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68前半アリア視点後半マイクです

***アリア視点***


「王妃殿下、読んで頂けますか?」


エレノアがそわそわと落ち着かない様子で私を見つめる。私は、思いもよらない展開に戸惑っていた。今ここでこの手紙を受け取ってしまっていいのものなのか、、、手が震える。


「王妃殿下、ディラン殿下はどうしても伝えなければいけないと、危険を承知で私に託しました。王妃殿下にも関わる事ですから、どうか読んで下さい。」


見てはいけない気がする。だけどお兄様の事も心配で、散々悩んだ挙げ句、ついに封を切ってしまった。冷や汗が流れる。そして目を通しながら、やっぱり開けなければ良かったと後悔した。どうしてお兄様は私を困らせる事を、、、。

手紙を閉じて封筒に戻した私はエレノアを正面に見据えた。エレノアが不安そうなのは自分の今後にも大きく影響するからだと思う。。


「エレノア、ごめんなさい。この手紙はなかった事にして頂戴。私も貴方も手紙なんて見てはいない。いい?」


エレノアの目が大きく開いた。


「どうしてです? 王妃殿下は今の状況に満足していますか? 私はっ、私はとても満足なんか出来ません。このままここで死んでいくくらいなら、、」

「駄目よっっ!!」


エレノアが言い切る前に声を張り上げた。


「それ以上は駄目よ。反逆罪で死にたくなければ大人しくしておいて。 、、、これは命令よ。 ミア、行きましょう、長居はしたくないわ。」


「は、はいっ。」


急いでミア連れてドアに向かった。ドアの取手掴もうとして、持ったままの手紙にはっとした。力が入りすぎたせいで しわくちゃになっていた。


「手紙は、私が処分するわね。」


エレノアの顔は見なかった。エレノアの切迫した態度を見るに、彼女の母国はもうお兄様の側に付いているのだと思う。彼女の立ち位置を思えば可哀想だけれど仕方がない。関わらないのが最善なのだから。決して巻き込まれたくはない、だから何も知らなかった事に、、、そう結論を出したはずなのに手の汗はいつまでも引かず、握りしめた手紙は湿って柔らかくなっていた。



「アリア様。」


後ろを歩くミアが距離を詰めて、すぐ近くで呼び掛けてきた。一人で抱え込まないで、と言いたげだ。


「分かってる。分かってるから。」


部屋に戻りながら必死で情報を整理した。


お兄様の手紙には、迫害されるジェミューの救出を名目に連合国を形成し、アリドゥラムに攻め入る計画を立てていることが書かれてあった。最終的に陛下を拘束なさるおつもりのようで、その際の王宮への手引きを私にお求めになっている。さらには救出するレイラが陛下に懐いてしまわないように、もしくは懐いていても引き離しておいて欲しいと、書かれてあった。


馬鹿なお兄様、、、。現時点でアリドゥラムは内密に、ジェミューを守ろうと動いている。連合国の意義は全く何も無いのだ。正当性を欠いた攻撃はただの横暴で、気付いた国は署名を取り消すだろう。というよりは名目が無くなるのだから無効になると思う。そしてアリドゥラムを相手にお兄様が勝てるとは到底思えないし、正当防衛なのを良いことに国だって潰されかねないのだ。


、、、お兄様はリュヌレアムの主要な軍事基地にアリアドゥラムの兵がどれ程配備されているか、ご存じなのだろうか? きちんと逃げ道を用意してあるのだろうか? お父様が用心深くて用意周到なお方だと知っているのだろうか?

いざとなったら子供だって切り捨てる人間だと知っているのだろうか? 

そこで はた、と気が付いた。いくら病に伏せっているといっても、こうもお兄様が自由に国を動かせるとは考えにくい、、、。

何もかもが疑わしく思えてきた。せめてお父様が病に伏せっている原因がお兄様でなければいいのだけど。 


いけない、慌てて頭を振って考えを散らした。深入りしてはいけない。関わりたくなければ自業自得だと放って置くべきなのだ。覗き込めば必ず引きずり込まれてしまう。

それなのに、鬱陶しいことに手紙の最後には、私を自由にしてあげたい と書いてあった。本当に馬鹿なお兄様、、、。胸が苦しくて辛い。



***マイク視点***


気付かれる前にこの国を出なければ。顔も名前も知られているから気付かれてしまったら簡単に捕まりそうだ。せめて偽名を使えば良かった。心臓をばくばく鳴らせながら、関所に向かった。4度目になる関所には、見慣れた男が立っていた。自然に、自然に、と自分に言い聞かせる。


「またお前か、、て、あれ? 今度は1人か?」


「あ、ああ、そうなんです。別の場所で待ち合わせてあって。」


「はぁん、何だか分からんが忙しそうだな。ま、頑張れよ。」


「ありがとうございます。」


唾を飲んだら音が鳴った。男の顔は見れなくて、前だけを見て通り抜けた。緊張し過ぎて右手と右足が同時に出ている気がする。


「おい、」


少し離れたところで声を掛けられ、びくっ、とした。いつでも走れるよう、ふくらはぎの筋肉を意識しながらゆっくりと振り返る。


「何でしょう?」


「これ、落ちたぞ。」


落とすような物を持っていたっけ? 男は手に何かを握っているが何かは見えない。まさか罠か? 戻ったら捕まるのか? びくつきながら2歩戻った時、後ろのほうに2人組の男が見えた。


「そ、それ、もう要らないので処分して下さいっ」


言うが早いか、勢い良く砂を蹴った。振り返らない。前だけを見た。力の限り走って走って、走りまくった。そしてもう走っているとはいえないくらいの足取りになった頃、前方に岩影を見つけて滑り込んだ。そっと来た方向を覗いて見たけど追ってくる様子はない。思い過ごしだったようだ。だけどそれでも不安は拭いきれず、次の岩影を目指して走った。

その後は影に入れば後ろを確認し、次の岩影へ、、というのを体力の続く限りくり返した。そしてとうとう走れなくなった俺は、岩影に倒れこんだ。もう動けそうにない。。ぜぇはぁと息をして呼吸を整えようと頑張るが、どうやら息を吸いすぎたらしい。

次第に手足がピリピリと痺れてきた。やばい、と思っている間にも先の方から冷えていくのが分かる。指は固まって動かない。意思に反して呼吸は速くなるばかりで意識も薄らいでいく、、、。 やばい、、   ふごっ


急に口と鼻を布で塞がれて、殺される、と直感した。焦って可能な限り首を振り抵抗を試みた。ほとんど振れてないのだけど、こんな状態でも生への執着は物凄いな、自分に感心した。


「ゆっくり息をして下さい。」


ん? それは女の人の声だった。助けてくれているのか?

ありがとうございます。

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