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踏み出したままの足が、動かなくなった。
何かおかしい、、。勘がそう訴えかけてくる。
汗がじわりと滲んできた。
嫌だ、私もみんなと一緒に行きたいのに。どうしよう、どうして気付いてしまったんだろう。顔をあげると、幼馴染みのシンが、心配そうに私を見ていた。
「レイラ、どうしたの?」
「あ、あ、私、、どうよう、、」
気付かない振りを、、と一瞬悩んでしまったけれど、そんな事をしたら、村が狩られてしまう。それは、、嫌だ。 でも、、、でもそうしたら私は、、?
「シン、、、、」
助けて、という言葉は飲みこんだ。
「何か、嫌な予感がする。私、見付けられたかもしれない。」
シンがハッとして辺りを見回した。
「うそだろ?、、どうして、、」
私が足元を見ると、シンも視線を下げた。少し魔力を込めると、私が踏んでいる砂の上に、うっすらと魔方陣が浮かび上がった。予感は確信に変わる。
滲んでいた汗は、玉になって肌を伝っていった。カタカタと身体が震え出し、歯も音を鳴らしている。横を歩いていたメイソンさんが、私達に気が付いた。
「おいっ どうした!?」
顔を見れない。はっ、はっ、と乱れた呼吸の音がいやに耳に響いていた。メイソンさんは魔方陣を見て聞いてくる。
「確かなのか?」
確かも何も、見たままで、震えながら頷いた。
「みんな止まれ! レイラがやられた。」
みんなの足が止まって、私を見ている。きっと哀れんだ目で見ていることだろう。
親友のルーナが掛けよって来た。
「レイラ、、レイラ、どうしよう、、ごめんね、何もしてあげられない、、」
泣きながら触れようとする手に縋りそうになって、止めた。震える割にしっかり声を出せた。
「ううん、いいの、大丈夫。これは、私で良かった。」
良いわけないし、大丈夫じゃない。だけど、私だから気付けたのだ、だから、良かったんだと自分に言い聞かせる。
「レイラ、悪いが置いて行くことになる。」
頷いて、荷物をメイソンさんに手渡した。シンが止めようと手を出したけど、止めたところでどうにもならないのだ。私は、シン腕を掴んで、ゆっくり首を横に振った。巻き込む訳にはいかない。
私はただ1人、この砂漠の中に置いていかれるのだ。そして、きっと捕まる。残虐な彼らに捕まる前に、死んでおかなければ、、
みんなを見送っていたら、シンが近付いてきた。顔を上げると急に私の顔を両手で包み込み、唇を重ねてきた。直後に熱い空気の塊の様な物が、口をこじ開け入ってくる。そして、それはそのまま喉の奥へ滑り込んでいった。慌ててシンを思い切り突き飛ばしたけれど、もう手遅れで、、、。
「シンっ! 死ぬ気!?」
シンは、まっすぐ私を見つめた。
「僕は死ぬつもりはない。だから、レイラが死んだら許さない。覚えておいて、俺の命は君に預けた。」
「シン? 何を言っているの? 私は捕まりたくないの。こんなの預かったら、死ぬに死ねない。それにルーナは?これはルーナに渡すものでしょう? 」
ルーナに見られていたらと、気が気じゃない。姿が見えないことを確認して、安堵した。
「早くシン、これは返すから、」
喉の奥に入って来た物はシンの命だ。つまり私が死ねばシンも死んでしまう。そんな物を今渡されるのは、ものすごく困る。
シンが私を乱暴に抱き寄せて、静かに言った。
「一度村に戻ってから、必ず迎えに来る。何か手はあるはずだ。だから、諦めないで。」
「止めてシン、違うでしょう? 迎えにって何なの? これはあなたには関係ない。ルーナが、、」
言いかけた口を塞ぐように指を当てられた。
「必ず、迎えに来る。だから、あの町で待っていて欲しい。出来るだけ人がたくさんいる所にいて。今ならすぐに見付けることが出来るから。」
シンは自分が言いたいことだけを押し付ける様に言うと去っていってしまった。
私に命を預けたままで。