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アルロ

**アリー


毎日悪夢にうなされ、睡眠不足に悩んでいたのが、解消された。というのも、ここへ来てから一日中、薬で眠らされていたのだ。起きたと思えば眠らされ、また目が覚めたら眠らされる。合間になんとか食事もとっていたようだけど、よく覚えていない。

朦朧とする意識の中、内心このまま監禁されるのでは、と思っていた。

だけれど、薬の量が減らされ意識がはっきりとしてくると、不思議なことに、悪夢に対する恐怖心も薄らいできて、今はもう、薬がなくても眠れるようになっている。そればかりか過去に対しても、逃げるばかりでなく、向き合おうという気持ちにもなった。睡眠って、大事なのね。

感心しながら私は、あの木の実を、手の上で転がしていた。試しに割ってみようかしら・・・。なんとなく、いいえ、もう少し確信に近い気持ちで、私の記憶と関係があるような気がしてならない。


その時、コンコンコンッと、ドアを叩く音がした。


「アリーさん、お客様ですよ。」


「え?ああ、入ってもらって結構よ。」


てっきり、ミラかと思っていた。お客様なんて他に思いつかなかったから。




「アリア様っっっ!」


え?


駆けよって来たのは、髪を1つに結い上げた、女の人。


「ああ、アリア様っ、私がいなかったばっかりに、こんな姿に。お痛わしい。仕方のない事とはいえ、申し訳ありませんでしたっ。」


私の手を握り締めて、涙を流すその姿を、ぽかん、と眺めていた。


「あの・・」


手を引っ込めると女の人は慌てたように目を見開いた。


「はっ、すみません。つい、再びお会い出来たのが嬉しくて。」


「え、ええ。」


首を傾げて苦笑いを浮かべた。


「ああ、アリア様。アリア様・・・。」


・・・なんとなく、知っているような気もするけれど、思い出せない。もっとよく見ようとすると、パッと顔を上げた。


「・・・アリア様、逃げましょう。」


「へ?」


「このままでは、お命が危ないかもしれません。」


「えええ?」


「とにかくっ、逃げましょう。」


今にも私の腕を掴んだまま、飛び出していきそうで、咄嗟に掴まれた腕を、ぐい、と自分に引き寄せた。


「ええええ?ちょ、ちょっと待ってちょうだい。話が何も分からないわ。」


「アリア様、すみません。説明したくとも、私もよく分からないのです。ですが、確実に、私は後をつけられていました。途中でまいたつもりですが、上手くまけたか分かりません。ですので、逃げましょう。ノアさんは、とりあえず後で考えましょう。」


えええ?ノアの知り合い?ますます訳が分からない。


「待って、本当に待ってちょうだい。」


掴む手に力がこもって、少し痛い。


**アルロ


姫様の失踪には、ウィレム陛下が関与していた。駆け落ちに見せかける事でリュムレアムに負い目を持たせつつ、自分は堂々と新しい王妃を迎えるつもりのようだ。なんとも卑怯な男である。

知る限りの全ての計画を、サーヤは洗いざらい白状した。大丈夫だ、殺してはいない。早い段階で喋りだしたから、手間はかからなかった。


すぐに俺は王宮を出て、情報で得た、侍女のミアを探した。そしてその侍女は、意外とすぐに見つかった。ついている。


当初は、姫様の侍女だからという楽観的な考えで、接触してみようと思っていたが、途中で考えを改めた。駆け落ちの偽装に関わっているということは、ウィレム陛下の手下だ。

だからと言って、手荒い真似をすると、姫様が悲しむかもしれない。・・なかなか難しいな。


結局俺は大人しく付いていく事にしたが、そう考え直した時には遅く、最初の軽率な考えのせいで、既に気付かれてしまったようだった。その上どうやらやはり、普通の侍女でなかったらしい。巧妙に、姿を眩まされてしまった。


仕方がないので、情報にある別の人物、ノアという騎士を探す事にした。姫様の偽装駆け落ちの相手だ。ハラワタが煮えくり返る。こいつはいったい、姫様になんと言って王宮から連れ出したんだろう?姫様は、自分が利用されたと知ったら、どんなに心を痛めるだろう。・・・見付けたら姫様の居場所を聞き出す前に、殺してしまいそうだ。



・・・幸い、最初に見付けたのは、やつの家族だった。まぁそれでも、衝動には駆られたが。


**


ノアの母親から聞き出した姫様の居場所は、信じられないところだった。療養施設と呼ばれる施設で、病院と孤児院、それから気の触れた老人を預かる様な場所だ。

これもウィレム陛下の指示だろうか。ここに、一生閉じ込める気だったのだろうか。姫様を想い、心の底から恨みがわいた。




「姫・・アリ・・っ、アリーという女性がいると思うのだが。」


受付で聞くと、すんなりと案内してくれた。


「こちらのお部屋です。」


案内された部屋の前で、ごくり、と唾を飲み込んだ。この目で姿を見るのはいつぶりだろうか。姫様は、俺が誰だか、分かってくれるだろうか。


「ちょっと、聞いてみますね。」


女がドアを叩き、開けた。


・・あ・・・・・・。


思わず息をするのも忘れて魅入ってしまう。

開かれたドアの先には、想像していたよりもずっと魅力的に成長した、姫様・・・・・と・・?

瞬時に身体が動いた。


「離れろっっっ、姫様に何をするっ!!」


無理やり姫様の腕を掴むその女に、体当たりしてねじ伏せた。


ありがとうございます。

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