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79 リサ視点、最後にちょっぴりアリアです。

***リサ視点***


「あれマイク、どうしてここに?」


外で用事を済ませてから店に戻ってきたら、なぜか店にマイクがいる。マイクは正面入口の横にある外倉庫の掃除をしているところだった。床が濡れているので、丁寧に水まで撒いたのだと分かる。


「あ、リサ。ええと? どうして、とは?」


どうしてとは? 出ていった人が当然のようにいるのか不思議で、首を傾げながら答えた。


「出ていったのだと思ってたから。」


「え、ええ? 俺がですか? どうしてです?」


「それは、、、わからないけど、、。でもサイラスが、、」


「サイラスが?」


「に、逃げた、って、、」


さすがに失礼だったかな、と思いつつマイクをみると、決まり悪そうに頭を掻きむしっている。


「あ、、ああ。、、ええと、情けない話ですけど少し気分転換に行かせてもらってたんです。逃げた訳ではないですけど、似たようなものですよね、、、すみません。」


「あ、あら、えっと、、ほら、戻って来たのならいいのよ。また会えて嬉しいわ。ところで、どうかしたの? 水まで撒いて、、」


「ありがとうございます。ええと、汚れていたのでついでに水を流しました。今終わったところです。」


「汚れ、、? 何の汚れかしら?」


倉庫にはつい先日まで、新規の取引国に送られる荷物を一時保管していた。


「あ、いや、そんなに大した汚れではなかったのですけど、細かい粉がたくさん落ちていたもので。それより、旦那様から聞きました。その、、結婚するって。おめでとうございます。」


突然マイクに言われて狼狽えてしまった。他人に言われると変な感じがする。くすぐったくて頬がむずむずした。


「ふふ、ありがとう。でも、、」


そしてまた、ふいにやってくる罪悪感。


「でも? なんです?」


「でも、、、どう思う? マイクは、どう思う?」


全てを知っているマイクだから、聞きたくなった。わざと微笑んで見せたけど、内心泣きそうで声が震えた。


「どうとは?」


「だって、、急、過ぎるでしょう? ついこの前まで、、私はマルクスさんを、、、」


堪えきれなかった涙が、ふいにこぼれ落ちた。


「わ、わ、わ、、リサっ、」


マイクが慌て出したけれど、流れる涙を止める事は出来なくて、、


「ご、ごめんね、、なんだか私、自分が信じられなくて、、こ、こんな気持ちでいいのかな、って、、」


「リ、リサは、結婚が嫌ですか?」


マイクは動揺しながら、そっと私の肩に触れて、店の裏へと誘導してくれた。私はそこまで気が回っていなかったのではっとした。ここは人目につきやすかったのだ。

そして 横並びで裏口の階段に腰掛けると、手拭いを差し出してきた。正直その手拭いはあまり綺麗に見えなかったけれど、私は素直に受け取って、顔を押さえながら胸の内を吐き出した。


「違うの、、う、嬉しいのだと思う、だって、時々、、時々ね、何もしてないのに笑ってしまう事があるの。想像して、、。 でもそれって、ほんと信じられないわよね? マルクスさんは死んでしまったのに笑っているなんて。」


マイクは黙って聞いてくれていた。そして、少し間を空けてから、ゆっくり口を開いた。


「、、、ずっと言うべきかどうか悩んでいたんですけど、、言いますね。ええと、マルクスさんは、リサが幸せになることをずっと望んでいました。今だって、きっと望んでいます。」


「、、、どうして分かるのよ?」


ぐすぐすと手拭いで鼻をかみながら横に座っているマイクを見ると、彼は自分の手元を見つめていた。


「前にマルクスさんに聞いたんです。 その、、マルクスさんは、リサをいつも気遣っていたから、、つい、、 そしたら、リサはマルクスさんの想い人の忘れ形見だって、、、」


「え、、、? マ、マイクはいつそれを聞いたの? え? それって、つまりっ、マルクスさんは私のママの事を!?」


驚き過ぎて一瞬 涙が引っ込んだ。


「え、あぁ、、 結構、前です、すみません。」


「なによそれ、私、最初から振られてたんじゃないっ。早く言ってちょうだいよっっ! 1人で馬鹿みたい。」


「、、、すみません、なかなか言えなくて、、。えっと、だから、マルクスさんはずっとリサを見守っているんです。リサが笑っていないと、マルクスさんは悲しみます。リサが嬉しいのなら、もっと喜んでいいんです。」


「、、、うぅー、、」


引っ込んでいた涙が、また溢れた。黙っていられたことに腹が立つ筈なのに、心のもやもやが溶けていく気がする。マイクの温かい、大きな手が戸惑いがちに私の頭を撫でた。

と、その時サイラスの声がして、私は弾かれた様に顔をあげた。


「リサっ! やっと見つけたっ! 今連絡が来てさ、、、って、マイクっ! お前リサに何してっ、、」


「わぁっ、、! サイラス違うのっっ!!」


「違うって、リサ、泣いてるんじゃないのか!?」


「これは違うのっ! 本当に違うのっ。後でっ、後でちゃんと話すから、今は、急ぐのでしょうっ?」


私は今にもマイクに殴りかかって行きそうなサイラスを必死で押さえながらその場を離れた。マイクはさぞ驚いた事だと思う。



***アリア視点***


「アリア様ー、陛下がお呼びになっています。」


仕事が一区切りついて暇になり、のんびりソファーでお茶を飲みながら寛いでいた私に、ミアが声を掛けた。


「分かったわ、ありがとう。」


座ったまま伸びをして、すっくと立ち上がった。また、忙しくなりそう。

頃合い的に、村から残りの完成品が届いたのだと分かった。そしてきっとマイクも、ここに来ているはず。

なぜなら彼には、オリバー商会から王宮にお使いがある時にはあなたが来なさい、と伝えてあるから。もしもお父様に ちゃんと手紙が届いているなら返事が来る筈だ。

ミアにはマイクが帰ってしまう前に接触するように指示を出し、私は別の者を引き連れて執務室へと向かった。



ありがとうございます。

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