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ポットホール (2/4)
さて――。
ある昔の話だ。
前夜に激しい雷雨があり、翌日に響くのはいやだなあと思いながら眠りにつき、見事な快晴の幕開けとなった、雨上りの日のことである。
次の打ち合わせ先へ向かうため最寄り駅で降りた後、時間調整をしながら幾分ゆっくりと歩いていたら、前方に不審な人物を見つけた。
場所は住宅街にある幅広で見通しのいい直線道路だったが、交通量が少ないせいなのか路面はあちこちに工事の痕を残しているだけでなく、大小様々な水溜りが生まれていた。
大きさも深さもまちまちで、直進するのをためらうものもあった。
件の人物は、十メートルほど前をゆっくりと蛇行しながら、歩いては立ち止まることを繰り返していた。
よく見ると、立ち止まっているときに、なにか――小石のようだった――を水溜りに放っていた。
いつもならば、いい年の大人が子供じみた仕草をしていても、まったく気にも留めずに素通りしていただろうに……。
だが、そのときはなぜだかわからないが、気になって気になってしょうがなかった。
そう――見つからないように、こっそりと後をつけるくらいに……。