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アルロとミア

**アリー


「・・・・・・・え?」


目の前の光景が、こんなに理解出来ないなんて。ただただ、唖然とした。動揺して部屋を見渡すと、ドアのところに立っている、施設の人も私と同じように驚いているのが視界に入った。


「あ・・、あ・・、だ、大丈夫だから、下がっていいわ。」


「え?、は、はい。」


慌てて言うと、お辞儀をして去っていった。

何が大丈夫なのか分からないけれど、大事にしたくない。2人とも、私に敵意はないようだから。


・・・ゴホン、咳払いをしてみる。


「あの、ええと・・・、あ、あら?あなた・・」


男の顔は、どこかで見たような気がする。ええと、ええと・・・


「姫様、私です。アルロです。」


アル・・ロ・・、アルロ、アルロ・・


「あっ、アルロ!?」


ハッとした。夢の人物だ。夢の中よりは随分と成長しているけれど、面影がある。

夢が、現実の世界に出てきた。心臓の鼓動は速くなるけれど、もう以前のような恐怖はない。


「はい、姫様、お久しぶりでございます。」


アルロは私に、柔らかな笑顔を向けた。


「・・・ふっ、・・」


胸の辺りに込み上げるものがあり、呼吸が、ほんの少し乱れた。懐かしさを感じる。


「姫様、お迎えにあがりました。」


あ・・・。不自然に身体を捻って私を見上げる姿の、その下の方では、女の人が、床に押し付けられている。つかの間、忘れてしまっていた。


「あの、アルロ、その方を、離してくださらない?」


「いやしかし、この者は」


「アルロ、離して欲しいの。」


「・・・承知しました。」


はっきりと言うと、アルロはしぶしぶ手を緩め、女の人は、ヨロヨロ立ち上がった。


「あの、アリア様、この方はいったい・・」


ふふ、それは分からないの。



**


アルロとミアはお互いに自己紹介もしてくれたので、私はなんとなく、記憶がないことを言いそびれたまま、私は2人の話を聞いていた。2人の認識では、私はアリアという姫様らしいので、そういうことにする。違和感がないから、そうなのだとも思った。


「では、アルロさんはアリア様の敵ではないのですね?」


「ええ、勿論です。私は真相を確かめにきたのです。アリア様が駆け落ちなど、信じられるはずがありませんから。」


ん?駆け落ち・・・。誰が?疑問符が浮かぶ。


「ぁ・・・・。」


ミアが気まずい顔で、私を見た。


「・・・え、それは、私のことかしら?」


アルロが、すっ、と私の前に背を向けて立った。ミアの顔が見えなくなる。


「ミアさん、姫様の味方と言いながら何も知らせていないのは、やはりおかしくないですか?きちんと説明をしていただきたい。」


「それはっ・・、その・・」


「説明が出来ないのですか?それでは私は、あなたを敵と見なしますが。」


言いながらアルロは、マントの内側の腰に下げているものに手を掛けた。


「違っ、違います。アリア様、私はアリア様をお救いしたくて・・、ただ、それだけです。」


「救う?」


なんのこと?アルロ背から顔を出すと、ミアと目が合った。


「ああ、申し訳ありません、アリア様。私はアリア様に隠していた事がございます。

・・・アルロさんもご存知の通り、ディラン殿下があのようになった事でアリア様は窮地に立たされていました。その上罠に嵌められ、本当にもう、あのままではアリア様は、お心を失ってしまうのでは、と私は気が気じゃありませんでした。そんな時にノアさんからこの提案を受けたのです。」


ノア・・・?

それまで自分の事だけど他人の事のようだった感覚が、ノアの名前が出てきた途端に、ずしりと重たくのしかかった。ノアは、私をずっと前から知っていたの? え?・・・え?ノアは、会ったばかりみたいに振る舞っていなかったかしら?私に合わせて?でも、どうして教えてくれなかったの?

私の疑問に答えるように、アルロが口を開いた。


「ノアの提案?違うだろう、これはウィレム陛下の都合のいいように、面倒なく姫様を追い出し、新しい王妃を迎える為の卑劣な策略だ。お前達は結託して姫様を騙したのではないか?」


・・・・・・・思考が、停止する。


「違いますっ、私はそんなっ、アリア様のために。っアリア様はご存知ですよね、私はアリア様に忠誠を誓っております。」


アルロは私を振り返った。戸惑ったまま頷くと、再び前を見る。


「ふん、ノアとか言う奴はどうなんだ。」


「ノアさんも違います。そんな方ではありませんっ。」


ノアが・・・?

ミアが必死に庇えば庇うほど、分からなくなった。



「・・・あの、待って。ごめんなさい。私、疲れているの。今日はもう、休ませてもらいたいわ。続きは明日に、・・ごめんなさい。」


2人を追い出すと、はぁ、とため息が出た。

分からなことが多すぎる。自分のことを他人から聞くなんて。

テーブルに置いていた、木の実に目をやった。

もう、決心はついている。


何も分からないより、きっといいはずだもの。

木の実を親指と人差し指と中指で挟み、徐々に力を入れた。



・・・・・ぱきっ


ありがとうございます。

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