表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

129/135

来客

**ミラ


お昼を食べようと家に戻ると、ドアが開いていて、すぐ見えるところに父さんが立っていた。


「・・(ねぇ、父さん入らないの?)」


聞こうとして、立ち止まった。やばい、中にノア兄さんがいる。慌てて、壁に張り付いた。アリーさんが怪我した上に、ノア兄さんに黙って療養施設にいるなんて、どう説明しよう。お小遣いを返せ、なんて言われたら、たまったものじゃない。母さんが上手く言ってくれるかしら?


耳をすませると、ノア兄さんの乾いた声が、聞こえてきた。


「隣国・・?何の話だ?隣国の者って、誰の事だよ。」


ん?気になって、再びドアのすぐ横に張り付いた。


「なぁ母さん、それじゃ何にも分からない。ちゃんと、分かるように説明してくれないか?でないと、俺、何をするか分からない。」


ノア兄さん、すごく怒っている。

会話の内容は、やっぱりアリーさんの事かな。そわそわしながら聞き耳を立てていると、お父さんが話し始めた。

お父さんが、ノア兄さんに話したのは、私の知らない、話だった。



***ノア


母さんはうつむき、代わりに父さんが、ぼそぼそと話し始めた。


「つい先日に、アリアという娘を探している男が来た。その男が、隣国から来たと言っていた。それだけだ。」


「は?探す?誰が?何の為に。」


頭が混乱する。隣国の男って、誰だよ。陛下だけじゃなく他にもいるってことなのか?


「何も教えてくれなかったさ。ただ、あれこれ聞き回っていっただけだ。」


は・・・?


「それで、何を答えたの?というか、あれ?俺、アリアなんて名前、一言も言った事がないんだけど。」


「だが、同じ人物なんだろう?」


は・・・?何を、言っている?


「アリアじゃない。アリーだ。まさか居場所まで教えていないよね?」


「・・・・」


妙な沈黙だ。嘘だろ・・、本当に教えたのか?


「父さん、どうなんだ?」


「仕方がないだろうっ!そうでもしないと、ロパが危なかった。お前はっ、家族まで危険にさらしたんだぞ!分かっとるのか!?」


「危険?どうしてだ?さっき、男が来ただけだと、言ったばかりじゃないか。」


言ってることが、めちゃくちゃだ。

声を荒げる父さんが、段々他人に思えてくる。


「・・・剣を、持っていたんだよ。」


母さんの、小さな声が聞こえた。


「・・・は?」


つまり、剣でロパを危険に?


「は?そんな男に、本当に教えたのかっ!?・・・信じられない。何で知らないって言わなかった。俺、何も言うなって、言わなかったか?ねぇ、母さんっっ!」


母さんに向けて言ったのに、母さんは、肩をびくっと震わせただけで、黙っている。

次の瞬間、ぐい、と胸ぐらを掴まれた。


「その時、母さんは1人で対応したんだぞっっっ!!」


「・・っく。」


唇を噛んだ。やはり母さんには、何も言わなければよかった。


「どんなに恐かったか、お前に分かるか?ロパを失いそうで、どんなに苦しかったか、お前に分かるか?嘘でも何でも思いつくことは何でも言って、相手を納得させるしか、無かったんだ。」


・・・何でも言って、か。

父さんは、背に母さんを庇っている。

分かってないのは、父さんだ。母さんのそのお喋りな口のせいで、俺は今、アリーを失う恐怖に襲われている。

手を、力任せに振り払った。

握り締めた手は、爪が深く食い込んだ。


「場所を、教えてくれ。」


これでも、精一杯、必死に、爆発しそうな感情押さえ込んでいる。


「ノア、お願いだから、行かないでおくれ。2日も前の話だ、どうせもう間に合わないじゃないか。」


ガァンッッ!!


母さんの言葉にテーブルを、強く、蹴りあげた。怒りと恐怖ともどかしさで、おかしくなりそうだ。


「ねぇ、俺は、お願いしているんだ。どこの施設か、場所を、教えてくれ。」


母さんは、何も答えず泣き始めた。

そんなんじゃないだろう。俺は今、質問をしているんだ。苛つく。目線を父さんに移した。


「父さんでもいい、答えてくれないか?」


笑って聞けるのは、もう限界だ。


「答えるわけがないだろうっ、母さんの気持ちが分からんのかっ!?」


父さんに俺の気持ちが分からないように、俺にだって分かるはずがない。


これ以上は無駄だと理解し、踵を返した。



**ミラ


これはただ事じゃない。屈んだ格好で、そろり、とドアから覗こうとすると、ノア兄さんの服が、がスッ、と鼻をかすめた。


あ・・・、い、行っちゃうの?


家の中ではお母さんが泣いていて、お父さんが肩を抱き寄せている。


どうしよ、どうしよっ。

あああ、ううう・・・・・・・ええいっ!


「兄さんっっ、ノア兄さんっっっ、待って!」


正直恐い。ほんっと恐い。一生分の勇気を振り絞って、ノア兄さんを追いかけた。

お小遣い分の働きは、返しておかないと。

ありがとうございます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
cont_access.php?citi_cont_id=119464601&s
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ