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22 前半ルーナ視点です


***ルーナ視点***


「結婚式、ですか?」


すっかりここの生活にも慣れた私は、ディラン殿下とお茶を楽しんでいた。殿下は私の歌をとても気に入ってくれて、よく聞きに来てくれる。そして歌を披露した後にいつも2人でお茶を楽しんだり、お互いの体温を楽しんだりするのだ。


殿下の準備してくれるお茶はとても甘い香りがして、最初はこんな飲み物があるのかと驚いたけれど、今ではすっかり虜になってしまった。それから後の甘い時間は、いつの間にこんなに節操が無くなったのかと自分でも戸惑ってしまうほどで、ずぶずぶとその快楽にのめり込んでいった。私はもう、殿下無しには生きていられないと思った。


その、お茶を楽しんでいる時に結婚式の話になった。他国で行われる結婚式に参列するとだと。


「ああ、妹のアリアとウィレム陛下の結婚式だ。以前から決まっていた事だけどね、ずいぶん時間が掛かったよ。」


殿下はとても嬉しい様子で ずっとにこにこしている。


「それは、おめでとうございます。でも、、ウィレム陛下とは、アリドゥラムの国王陛下の事ですか?」


「そうだよ。あぁ、そうか、ルーナはアリドゥラムにいたから、ウィレム陛下の事も知っているんだね。」


「いえ、その、ウィレム陛下を知っている訳ではないのですが、、あの、私の友人が、ウィレム陛下の元にいると聞きましたので、、、」


「ルーナの友人? 」


「はい、私よりも先に捕まってしまって、、」


「あのジェミューは君の友人だったの?」


ディラン殿下が思いの外動揺し、取り乱したので私は驚いた。


「殿下はレイラをご存知なのですか?」


「え? ああ、ご存知も何も彼女はこの国に来る筈だったんだ、それをウィレム陛下が。思い出しても腹立たしいよ。  それより、レイラっていう名前なんだね。綺麗な響だ。」


殿下がレイラの名前を口にし、目を細めたのを見て、胸がざわついた。

レイラがここに居なくて良かった、と思った。今ここでお茶をするのが私でなくレイラだったら、と考えると とても嫌だった。


「そうだ、じゃあルーナも一緒に連れて行こうかな。話が出来るように頼んでみよう。」


「え!? 本当ですか? すごく嬉しいです。」


レイラに会える事よりも、殿下と出掛ける事が嬉しくて、つい大きな声がでた。


「あはは。よほど仲の良い友人なんだね。喜んでもらえて俺も嬉しいよ。」


殿下の優しい顔を見ながら、ふと、私達はいつ結婚するのだろうと疑問に思った。そういえばここに来て一度もそんな話を聞いていないような気がする。

けれどその時、殿下がそっと私の手に、自らの手を重ねてきたので、すぐに疑問は消えていった。

重なった手から、殿下の柔らかな温もりが伝わり、すぐにでも蕩けてしまいそうで、見つめられればもう、理性は消えて無くなった。


大人しく口付けを待つなんて出来なくて、自ら殿下にのし掛かって唇を押し付けた。


至福の甘い時間が始まる。




***レイラ


シンについて何も出来ないまま時間だけが過ぎていく。窓の外を眺めては、何処かにリサさんが見えないかと探した。

そんな風に毎日眺めていたら、最近人通りが増えてきている事に気が付いて、丁度昼食を持ってきてくれたジュリに、話し掛けた。


「何だか最近外が賑やかね。何かあるの?」


「はい。もうすぐ陛下のご婚礼ですから、沢山の人が出入りしています。」


ジュリが何でも無いことの様に言って、ひゅ、と胸がざわついた。


「、、ご婚礼? 陛下は結婚するの?」


「はい、そうですけど、、あ、そういえばお嬢様は王妃候補の方を気にしてましたね。でも大丈夫ですよ、お嬢様はこのまま変わりありません。」


「、、、変わらない?」


「はい。何も変わりません。だから大丈夫です。」


「、、そう。」


生き続けるのならば、私は一生このままなのだろうか。それは嫌だと思った。

嫌なのに、この前から時々感じる、胸のもやもやが邪魔をして気持ち悪い。

「死にたいのか」と言われた言葉がぐるぐると頭の中を回った。


「そういえば、リサさんの件ですが、近いうちに来てくれる事になりましたよ。陛下も時間をつくっていらっしゃるそうです。」


「え!? 本当に?」


瞬時に考えが吹き飛び、つい大きな声が出て、ジュリが笑った。


「ふふ、良かったですね。」


「えっっ、そういう訳じゃ、、」


「でも嬉しそうですよ?」


、、私は今、嬉しいの? 陛下に会えるから?

認めたくない気持ちに戸惑った。



**


リサに手紙を渡したいと思ったけれど、私には紙もペンもない。

それに、何と聞くべきかも結局分からなくて、ぐずぐずしている間に、その日がやって来た。


「お嬢様、リサさんが来ました。あっ、でも準備が終わったらまた声を掛けますね。」


声を待たずに部屋からひょっこりでると、リサさんがせっせと商品を並べていて、私に気づいて頭を下げた。


「お嬢様、本日はお呼び下さってありがとうございます。それと、先日は失礼致しました。これを、お詫びに差し上げます。」


小さな箱を手渡された。また手紙かもしれないと思って、どきどきした。


「あ、あの、こちらこそ この前はありがとうございます。それで、ええと、あのピアスなのです、、が、、」


がちゃりとドアが開いて陛下がズカズカと入ってきた。

リサさんが、さっと、姿勢を正してお辞儀したので、何だか私もつられて一緒に並んでお辞儀をすると、


「ふん、何だそれは。」


と鼻で笑い、ソファーにどしっと腰を下ろした。


「いい、顔を上げろ。レイラはこっちに。」


陛下にすぐ横の座面を叩かれて 何だかむず痒い気持ちを抑えながらソファーに向かって座ろうとすると ソファーにお尻を下ろす瞬間に、後ろに回った手が、ぐっと腰を抱き寄せた。


「ひゃっ」


、、、密着と言ってもいいほどくっついて座る事になり 心臓がうるさい。


「ご結婚がお決まりになられたと伺っております。おめでとうございます。先にアリア様の、、、」


「いい、その事は今でなくてもいい。めでたくもない。さっさと持ってきた物を見せなさい。」


「すみません、すぐにお見せ致します。」


陛下はリサさんの挨拶が気に入らなかった様で、苛立っていた。

私はアリア様、と言い掛けた言葉の続きが少し気になった。

準備するリサさんをぼんやり視ていたら、急に腕を捕まれた。その手には受け取った小さな箱が握られている。隠す場所がなくて、見えにくい様にスカートの横に、埋めていたのだ。


「レイラ、何を持っている?」


「え、ええと、お、お詫びだそうです。この前の、、」


「隠す程の物なのか? 開けて見せなさい。」


ちらっとリサさんを見たら、にこっと微笑まれた。あれ? 大丈夫ってことかな、、


「先日の失礼な振る舞いのお詫びに、焼き菓子を持って参りました。お嬢様はお菓子がお好きなのですね、少量で申し訳なかったです。」


「なんだ。菓子か。レイラは菓子がすきなのか?」


「う、、はい。好きです。」


「どれほど 好き、なのか?」


「、、、 とても、好きです。」


陛下の頬が何故だかうっすら赤らんだ。


「そうか。」




読んで下さってありがとうございます

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