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少しR15です。

ドアを開けたのはウィレムで、入って来た途端、部屋の空気がピリピリと張り詰めた。私達の足元には小瓶の蓋と薬の粒が散らばっていて、取り乱したジュリが私を壁際に追いやっていた。

ウィレムが来て助かった、と思うよりこんな状況を見られた事に冷や汗がでる。ジュリはウィレムを見て、目を見開いてガタガタと震えだした。

ジュリが私に薬を差し出したのは独断だったのだと、この時初めて分かった。


「ジュリ、何をしている?」


「あ、あの、、お嬢様にお薬を、、」


「何の薬だ?」


ウィレムはつかつかと無表情で近寄って来た。静かな部屋の中で、心臓の音がどくどくと響いている。私は乱れた服を素早く整えた。


「あの、あの、、陛下がお困りにならないように、と思って、」


ジュリは声まで震えていた。


「何の薬だと聞いている。出しなさい。」


ウィレムの低い声は静かで冷たくて、背中がひやりとした。ジュリはウィレムが突き出した手のひらに、震える手を押さえながらおずおずと小瓶を乗せた。そして今にも消えそうな声で答えた。


「お子を、宿さぬ様にと、、」


「なんだと?」


ジュリの言葉を聞いた途端、ウィレムの顔が歪んだ。

危険だ、と私の心が警鐘を鳴らす。


「あ、あのっ、ウィレムっ。私っ、私も、そのっ、、そうなったらウィレムが困ると思ってっ」


何か言わななければ、どうにかしなければ、と必死にしがみついたけれど、ウィレムの目に私は映っていなかった。


「ジュリ、言え。誰の指示だ? いつからだ?」


「ち、違いますっ。私が陛下の為にと考えましたっ!」


「そんなことを頼んだつもりはない。」


「でもっ、でもっ、陛下はお困りになるはずっ、だから、そうならない為に私は、、陛下の為にっ」


「頼んでいない。」


「私はっ  、、え? う、、うっ、ぐぅっ、、はっ、、」


ジュリが突然胸を押さえた。顔が青ざめ、苦しそうに呻く。上半身を折り曲げ、膝を床についた。お祭りの時と同じ光景で恐ろしい。ジュリが死んでしまう、そう思って私はウィレムの身体を揺すった。


「ウィレムっ、見て、私を見てっ、駄目だからっ、本当に駄目だからっっ」


びくともしない。懸命に訴えるけれど、お祭りの時とは違って、背が高くて顔も見れない。見上げる事しか出来なくて、私は夢中でてを延ばして両手で挟む様に思い切り頬を叩いた。バチンッ、と大きな音が響いた。

ジュリに向いていた目が、ふっ、と私を見下ろした。はぁ、、と一瞬だけ安堵したけれど、ウィレムの苛立ちは収まっておらず、頬を叩いた両手はすぐに捻り上げられた。


「きゃあっっ! 痛いっっ!」


「ジュリ! 出ていけっ!」


強い力で掴まれた腕は悲鳴をあげた。痛い。


「ひっ、、ひっく、い、嫌です。私は陛下の為に、、」


腕を掴まれながも身体を捻って振り向くと、床に這いつくばっていたジュリが肘をついて上半身を持ち上げた。目に涙を溜めながら、まっすぐにウィレムを見つめている。


「出ていけっっ!!」


ウィレムの怒鳴り声にジュリの身体が、びくっ、と大きく揺れた。


「ジュリ、お願い、行って。死んでしまう。」


ウィレムに殺されてしまうと思った。それに、ウィレムにこんなことして欲しくない。


「う、、うっく、、ひっ、」


ジュリは納得いかない顔をしていたけれど、促すとむっくり立ちあがり、身体引き摺る様にして出て行った。ドアが閉まるのを待って、ウィレムが口を開いた。


「どうして止めた?まさかお前も望んでいたのか?」


「ウィレム、痛いっ。」


腕をぐっ、と持ち上げられてつま先立ちになっている。痛い。


「拒んだのはこのせいか?」


「痛いっ、痛いっっ! お願いっ、離して」


腕が痛くて堪らない。本当に折れてしまいそうなくらい痛くて、必死に訴えるのにウィレムは手を離そうとしなかった。それどころか、益々力を込めてくる。私の訴えは叫び声になっていた。


「どっちだ。飲まされるのが嫌で泣いたのか? 孕むのが嫌で泣いたのか?」


「離してぇっっ! 痛いっ!痛いっ!」


「いつでも逃げられる様にしておきたいのか?」


さっきから、泣きながら、叫びながら、首を横に振っているのに、、。


「きゃぁぁっっ!」


腕が下げられたかと思えば、ぐいっと横に引っ張られた。


「来い。」


「待って、待ってっ、痛いってばっ、痛いっ、   、、うっっ」


寝室へと引き摺られて、そのままベッドの上に投げられた。違う。こんなんじゃない。

私はまるで犯される様に、服を剥ぎ取られ組み敷かれた。


「ふん、逃げられないようにしてやる。」


ウィレムに吐き捨てる様にそう言われ、こんな筈じゃなかったのにと、目からは涙が溢れ出た。

酷い、と言おうとしてウィレムを睨み付けた。

だけどウィレムの顔には、怒りではなく悲しみが浮かんでいて、私ははっとした。ここで拒んでしまったら本当に取り返しがつかなくなる気がする。私は 大丈夫、と自分に言い聞かせて身体の力を抜いた。彼にそんな顔をさせるのは嫌だった。


身体の力を抜いた私に気付いたウィレムは、ほんの少しだけ驚きを見せた。構わずにウィレムの瞳を見つめると戸惑った様子を見せながらも顔が近付いてきて、唇が重なりあった。

さっきまであんなに乱暴だったのに、口付けは驚く程優しくて、私の反応を探るように、くっついたり離れたりを繰り返した。そのうち大丈夫だと思ったのか、唇を少し食まれた。ふにふにと感触が伝わってくる。私もウィレムの唇を食んでみた。どきどきと鳴る自分の心臓の音が何故だか心地いい。

次にぺろりと舌で唇を舐められた。それもまた私の反応を探るように。次第にウィレムは少しずつ大胆になってきて、べろりと舐めながら貪ってきた。湿っていて、柔らかくて温かい。

空気が欲しくて喘ぐ度に湿った空気が口の中を満たした。濡れた唇の隙間に舌の先が入り込みたそうにしていて、受け入れる為に自ら開くと、すぐにぬるりと侵入してきた。生暖かいウィレムの舌は歯列をなぞり、私のと絡ませられ、上顎を撫で回した。


その時、何かがぽたりと目蓋の上に落ちてきた。それは、ウィレムが流した涙だった。





ありがとうございます。

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