40ウィレム陛下の独り言(短いです)
父は欲しいものは何でも自分の物にしたが、魔力だけは持てなかった。魔力は生まれ持つ物だからだ。しかし母と俺には魔力がある。
男より女の魔力が大きい時、子を持とうとするのは難しいと聞く。もし身籠ったとしても流産、死産、もしくは不完全な状態で産まれてくる事が殆どなのだ。
俺の母は壊れていた。いつ壊れたか、どうして壊れたかは知らされなかったが、物心が付いて知識を得た時に何となく想像が出来た。俺が存在するということはそういう事なのだろう。
おかしくなった人間というのはたとえ母親でも気味が悪く、内装だけは豪華な部屋の鉄格子の隙間から奇声をあげながら俺を掴もうとするその手は、幼い俺にとって恐怖以外の何物でもなかった。
父は俺に、人でも物でも様々なものを与えたが、その全てはやはり父の物であり、俺自身も父の所有物だった。そしてそれは、父がいなくなっても変わらない。
俺は父の様にはなりたくないと思いつつ、いつも自分だけの何かを欲していた。
そしてレイラを見つけた。レイラは俺の物だ。
だが、どうにかして手懐けたいのにどう扱っていいのか分からない。父の様にはなりたくないのに、父の、押し付ける様なやり方しか知らなかったのだ。どうにか苦労して、少し懐いたかと思えば心は別の方向へ向いていた。だから諦めていたのだ。
壊れてさえいなければ、と。
それなのにレイラは好きだと言ってきた。
今までレイラの会話の中の、好き という単語を聞くだけでも妙にこそばゆく感じていたのに、俺に向かってその言葉を投げてきた。
途端に身体中が沸き立った。
込み上げてくる感情に戸惑いながら、けして嫌ではなく、寧ろいつまでも浸っていたかった。
さらにレイラは嫉妬まで向けてきたのだ。
俺が知っている嫉妬といえば汚い物ばかりだったのにレイラの嫉妬は可愛いくていじらしい。すぐにどうにかしてあげたいと思った。
そして、たががはずれた俺の欲はとどまるところを忘れてしまった。満足できないのだ。まるで足りない。ジュリと話しているのを見るだけでも、その微笑みは俺に向けろと思った。
どうにかしてレイラの全てを、、心も身体も思考回路も全てを、俺だけの物にしたい。
ありがとうございます。