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ポットホール (3/4)
どのくらいの時が過ぎ、一体いくつの小石を放る行為を見つめ続けていた頃だったか――。
小石を放った後、歩きだすことなくあたりを確認するかのように、ゆっくりと視線を動かしていた。
慌てて、民家の駐車場に身を隠し、一層注意深く身を乗り出した。
件の人物は、周りに誰もいないことを確認すると、下を向き上半身を深くお辞儀をするように折り曲げた。
そして、さらにしゃがみ込みながら右手の指先を水面に刺し込み……気がついたら、姿は見えなくなっていた。
いつの間に?
小走りで水溜りに近づくと、同じようにあたりを見まわし、水溜りを上から覗き込んだ。
しかし、鏡のような水面には青空を背景にした己の顔が映り込んでいるだけであった。
さらに、指を突っ込めばいささか深かったが、ざらざらしたアスファルトに触れることができた。
水溜りの冷たさに我に返ると、アポイントの時間が迫っていたため、急いで立ち去った。
一陣の風が水面に波紋を生じさせたとき、消えた人物の姿が一瞬見えたことに、気がつくこともなく……。