、いた?」

「天崎さん!楠さん!なんで来てしまったんだ!?」

「ごめん!スメラギっち、姫が聞かなくって…」


心底申し訳なさそうに困惑する表情を浮かべる楠さんと、見たこともないくらい真剣な表情の天崎さん。

確固たる決意を宿した彼女の瞳を見て大体の経緯は察した。


「里尾くん…いた??」

「こっちにいる人達は、どうやら無事避難しているみたいだ!他を探そう!」


彼女達を、まず、安全なところに誘導しないと。実際、先ほど入った視界には人影を認識することはできなかった。…いや、うっすらと光の中に感じた人影を、僕の脳は見なかったことにしようとした。


その足取りを緩めて、膝に手をつく2人に僕も駆け寄る。


「………今…聞こえた!!」


そういうや否や僕の脇を駆け抜けていく天崎さん。


「ちょっ!姫!!!」

「聞こえたの!千鶴子ちゃん!!里尾くんの声が!!!」


そう言って、彼女はあの光に続く大通りへと飛び出した。








「くっくっくっ。無駄な足掻きよ」


「無駄かどうかは…やってみなきゃ…分かんないだろ!」


「何度も何度も…何度も何度も何度も何度も何度も何度も!!!目障りな小蝿が!!!!」


「目障りはどっちだ!なんで…こんなことができるんだ!」


「愚問だ。ただの暇つぶしに決まっておろうが」


「ここには…この世界には…お前なんかに潰されていい暇なんて…1つも…ない!!」



眼前に構えられたどす黒いマナの塊が、ヤツの姿を覆い隠すほどの大きさになっている。


柄を握る手に力を込める…集中しろ集中しろ集中しろぉ!!!!



「うおおおおおおおおお!!!!!!」



僕を包む精神エネルギーが、光の柱となり天空まで突き抜ける。


刹那、マリアが施したマナの膜がその光の柱をコーティングし、

再び僕に…僕の手元のラグナレクにその全てのエネルギーを凝縮させた。


今、僕の手の中で、エメラルドグリーンに輝く聖剣…


「マリア…ありがとう!」



後方から少し強めの吐息が聞こえた気がした。彼女が笑みを(こぼ)すときに聞こえるあの。


もう一度ラグナロクに目を向けて、意識を深く装飾に彩られた刃に落とし込む…


…深く…深く…イメージを…エネルギーと溶けこまして…一つに…



「フッ、貴様との長きに渡る因縁の締めくくりが、このような形になろうとは…クックックッ…

フハハハハハハハハハッ!!!…もうよい…散れ」



魔王がそう言い放った瞬間、禍々しし光を浴びた瘴気のマナが一瞬にして30cmほの漆黒球に凝縮される。

ヤツが手を振った瞬間、その混沌の塊は僕へ目掛けて襲いかかる。



両足を前後に大きく開き、左の掌を真っ直ぐに暗黒球の方へ向け、矢を射る様にラグナレクを構える。


「リンネ様…その技は!」


そう、この技は剣聖から教わった奥義の一つ、天を舞う神龍を射抜いたという剣撃。

足、腕、全身至る所に力一杯(ひね)りを加える。



「いいか、リンネ。必殺の奥義ってのはなぁ、技名を叫ぶと気合が入って威力が増すんだ」

「え?イヤだよ、そんな恥ずかしいの」

「かっかっかっ!おめぇもまだまだ色気付いてやがるなぁ!かっかっかっ!」



今なら剣聖が言っていたことが少しわかる気がする。


「はぁぁぁぁああああああっ!」


数々の伝説的厨二病発言を持つ今の僕に恥ずかしさなんて微塵もない!


全神経を刃に集中しつつ、全力で回転を加えながら勢いよく暗黒球、そしてその先にいる魔王への軌跡に沿ってラグナレクを投げる


「天に羽ばたく邪悪を穿て!覇龍天翔斬!!!!」


技名を叫んだ瞬間、さらにラグナレクの光が増す。どうやら精神エネルギーがさらに強くなったようだ。



シュィィイィィーッ!!!



高速回転が加わった光の刃は凄まじい風切り音を上げて暗黒球に衝突する!



バチバチバチバチ!



二つの力が拮抗し、激しい衝撃波が周囲に走る!


「グォオオオオオオオオオッ!」

「いっけぇぇえぇぇぇぇええええ!!!」



僕と魔王、2人の最後の力が注がれる。

黒く禍々しいマナが徐々に膨張をし始める…


ラグナレクの回転が周囲の大気を巻き込み、光と風の竜巻が生じる。


そして、その光の刃が暗黒球を貫き、その刃が今にも魔王に届く、その時



「きゃああっ!」


マリアの叫び声が聞こえ急いで後ろを振り返る。



「マリアッ!」



ズドーーーーーーン!!!


背後からとてつもない爆発音と共に激しい衝撃波が僕らに襲い掛かる!


「きゃああああ!」

「うわぁああああああ!」


咄嗟に僕は、マリアを覆うようにして、今にも吹き飛ばされそうになりながら衝撃波を必死に堪えた…


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