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ミラの印象

**アリー


コンコンコン、とドアを叩く音がした。


「アリーさん、起きてますか?」


?・・ノアじゃない。


「ええ、起きているわ。少し待ってくださる?」


ちょうど髪を結おうか悩んでブラシを通していたところで、一瞬悩んで、ブラシをベッドの上に置いた。今日はそのままにしておきましょう。昨日までは移動中だということもあって、何となく2つに分けた三つ編みで過ごしていたのだけど、改めて考えると不思議に思う。そんな髪型好きじゃないもの。

両手の甲で掬うようにして後ろに流し、ドアを開けた。


「わぁ・・・。あ、おはようございますアリーさん、あの、母が、もうすぐ朝食だからって、言っています。」


「おはよう。ええっと・・」


「ミラです。」


「あぁ、ミラね。わざわざありがとう。だけど、ノアが迎えに来るって言っていたのだけど?」


「ノア兄ちゃんが? そうだったんですね。あ、じゃあ私も一緒に待っていてもいいですか?」


どうして一緒に待たなくてはいけないのかしら?だけど、ミラはぐいぐいと部屋の中に入ってきた。


「ミラ、まだ掃除が出来ていないし、椅子もないから・・」


「あっっ!!刺繍のお布団だ!これ、ノア兄ちゃんが?」


「え、ええ。そうだけど。」


「へぇ~!あ、今朝だけど、もしかしてノア兄ちゃんここに来ました?」


「・・・ええ。今朝・・といえば、今朝ね。1階の、手洗い場の使い方を教えてくれたの。」


つい、口ごもってしまった。一晩中ドアの外にいたなんて、言わない方がいい。


「他には?」


ミラは目を輝かせ、身を乗り出して聞いてきた。何を、期待しているのかしら?


「他?他っていうと?」


「ふふふ、それだけかなぁと思って。」


「?」


よく意味が分からず首を傾げると、ミラも首を傾げた。


「あれ?本当にそれだけですか?」


「?ええ。それだけよ。その時に、後で迎えに来るからって、言われたの。」


「へぇ~。・・・ところでその髪、そのままで行きますか?」


「変かしら?」


「いいえ、全然。すっごく綺麗です。それ、ノア兄ちゃん見ましたか?」


「・・・ありがとう、ノアは、見ていないわ。さっきまで結っていたもの。」


掴み所がないというか、思考が分からない。そういえば昨日、下品な叫び声をあげていたわね。・・・思い付いた事をそのまま口に出してしまう類いの人間かしら?


「ふふ、少しだけ、髪型をいじらせてもらえませんか?」


ミラの口の端が、にゅっと上がった。


「え・・ええ。じゃあ、お願いするわ。」


他人に髪を触られるのってどうなのだろうと思いつつ、でも鏡がなかったからやはり変だったのかもしれないと心配になり、頼むことにした。のだけど・・・、結われていくのが、とても自然で、懐かしい気がするのはどうしてかしら?

ふと窓辺を見ると、風もないのに茶色の木の実がコロリ、と倒れた。



**


「ミラ、お前さ、何してんの?」


ノックの音が聞こえると同時に、ゴン、とドアが開いた。すぐにノアだと分かるからいいのだけど、ノックの意味がないのでは、と思う。


「あ、へへ。ノア兄ちゃん。」


「俺、いいって言ったよね?」


「へへ、あの、じゃあ、アリーさん、私は先に行きますね。」


「へ? あ、ええ。分かったわ、これ、ありがとう。」


そそくさと立ち去るるミラに、お礼を言うと、ノアがぎょっとした顔で私を見た。

え?私、もしかして変な髪型にされてる?


「ミラがしてくれたのだけど、似合わなかったかしら?」


どきどきしながら聞いてみる。そんな驚いた顔をされると、嫌でも気になるから。


「アリー、とても似合ってる、綺麗だ。・・だけど、それは止めておこう。」


「え?どうして?」


「それは、こ、ここには似合わないから。あ、ほら、今日は忙しいだろう、だから、動きやすいように、髪は三つ編みくらいがちょうどいい。」


「・・・そうね、分かったわ。すぐに戻すから、待っていて。」


今後ミラには髪を触らせないようにしようと思った。



**ノア


ミラが余計な事をした。でもそのおかげで気付けたから、良かったのか?


髪を綺麗に結ったアリーは、アリアそのものだった。まぁそれは同一人物だから当たり前なのだが、俺は少し、気が緩んでいたようだ。追手が来ないとはいえ、目立ってはいけない。どんな小さな噂でも、広まるのはあっという間なのだ。


・・・あぁ、買い物も止めておいたほうがよかっただろうか?がっかりするアリーの顔を思い浮かべて胸が痛んだ。



「ノア、出来たわ。」


ベッドに座って髪を結い直していたアリーが立ち上がった。ほっとする、髪型ひとつで印象ががらりと変わる。


「ん、行こっか、お腹空いたよね。」


差し出した手の平に乗せられたアリーの小さな手が可愛くて、ぎゅっ、と握った。

何事もなく時間が過ぎていけばいい。


読んで下さりありがとうございます。評価などして頂けると嬉しいです。

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