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小猿の話

ちょっと脱線です。

7歳になった妖精のミミは今日、初めて人間の世界を覗く事を許された。浮かれるミミは、「見るだけだからね」と、何度も釘を刺された。


「分かってるってば。もう7歳なんだからちゃんと出来るもん。」


「出来ると思っていてもミミはすぐうっかりしちゃうでしょ? それから戻りの言葉は考えたの?」


向こう側からこちら側に、迷わずに帰ってくるための言葉で、忘れてしまったら容易に帰って来れなくなってしまう。


「うん。『あたしの帰る場所』っていうの!」


「う~ん・・・もっと簡単に、「帰る」とか、「戻る」とかのほうがいいんじゃない?」


「どうして?」


「咄嗟に出てこないと困るでしょう?それにミミは忘れっぽいし。」


「絶対忘れないよ。ずっと前から考えてたんだもん。」


ミミは楽しみでしょうがなくて、何日も前からずっと今日の事を考えていたのだ。


外界へと繋がる扉の前に行くと、同じく7歳になったばかりのルルがいた。


「ねぇ、ミミは何にするの?」


ルルもまた、嬉しそうに目をキラキラさせていた。


「うふふ、私はね、小猿なの。」


途端に、ルルは目を大きくさせた。


「嘘でしょ?猿って、飛べないのよ?まさか地面を歩き回るつもりなの?」


隠れるのが下手な妖精の子供達は、そのままの姿では外界に出られない事になっていた。鳥等の動物に見せかけるのだ。


「ええ。猿ってすごいのよ。手と足と、尻尾まで使えるんだから。」


そんな風に言いながら、ミミは初めて見る人間を、鳥なんかよりもっと近くで見てみたいと思っていたのだ。


**


「はい、これ。念のため持って行きなさい。だけど、使えっていうことじゃないからね。」


出発の時になって、ミミとルルは、小さな茶色木の実が入った袋を1つずつ受け取った。


「「はい。」」


2人の返事のが重なって、ふふ、と顔を見合わせる。


それは、万が一気付かれてしまった時や危ない目に合いそうになった時、相手の記憶を部分的に閉じ込めておくことができる特別な木の実だった。


「近付き過ぎなければ大丈夫だからね。」


「勿論よ。」

「分かってる。」


そうして、2人は扉を開けた。



ありがとうございます。

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