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50 アリア視点

指摘を頂きまして、皇后→王妃に訂正しています。混乱させてしまったらすみません。

***アリア視点***


朝が早いので、夕食は宿の近くの店で早めに済ませた。

この旅では目立たないよう、一般人の中に混ざって行動しているから宿も食事処も粗末なのだけど、私はすっかりこの生活にも慣れてしまった。


「ねぇミア、慣れって恐いわね。粗末な食べ物なのに美味しいと思ってしまうわ。」


私は道端で売られている甘味にはまってしまっていた。今日も夕食後、宿に戻る時にその甘味を見つけてミアに買って来てもらい、不作法だけれど歩きながら食べている。


小麦粉と砂糖と卵を使った生地を油で揚げるだけのその食べ物は、紙袋に入れられた状態で売られている。その為、手掴みで食べなければならない。最初は衝撃だった。食べ物が入った袋に手を入れ、探って掴むなんて。とてもそんな真似は出来なくてミアに取ってもらったのだけど、見ていたシンに笑われ、それ以降自分で取って食べるようになった。

慣れとは本当に恐いもので、歩きながら食べる事も、食べ物を手掴みで食べる事も気にならなくなっている。寧ろ、だからこそ美味しいのだとも思えてきた。


「アリア様は本当にその甘味が気に入ったのですね。王宮でも作ってもらうようにお願いしておきますね。」


「まぁ! それは気付かなかったわ。ありがとう。毎日でも食べられそうだわ。」


実際この甘味に出会ってから、ほぼ毎日食べていた。もぐもぐ食べて、指をぺろりと舐めていると、ふと、シンが1人輪から外れて後ろを歩いているのに気が付いた。

はしたなくも、その指をスカートの端で きゅっ、と拭いてから、甘味の袋をミアに預けた。


「ミア、先に歩いていて。シンに話があるの。」


「え、アリア様? 」


「いいから。」


ミアには先を行かせて、私はその場立ち止まってシンが来るのを待った。程なくして、足取りの重たいシンがやって来た。


「シン? どうしたの?」


声をかけるまで私に気付いていなかった様で、シンは びくっ、と肩を揺らした。


「あ、ああ、アリアか。びっくりした。」


「なんだかあなた、様子がおかしくない?」


「え、、 ああ、、。いろいろ思い出してしまって。 ごめん。」


「どうして謝るのよ。」


「、、、そうだな。」


「教えてくれる?」


「アリアに? どうしてまた、、。 聞いても仕方がないだろ?」


「辛気くさいのよ。1人で思い悩むより、人に話した方がすっきりするでしょう?」


「はは、我慢出来ないだけじゃなく首を突っ込むのが好きなんだね。」


「シンはつくづく失礼な人だわ。」


そういう馴れ馴れしい処も、打ち解け易くて、、、嫌だ、何を考えているのだろう。


「認めるよ。  、、うーん、なんというか、、ここは、レイラと待ち合わせをしていた町なんだ。でも、俺が遅すぎて間に合わなかった。あの時、間に合っていれば何か違ったのかと考えていた。」


「待ち合わせ?」


「ああ。俺は自分を過信していたんだ。」


シンはレイラが捕まった経緯や自分のとった行動を教えてくれた。命を預けていた事も聞いた。


「命、、、? 人に預けたり出来るものなの?え、え? 待って、おかしいわ。預けられたとして、どうしてシンはレイラの為にそんな物を預けられるの? 恋人じゃないのでしょう? じゃあ、レイラは家族か何かなの?」


混乱してしまう。命って、、、命でしょう?

一番大切な物じゃないの、、?

シンは ふっ、と笑った。


「俺にとってはレイラが命だ。彼女がいない世界では生きていたくない。」


シンは、はっきりとした口調でそう言った。

衝撃過ぎて心臓が止まりそう。


「い、今でもシンは、、そう思っているの?」


声が震える。


「ああ。」


「で、でもレイラは陛下と一緒にいるわ。つ、つまり、それでも良いって事? 生きてさえいたら平気なの?」


「、、、平気じゃない。 

あ、、そうか、アリアは王妃だったね。君も辛いだろう。」


シンは私の声が震えている理由を勘違いしている。


「ち、違うわ。私は、、あなたとは違う。だって陛下を好いている訳でないものっ! あっ、ええと、ただ、王妃な、、だけだから、、ええと、そ、そりゃあ、いいことではないから困るけれど、その、、辛い訳ではないというか、、」


否定しながら、そんな自分に戸惑う。

咄嗟に、シンに陛下を好きだと誤解されたくないと思ってしまった。誤解されたって問題なんてないのに。情けない、、、。


「そうか、、。」


「でも、それじゃあシンはどうして陛下に協力しているの?」


陛下が憎くないのかしら、と思う。陛下を好いていない私ですら、レイラを憎いと思ったから。


「それはもちろん俺達の未来の為だ。って言いたいけど、、ははっ、俺はそこまでお人好しじゃない。本当はレイラさえ戻ってくるなら村なんてどうでもいいんだ。レイラを見捨てた奴らだからね。だから俺も村を捨てたんだ。

だけどこれはレイラの願いだと聞いた。レイラの憂いを取り除けるのなら協力くらいしてやれる。それに、陛下は約束した。全て上手くいった時には、レイラの意思を尊重する、ってね。」


シンが眩しくて、直視出来なかった。


「 レイラが羨ましい。そんなに想ってもらえるなんて。」


心の底からそう思う。

それにしても陛下がそんな約束を、、、?

技術とレイラでは技術を手に入れる方が優先という事なのかしら?

そうしたらレイラは望めば自由になれるの?

それは王妃の私からすると喜ぶべき事で、、、でも胸がちくちくする。


「まだ何も成し遂げていないけどね。」


ふと、レイラが自由を望まなければシンは諦めるかしら、と信じられない事を思ってしまった。いけない。いけないのに、意地悪な質問をしたくなった。


「それでも羨ましいわ。、、、ところで、レイラは自由になることを望んでいるの?もし、望まなければシンはどうするの?」


言いながら、シンが何と答えるかどきどきした。


「陛下はレイラを閉じ込めているのだろ? 妻にするつもりもないのに側に置き続けるのは飼い殺しじゃないか?レイラがそれを望んでいるとは思えない。」


「そう、、、。」


「どうした? 急に大人しくなった。」


「っいいえ、何でもないわ。シンがレイラを連れて行ってくれるのなら、ありがたいと思っていたところよ。」


「じゃあ、俺たちは同志だな。アリアに話して良かった。すっきりしたよ、ありがとう。」


今度は私の心が辛気くさくなってしまった。

ありがとうございます。

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