表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

23/135

23 後半マイク視点です


ご機嫌が戻った陛下はもう 箱を開けろとは言わなくて、私はほっと胸を撫で下ろした。


「先日言った物は持ってきたか?」


陛下が話し掛けると、リサさんは慌てて箱を開いた。


「こちらです。1人で作っていますので、時間が掛かり、ここにある分しか準備出来ませんでした。」


ピアス、ネックレス、ブレスレットのセットが1組と、ピアスのみが1組だった。

陛下はそれらを手に取って熱心に見始め、私はその横顔をぼんやり眺めて、改めて見るととても綺麗な顔だな、と考えていた。


「レイラはどう思う?」


「え? 」


ふいに振られたと同時に こちらを向いた陛下と目が合って、慌ててそらした。


「とても、綺麗だと思います。」


「ふむ。この技術を買いたい。出来るか?」


陛下が再びリサさんに話し掛けた。


「へっ!? 技術を!?」


リサさんが口を開くより前に、私が声をあげてしまい、2人が目を丸くして私を見た。


「あ、、ごめんなさい。技術を買うなんて、びっくりしてしまって、、、」


これはジェミューの魔力で作られた物だからジェミュー以外の者には作れない。そしてシンは、特に器用なのだ。


陛下が呆れたように私を見て、そっと髪の上に手を滑らせた。そしてそのまま頬を撫でる。目がふわりと優しくなって、動揺してしまった。けれど、すぐにリサさんに顔を向けた。


「で、どうだ。職人と話をしたいのだが。」


「は、はいっ。すぐに連れて参りますっ。」


「ふん、この分は取り敢えず貰っておこう。」


「ありがとうございます。」


「レイラは、ピアスを欲しがっているそうだな。」


陛下がピアスだけの方を差し出してきた。


「いえっ、いえ、私はただ、見るだけで良かったのです。」


「ふん、耳を出せ。  早く。」


「え、ええ、、 はい。」


断れず、髪を耳に掛けようとすると、私の手に陛下の手が重なった。陛下の指が、髪を掬いながら耳の後ろを掠める。肩に流していた髪は背中へと流され、僅かに残っている首筋の跡をなぞられて、心臓が壊れそうに速くなった。


「消えそうだな。」


どきっ と、その壊れそうな心臓が跳ねて、咄嗟に手で覆い隠した。


「ふん、」


耳たぶからピアスが外されて新たなピアスが下げられる時、吐息がかかって嫌でも意識してしまい 身体中から汗が吹き出た。


「 綺麗だ。」


ピアスの事だ。ピアスが綺麗だと、自分に言い聞かせた。この人は危ない。ぼんやりしてると心が持っていかれてしまう。


「、、 ありがとうございます」


「そういえば、例の、、、」


「え? 」


「、、、いや、何でもない。さて、俺はもう行く。レイラは部屋へ。ジュリは後を頼む。ああ、欲しければまた何か選んでもいい。」


「いいえっ、この前頂いたばかりですから!」


「そうか。ジュリは真面目だな。」





***マイク視点***



リサに頼む手紙を持って行くと、ちょうどサイラスが接客中で、何やら話していた。


「リサ、あのお爺さんは誰です?」


「あぁ、マイク、手紙持って来たのね。お爺さんって、、ああ、シンさんのことね? 装身具の職人さんでね、今陛下が興味を持たれているから、特別に取り引きしているところよ。」


「へぇ。」


顔の殆どが、長くて白い眉毛と髭で覆われていて、顔があまり見えないけど、上品な雰囲気を漂わせているお爺さんだった。

シンさんは、話が終った様で帰り支度を始めた。身体が動いた時、髪の隙間に覗く耳を見て、ぎょっとした。

見覚えのあるピアスが揺れている。


「リサ、あのピアス、凄く珍しいですね。」


「え? ああ、綺麗でしょ? シンさんが作っているのよ。」


「あの人が?」


「ええ。レイラさんも気に入っていたわ。」


「レイラが?」


その時、一瞬、シンさんがこちらを見た気がした。レイラの知り合いか?近くにあったとペンを握った。

シンさんが店から出るのを見計らって、


「リサ、ちょっと待ってて下さい。」


と、急いで追いかけた、


「あんまり待てないわよー。急いでね。」


リサは今から、シンさんの装身具を含めた商品をもって、王宮へ行くのだ。

シンさんにはすぐに追い付いた。


「ちょっと、すみません。」


「はて、何じゃろう。」


ゆっくりと振り向いた。


「ぶしつけですみません。聞きたいことがありまして、、、レイラをご存知ではないでしょうか?」


出来るだけ、声を潜めた。シンさんは一瞬動きを止め、眼鏡の奥から探るような目付きで俺を見た。


「あ、警戒しないで下さい、俺は、レイラと知り合いなんです。あの、もしかしたら、シンさんも、レイラの知り合いかと思って。」


「ほぉ、なるほどなるほど、では、知り合いじゃったらどうするんじゃ?」


「あ、ええと。レイラは今、王宮にいて、俺はその、、何か彼女の為に出来ないかと思っているんです。今日も、元気付ける為に手紙を届けようとしていて、、ええと、だから良かったら貴方も、、」


俺は紙とペンを差し出した。シンさんはそれを受け取りながら、まだ悩んでいる様子で、


「レイラは、、どんな状況で過ごしているのじゃろう? ご存知かな?」


と聞いてきた。俺はリサに聞いた通りに説明した。酷い扱いは受けていないが、部屋に監禁されている様だと。

シンさんはさらさらと、紙に何かを書いて寄越した。


「どうかこれを、渡して下され。」




読んで下さってありがとうございます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
cont_access.php?citi_cont_id=119464601&s
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ