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第22話 再転生した厨二病男子は逃げられない〜再臨編

グオオオオオオオオオオッ!!!!


もはや人のそれではない呻き声を上げ、一直線で僕に目掛けて拳を振りかざすヤツの一撃。まさに空を切り裂くそのスピードから繰り出される拳を辛うじて交わす。


ドガンッ!


その一撃は、後方に立ち並んだ街頭の一つを容易くへし折った。


その禍々しい後ろ姿は、姿形は違えど、その風格、漂わせる漆黒にして邪悪なるオーラ。間違えるはずがない!

前世の僕にとっての存在意義でもあり、前世に唯一置き去りにしてしまった心残り…

全世界の害悪にして、全ての諸悪の権化、あの魔王が今、僕の目の前に…いる!


「…童、いや、憎き勇者よ!貴様と我がなぜこの世界に存在しているのか…ククッ…そんなくだらない事はどうでもよい」


魔王は錯乱する自我に言い聞かせるよう、僕に向かって言い放つ。


「この崇高なる余に初めて屈辱を、そして今、このような脆弱な体に寄生するような醜態を晒させたこと、万死に値する!楽に死ねると…思うなよ!!!」



刹那、禍々しい殺気を込めた凄まじい連撃を僕に向かって繰り出した。一撃一撃から感じる殺意に当てられるように、僕の全身にも更なる力が(みなぎ)り、その嵐のような攻撃を全て紙一重で交わす。


くそっ、何度も何度も討伐を望んだ魔王が今、目の前にいる。なのに僕にはヤツに斬りかかる(やいば)がない。悔しさでグッと歯を食いしばる口元から血が流れる。


「勇者よ!貴様、この後に及んで、余を舐めておるのか!?どこまで愚弄するつもりだ!!?」


うるさい!!僕だって…今この手にあるラグナレクが本物であれば…せめて物理的に触れることができれば…

今すぐお前のその首を打ち取りたいんだ!!!


思わず、ヤツを睨みつけた瞬間、路肩の段差に足を引っ掛けた僕は少し体勢を崩した。

その隙を魔王が見逃すはずがなかった。


「朽ち果てろ!!!」



ドゴーーーンッ!!!!!!



ヤツの怒号と同時に凄まじい衝撃と爆音が僕を襲い、はるか後方に突き飛ばされる。



「!!?」



今の一撃が僕の体を貫いていたら、恐らくそんな衝撃音は鳴り響かない…

両手に痺れを感じていることに気付き、ふと冷静さを取り戻す。


今…ラグナレクでヤツの一撃を…防いだのか!?


「ハァッ…ハァッ…スーッ」


大きく深呼吸をし、さらに集中力を研ぎ澄ませる。

どういう理由かは分からないし、たまたまだったのかも知れない。だが、この絶体絶命の窮地に見えた一筋の可能性…


僕はラグナレクを構える…

禍々しいオーラが徐々に強くなってきた影響か、その身を少し宙に浮かせ、鋭い殺意を僕に向ける魔王。

両腕、いや全身に神経を集中させ強く愛剣を握りしめる僕。まさに、僕らの最終局面の焼き直しのような場面だった。


「あの時の決着…今ここでつけてやる!いくぞ!魔王!!!」

「それは余のセリフだ!!!」


ヤツの拳とラグナレクが交わった瞬間、凄まじい衝撃波があたりの建造物を吹き飛ばした。






ハァッハァ…



「リンネ様…リンネ様!」


さっきまでヘトヘトだった体が嘘のように体力が戻ってきているみたい。最初は無我夢中で気付かなかったけど、

どうやらあの禍々しいマナに近づいた影響で、私のマナを操る力も強くなってきているようです。

それに、この園内や周囲にも多くの自然のマナが感知できます。

これなら、先日より使役できるマナの効果の自由度が格段に上がりそうです。


あの時は、脆弱にしか感じられませんでしたので、全く気付けませんでしたが、この闇のマナ、あの憎き魔王軍の醸し出す魔力に似ている気がします。


先ほどから止まらない胸騒ぎが私をそのマナの中心へと誘っていく…


「リンネ様…どうか…ご無事で!」







「うおおおおおおっ」



息つく間もないスピードでラグナレクを振りかざす。だが、魔王も拳や脚で巧みに弾く。



「やはり、脆弱な体だとこんなものか!!」


僕の大振りを紙一重でかわし、すかさずみぞおちに一撃をかます。


「ぐはっ…」


凄まじい勢いで体が吹き飛ばされる。だが…


「ハァッ…ハァ…」


致命傷には至らない。ヤツと戦っているこの感覚、楠さんとイマジネーターで戦った時のそれに近い。おそらく、魔王の纏うあのオーラがイマジネーターを包む精神エネルギーと同じか、それに類似した性質なんだろう。


「おまえこそ…あの時の威力には遠く及んでないようだけどね」


「ほざけ。今の貴様など、この傀儡かいらいでも遊びにしかならんわ!」


両者再び一気に距離をつめる。心なしか、徐々に体に力が漲ってくるのは、ヤツのマナに当てられたからか?

…いや、おそらくヤツとの戦いで自然と僕の意志の力…精神エネルギーが増幅しているからだろう。

つまり、僕がより強い意志で魔王との激闘に臨めば臨むほどより強い攻撃ができるはず!!!


「うおおおおおおっ!」


「グヌッ」



憎い憎い憎い…憎い!憎い!!憎い憎い憎い憎い!!!!!!

ヤツへの怒り、憎しみが増すごとに周囲から負のオーラが余に集まってくるのを感じる。

クックックッ…暇つぶしに虫けらどもを蹂躙したことがこんなところで役に立つとは。


「だが…まだ足りん!!!」


かつてこれほどまでの憎悪を抱いたことがあるだろうか…

これほどまでに恥辱に胸を焦されることがあっただろうか!!

否!!!

ヤツのことを考えただけで、このような考えにいたらしめる我が脳を、何度、頭部から抉り出したくなったことか!!!


ヤツだけは…ヤツだけは!この手で無残に何度も何度も地獄のような苦痛を与えなければ気が済まぬ!!!




キン!キーン!バッ!ドガッ!


「くっ」


ザッ!ガン!ダッダダダダッ!!


「ハァーッ!!!」


ガギャーン!!!


徐々に膨れ上がる魔王のオーラと呼応するように、どんどん高まっていく僕の精神エネルギー。

研ぎ澄まされていく集中力の中、徐々にヤツと刻むこの攻防のリズムに、体の痛みや疲労感に、心地よさすら感じている。


「まだまだいくぞー!!!」

「捻り潰してくれるわ!!!」


ガン!!ザザザッ!!バン!ドガッ!!!


双方、徐々にエネルギーが増していくが決め手に欠ける。お互いに突然手にした強大な力の制御方法が身についておらず、垂れ流される力をぶつけ合っている状態が何分も続いている。このまま、我慢比べみたいなことになってしまうのか…いや、何か勝機を見出さないと…!




「リンネ様!」


突然、僕の耳に飛び込んできたマリアの声!?


「えっ!?」

「バカめっ!!!」


咄嗟に声のする方へ振り向いた僕の隙を魔王は見逃さなかった。

強烈な回し蹴りが、僕の頭部を襲い、僕の体は激しく回転しながら何度も何度も地面に叩きつけられて、マリアの近くまで吹き飛んだ。


「リンネ様!!大丈夫ですか!!」


すぐさま駆け寄り、回復魔法をかけてくれた。



「おい、勇者よ。どうやらそろそろ、我らの因縁に終止符を打つ時間のようだな」


そういうと、おもむろにその両手を僕らの方へ突き出し、両拳にマナを集め始めた…


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